何しに来たのか知らないけど、ジャマしないで。
煙草の吸殻に、コンビニ弁当の容器、無作為に散らばったチラシ類……。
いつ脱いだのかわからないような衣類に、なぜか、一度も履いていないであろう新品の靴まで。
とにかく、部屋の中はゴミで溢れかえっていた。
埃と悪臭で目に涙を浮かべながら、和泉と聡介は、何か事件解決につながりそうな物はないかと探した。
最近の【息子】は声優だと言っていた。
ということは、その息子が出演しているアニメなりCDなりを所有していないか。もっとも、それが直接事件に関係しているかどうかは不明だが。
結局、しばらくはゴミ捨てに終始することとなった。
刑事の仕事なんて意外とこんなものだ。
聡介も匂いに辟易していたのか、すっかり黙りこんでいる。
どうにか足の踏み場を確保し、元あったであろう畳が少しだけ顔をのぞかせた。
すると。
部屋の隅に畳まれていた布団の影から、四角いケースのようなものが見えた。
下手をすると積み木崩しになるため、和泉はそーっと布団の奥に手を突っ込んだ。
あらわれたのはアニメのDVD。パッケージにはタイトルと、美しい絵柄が描かれている。
裏を返すと確かに出演【星河琉聖】とある。
まさかあの社長はこんなものを探してた訳ではあるまい……と苦笑していたら、布団の奥に押入れらしき襖が見え隠れしている。
あと一息。
和泉は思い切って布団を引っ張った。すると。
ドサドサドサ……布団の裏に隠れていた何かが、雪崩を起こした。
「なんだ、これは……?!」
思わず、といった感じで聡介の口から出た台詞に、和泉もまったく同感だった。
すべて同じタイトルの描かれたアニメのDVDである。
いわゆる親心というやつだろうか。
息子と信じている声優の出演しているアニメを買い占め、売上がアップすれば、もっと仕事が増える……。
「意外だな。こういう趣味があったのか……」
聡介は呆れたように言ったが、
「聡さん。アニメは子供だけが視る訳じゃないんですよ。それにさっき仲居さん達が言ってたじゃないですか。『息子』さんは声優をやってるって」
さらに奥を探してみると、別のアニメDVDや洋画のDVDも大量に発見された。
すべて『息子』の出演している作品である。
とにかく全部持って帰って鑑定する必要があるだろう。
やれやれ、徹夜だな……と、和泉が溜め息をついた時だ。
気がつくとすぐ後ろに人の気配があった。
驚いて振り返ると、何度か見たことのある和服姿の男が立っていた。
こ、こいつ……気配を消して背後に立つなんて!!
和泉は戦慄を覚えた。
そして、誰だっただろうかと記憶を辿る。
「……ひどい部屋ですね……」
思い出した。白鴎館の若旦那だ。
名前は確か、斉木晃。
「……何か?」
「節子さんにお貸ししたまま、返してもらっていないものがありましてね。取りにきたんですよ」
そういって斉木は部屋の中に入り、物色し始める。
和泉は彼の肩をつかんだ。
「困りますよ、勝手な真似をされては。これらはすべて証拠品ですのでね。私どもの鑑定が終わってからなら、お返ししてもかまいませんが」
「そんな悠長なことは言っていられないんですよ!!」
斉木は和泉の手を振り払い、大量のDVDケースを開いては閉じ、苛立たしげに舌打ちする。
「ヘソクリでも隠しているんですか? それとも、警察に見られたらマズいような映像でも映っている心当たりが? 例えば……裏ビデオとか」
和泉は笑って訊ねた。
「そんなものではありません!!」
「ああ、そうですよね。オカマのあなたには、女性の裸体になんて興味ないでしょうねぇ」
近くで話を聞いていた聡介の頬が赤く染まる。
しかし。
斉木は頬を染めるどころか、怒りで顔面蒼白になった。
そして彼はいきなり、手元にあったゴミを投げつけてきた。
慌てて腕でガードする。
どうも、やることが女性っぽい……。
それなのに『オカマ』呼ばわりすると本気でキレるのか。
和泉はどうにか飛んでくるゴミを避けつつ、間合いを詰めて斉木の腕をつかんだ。
「とりあえず、公務執行妨害で逮捕したら……他にも余罪がいくらか出てくるんじゃなですか? あなたも客商売をしている身なら、もっと世間体を気にした方がいいですよ。あそこの若旦那が警察に捕まった、なんてね……」
勢いをそがれた斉木は、全身の力を抜いた。
それから彼はのろのろと立ち上がると、ギロリとものすごい目で睨んできた。
そして。
「このままで済むと思わないでください」
などと、捨て台詞を吐いて去って行った。
和泉は肩を竦めて、とにかくゴミの山と格闘を再開することにした。
こんにちは、エビ太だよ!!
今まで前書きと後書きをおろそかにしてたけど、ちょっと実験的にしばらく何か書いてみようかと思ったエビよ。
次回更新は1月3日予定なんだって。
実家にいると、まったく絵も文章も書けない正月……。
あ、バッテリーがそろそろ……助けて、隊長さ~んっ!!
充電器をつなげなさい。
エビえびっ!!




