びっくりしたもぅ、マジで勘弁してよ~!!
「なんだって!? 友永が……?!」
その日の朝早く、可部署地域課から連絡を受けた聡介は愕然とした。
友永が昨夜何者かに襲われ、重傷を負わされて安芸総合病院に運ばれた、と。
命に別状はないが、しばらくは動けないらしい。
聡介は和泉を起こしてから慌てて出かける用意をし、彼と共に病院に向かった。
「今は鎮痛剤が効いて眠っています」医師は言った。
友永の顔は腫れ上がり、目のまわりは紫色にくすんでいた。
身体中に包帯が巻かれ、足も骨折したようで、天井から吊り下げられている。
病室には広島北署の山岡という刑事がいた。
「発見されたのは今朝なんです。駐車場に放置されていて、朝たまたま犬の散歩で通りかかった人が発見しました。しかし驚きましたよ、お仲間だったとは。何か単独で追っていたんですか?」
そう言われてもすぐにピンとはこない。
「……いえ、報告はありませんでした」
「ご家族に連絡しようとしたのですが、それらしき相手がいないようで、現場付近に落ちていた警察手帳で高岡警部にご連絡いたしました」
「ありがとうございます。ところで目撃情報は?」
「今、何人かに当たらせています。何しろ現場は住宅街で、大型スーパーですからね。それなりに目撃情報を期待してもいいでしょう。もっとも、詳しいことはご本人の目が覚めてから聞いた方が早いかもしれません」
「聡さん、智哉君に……」
「そうだな、知らせた方がいいだろう」
和泉が言い、聡介も同意した。
「僕が電話してきます」
そう言い残して彼が去ったすぐ後だ。
「聡ちゃん」
いつの間にか病院へ来ていた北条から声をかけられた。
「北条警視……」
なんでここに? などと聞くのは野暮だと思った。
「さっき連絡があったわ。安佐北区可部の山中で、女性の遺体が発見されたって。課長が聡ちゃんのこと探してたわよ? 可部署に捜査本部ができるんでしょうね」
「それは、もしかして……」
「もしかしなくても看護師よ」
「……」
北条は苛立たしげに前髪をかき上げながら続ける。
「まだ不確かな情報だけど、どうやらゆうべ、被害者が彼と一緒にいたところを目撃されていたみたい」
「彼……? まさか、友永とですか?!」
そうよ、と警視は答える。
「昨日、誰に会うとかそんな話はしていないの?」
聡介は記憶を辿った。
「確かに昨日は何時になく、早目に業務を終わらせるようにしていたと思います。でも、特に誰と会うかまでは……」
「もう一人いたらしいわ」
「もう一人?」
「男性だって。三人で何か話し合っていたそうよ」
座らない? と言われ、2人は病室を出た。
廊下の突き当たりにあるベンチに腰かける。
早朝だからか、他に人の気配はない。
「……目撃情報によると、未成年の3人グループが、突然、彼らに襲いかかったらしいのよ。ガンをつけただの、こっちを見て笑っただの、そういったイチャモンの一つもなしにね。つまり……最初から狙いを定めていた可能性が高いわ」
「場所はどこです?」
「可部にあるショッピングモールの駐車場」
「可部……」
「市民病院のすぐ近くの店よ」
そう言って北条は足を組み、溜め息をついた。
「……例の事件の延長ね。修ちゃんはたぶん、巻き込まれたんだわ」
修ちゃんって誰だっけ? と一瞬思ったが、そういえば友永の名前は修吾だった。
彼は他人の部下に対して妙な呼び方をする。
「ああ見えて意外に熱血漢みたいだから、きっと他の二人をとっさに逃がしたのね。でも、結局逃げ切れずに……」
聡介は彼の話に違和感を覚えた。
「……三人いたのですよね? もう一人は?」
「わからないわ。一人だけ上手く逃げおおせたのかもしれない」
「まさか!! その場にいたのなら、通報するなり……」
通報するなり、人を呼ぶなりするのが常識だ。
少なくとも自分ならそうする。しかし。
北条は厳しい目をしてこちらを見つめ、呟く。
「そういう常識を持ち合わせていない人間がいるのよ」
「そんな、バカな……」
「今さら何を言ってんのよ、聡ちゃん。いったい、何年刑事をやってんの? 人間って言う生き物の醜い部分は嫌と言うほど見てきたでしょう?」
彼の言葉に同意しつつも、聡介はどこか信じられない気分でいた。
「これはアタシの勘だけど、逃げたそいつ……きっと、後ろ暗いことしてたわね」
北条警視、といつの間にかすぐ近くにきていた和泉が彼の横顔を見つめて言う。
「その勘は正しいと思います。いえ、間違いなく真実でしょう」




