なんなんだ、こいつ。
つい先ほど小橋から連絡があり、友永は捜査本部を抜けて県警本部に戻っていた。
と言っても捜査本部のある広島北署と本部は目と鼻の先である。
「悪いな。帳場が立ってる最中に」
「いいんだよ、うちの班長は寛大だから」
小橋は上司の目を憚り、部屋の隅に友永を連れて行った。
「お前こないだ、蓮のことを聞いてきたよな?」
「あ、ああ……まぁな」
「何かあるのか?」
「何かって、まだわからん。ただ、嫌な予感がするだけだ」
「だったら……」
同僚は手で口元を隠し、小声で囁く。
「その予感はたぶん、当たる。この件からは手を引け」
「どういうことだ……?」
向こうから、かつての上司が彼を呼んでいる。
「悪い、またメールするから」
小橋は慌てて去って行った。
なんなんだ……?
釈然としない気分で友永は、とにかく捜査本部に戻ることにした。
そういえば。小橋にはもっと他にも用事があったのだ。
恐らく犯人グループと思われるカラーギャングの存在。
彼らはおそらく未成年が大半だ。
詳しいことを聞こうと思っていたのに……。
友永が踵を返した時だ。
「友永さん、みーつけたっ!!」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
思わずビクっと震えてしまい、舌打ちをした。
振り返ると和泉がニコニコ笑いながら立っていた。
どーもー、などと小さく手を振る仕草が少し憎たらしい。
「……なんだ、お前か。ジュニア……」
「こんなところで何やってるんです? 勝手に本部を抜け出したりして、聡さんがカンカンに怒ってますよ」
「嘘つくんじゃねぇよ。あの班長が、そんなにキレるもんか」
「バレました? 友永さんって、生安に今も親しくしている人がいませんか?」
「……いたら、どうだって言うんだよ?」
「それはもちろん、おそらく今回の一連の騒ぎは同一グループによる犯行でしょう。目撃証言からして、未成年のヤンキーどもです。カラーギャング、と呼ばれる」
「……」
「さっきお話してた方、生安の方でしょう? 僕にも紹介してくださいよ」
和泉が何を企んでいるのか、おそらく自分と似たようなことを考えているのだろう。
「お前だって、流川に檀家はいねぇのかよ?」
「僕、あまり檀家さんは持たないことにしてるんですよね」
だろうな。
というよりも、こいつに協力してやろうと思える人間なんて、よほど特異というか何か恩義があるかに違いない。
「心配しなくても、何か判明したらまず班長に報告するさ」
すると。和泉はなぜか微笑んだ。
日頃の、何か企んでいるような笑顔ではなく、ごく普通の。
思わず、なんだ? と、警戒してしまう。
「良かったですね。友永さんの上司不信は、少し解消されたようです」
「……」
まさか、こいつにこんなことを言われるなんて。
どんな顔をしていいのか分からない。
友永は和泉に背を向けて、できる限り早足でその場を去ることにした。




