表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/303

言ってみれば源氏物語みたいな?

 今日は土曜日で学校が休みである。


 周は姉に協力して早めに家事を済ませ、2人で一緒に賢司の見舞いに行った。


 由子さんは今日も来てくれていた。同じ市内に住んでいるから、というのもあるだろうけれど、こうも頻繁に来てくれるなんて、と少し驚いている。


 兄の顔つきがいつもと少し違う。


 由子さんがいると、気のせいかもしれないがいつもより少し穏やかそうに見える。


 兄は、彼女にだけは心を許しているようだ。


 でも俺のことは……本当はきっと……。


 そんなに許せないのだろうか。


 彼から父親を奪った、寒河江咲子という女性。

 自分と姉の母親。


 周は気付かれないように、嫌な考えを振り切るようにして、小さく首を横に振った。


 そろそろ帰るわね、と美咲が言うと、賢司はわかった、とだけ答えた。


 それから病室を出ようとした時だ。


 由子さんが妙なことを言った。

「……悠司坊ちゃまの夢がかなって……本当に良かった……」



「ねぇ、周君。お昼はどこかで何か、美味しいもの食べて帰らない?」

 病院を出ると美咲はそう言った。

「うん、そうだな」


 大通りを渡れば商店街である。

 2人は信号を待っている間、それぞれ思うところがあって黙っていた。


 信号が青に変わる。

 歩きだして周は思わず、といった感じで呟いた。


「なぁ。さっき、由子さん……妙なこと言ってたよな」

「妙なこと?」

「……父さんの夢が、かなったとかなんとか……」

 ああ、と姉も頷く。


「どういう意味だろう?」


 まさか父は、子供の頃から賢司と美咲を結婚させたがっていたのだろうか?


「よくわからないわ……でも」

 美咲は微笑む。「周君のお父様だもの、きっと自分の息子達が幸せになれるように、それだけを願っていたに違いないわ」


 それはそうなんだろうけど。


 周はやや、釈然としない気持ちを抱えていた。


 あれから結局、兄の本心は聞けずじまいだ。


「でも俺……賢兄に嫌われてるみたいなんだ」

 姉はひどく驚いた顔を見せた。

「どうして?」


「……わからない。やっぱり俺が、母さんの子供だから……?」


 そんなことないわよ、と即座に返事があるものだと思っていた。だが。


 しばらく返事はなかった。


 その時だ。

「あ……周君!?」


 商店街の入り口。向かいから聞き覚えのある声に呼びかけられた。


 周が顔を上げると、富澤茉莉花だった。

 周が少し前まで、見学と言うかほぼ実習させられていた、保育園の保育士である。


 いつも母親と行動を共にしている彼女だが、今日は父親と一緒のようだ。

 一目見てすぐに親子だとわかった。

 なんとなくだが、それなりに社会的な地位のある人物に見えた。


 隣室のお父さんもロマンスグレイだが、なるほど、このお父さんなら一緒に歩いていても恥ずかしくないだろう。


 茉莉花はこちらに近づくと、一瞬だけ誰? という顔で姉を見た。


「こんにちは。あの、もしかして……周君のお姉様でいらっしゃいますか?」

 突然話しかけられた姉は戸惑いつつ、はい、と答える。


「初めまして。私、富澤茉莉花と申します。周君と、お付き合いさせていただいております」


 ぺこり、と頭を下げる茉莉花。


 周は思わず大声で否定したくなったが、辛うじて堪えた。


 あれは、しつこく言い寄ってくる元カレを遠ざけるための方便だっただろうが?!


「こちらは父です」

 やっぱりな……っていうか、なんかおかしくないか?


 姉は呆然としている。


「父は中国医科大学で教鞭をとっていまして……」


 茉莉花、と彼女の父親が呼びかける。


「すみません。いずれまた、改めて……ご挨拶に伺いますので。それでは」


こんばんは、エビ太だよ。


挿絵(By みてみん)


……ここまで、読んでくれたエビ?


ありがとね。

またね~♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ