第57話 推し活はいつまでも
最終回です
人生の転機とも言える、推し活や最愛のパートナーを見つけてから長い年月が経ったと思う。
マリアーノちゃんと体液交換をした僕は、やっぱり不老に近い体質となったけどアツシたちには『若作りの範囲』とも言われたので。彼らと過ごす時間が有限である間はいっしょに過ごし……その時間が終わる頃に、僕はあの召喚扉を閉じることにした。
アツシとナルディアがそれなりの老年となり、施設とやらに入ることが決定したからだ。結局、ほんとに最後までパートナーでいたいからって同じ施設を前もって探していた意欲はすごいな。
「じゃあね、アツシ。ナルディア」
彼らの車を見送り、長年住んでいたアパートに繋いでいた召喚扉をマリアーノちゃんとくぐってから……僕は本来いる必要のある屋敷に戻った。資金とかは相変わらずだけど、現役賢者のギルだけには本当のことを話して、余生を過ごしやすいようにさらに整えてもらった。
王宮との繋がりをゼロにしない代わりに、こちらの生活には関与しないことを誓約書に書いて。おかげで、僕とマリアーノちゃんとでのんびりした生活を送ることが出来るようになったんだ。
「まだまだ長い人生ですけれど。最後までお側におりますわ、主さま」
「うん。僕らの人生はまだまだたっぷりあるからね! 推し活も……ちょっと寂しいけど。アツシたちとの活動で一区切りついたし」
撮影とか、コラボカフェとかかなり楽しんだけど……ふたりが施設に入るまでの五十年も僕らは堪能してきたんだから。家の中にはそれらを『祭壇』に仕立てたのできちんと保管しているし、これからはこっちでの終活に近い余生をマリアーノちゃんと過ごしていこう。
僕の外見やマリアーノちゃんのホムンクルス化はともかく、どちらも老生していることに変わりないからね? 召喚扉を解除したあと、さすがに少し疲れてベッドに腰かけたら眠くなってきた。
「少し休みましょう? お夕食までわたくしも寝ますわ」
「そう……だね。なんだかんだ、僕百歳だからしんどいかも」
このまま蕩けて、眠ってしまいたいのはもったいない。起きたら起きたで、またマリアーノちゃんとたくさん触れ合っていきたいんだから。魔法のアラームだけセッティングしてから、昔作ったノベルティの毛布にくるまって寝息を立ててしまう。
あと、少しの時間だけでも……君と、いたいんだ。
【終】
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