ツンデレって笑えるよね!!
月曜日の朝が憂鬱なのはもはや、避けようのない事実として。
津田のおかげでこの頃、絵里香は少しずつ元気を取り戻しつつある。
おかげで今朝も、保育園に連れていくのに難儀しなかった。
以前は大嫌いで一括りで見ていた【警察官】という人種は決して、皆がみな、同じではないことを今さらになってしみじみと認識する。
それを言えば友永だってそうなのだが、あの人はどうも、言われてみれば警官だったっけ? という感想を持ってしまう。
「おはよ!」
教室に入ると、先に来ていた周が声をかけてきた。
「智哉、なんか最近、顔色がいいな? 何かいいことあった?」
「うん、まぁね」
いろいろと。
その時、智哉のスマホがメールの着信音を告げた。
「あ、和泉さんからだ!!」
わざと大きな声でそう言うと、親友はぴくりと反応した。
気になって仕方ないらしい。
興味のなさそうなフリをしつつ、確実にこちらの様子を伺っている。
智哉は吹き出しそうになるのを堪えつつ、メールを開いた。
だが、笑いが凍りついたのはすぐ次の瞬間だった。
「……智哉?」心配そうな周の声。
嘘だ……。
メールに書かれている文章が何かの間違いならいいのに。
「どうしたんだ? 智哉!!」
肩をつかまれて揺さぶられても、しばらく反応することができないでいた。
『友永さんが昨夜、何者かに襲われて怪我をした。命に別条はないみたいだけれど、かなりの重傷を負っているみたい。もし学校が終わった後、来られるようなら安芸総合病院にきてもらえるかな。病室は東棟207号室……』
周が自分の手からスマホを取り上げたのがわかった。
「……なんだよ、それ……!!」
「……」
どうしよう。
頭が真っ白になるって、きっとこういう状態なんだろうな。
何も考えられない。
誰が、どうしてこんなことを?
「しっかりしろ! 智哉!!」
僕は大丈夫だよ……そう答えたつもりが、声になっていなかったようだ。
それからどうやって病院に来たのかよく覚えていない。とりあえず学校はサボりだ。
そして気がついたら、病院の玄関にいた。
こういう時って、どうしたらいいんだろう?
智哉が呆然と立ち尽くしていると、
「智哉君……?」
なぜか津田の声がした。
仕事中らしく、彼は制服を着ていた。
「どうしたの?」
知っている顔を見た途端、不意に全身の力が抜けた。
「父が、怪我をしてこの病院に運ばれたって……!」
「お父さん?」
「友永さんです!!」
名前を言って果たして通じるかどうかなんて、何も考えられなかった。
ちょっと待ってて。彼は少しして戻ってくると、友永の元まで案内してくれた。
テレビで観たことのある集中治療室だ。
頭からつま先まで包帯が巻かれている。起きているのか眠っているのかわからない。
もしかして人違いだったりしないだろうか。あそこに横たわっているのは、友永ではなくて……他の人なら、何かの間違いだったら。
しかし。智哉の希望を打ち砕くように、ベッドの頭部にあるネームプレートにははっきりと友永の名前が書いてあった。
「なんで?! どうしてこんな……!!」
思わず智哉は透明な壁に手をつき、大きな声を出してしまった。
「智哉君!!」
津田が支えてくれたが、智哉は礼を言うほどの気力も余力もなかった。
するとそこへ、
「智哉君」
和泉の声がした。
「和泉さん、どうして? なんでこんなことに!?」
智哉は思わず駆け寄り、彼のジャケットの襟をつかんで引っ張った。
「落ち着いて、智哉君。命に別状はないから。今は眠っているけど……」
生きているとわかっていても落ち着ける訳がない。
智哉は首を横に振った。
「誰が、どうしてこんなことしたんですか?!」
優しい手つきで背中をさすられる。
すると、張り詰めた気持ちがすっと落ち着いて行くのがわかった。
それから。
和泉はなぜか津田に話しかけた。
「君は……? ここは持ち場じゃないと思うんだが」
顔馴染みの制服警官は、はっと弾かれたような表情をし、敬礼をしてから急いで去っていく。
「智哉君、今の人は……?」
「津田さんです。家の近所の交番のお巡りさんで……親しくしてもらってるんです」
そう、とそれ以上彼は何も訊かなかった。
とにかくこの場を離れよう、と言われて智哉も大人しく従った。
不思議な気持ちがする。
和泉と一緒にいると、妙な話だが、何か懐かしさのような感情を覚えてしまう。
彼は一般病棟の奥まったところにある、見舞客や患者のためのカフェスペースに連れて行ってくれた。




