第53話 相方同士の会話
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「なんかあったんだろ、お前の旦那」
「……どう、とは?」
篤嗣とユディの旦那が昼飯を作っている間、あまり声の大きさを出さずにマリアーノと会話を始めた。おせちはもうないし、雑煮も飽きたってことで。今は餅のアレンジをふたりで手掛けてくれている。
その間に、俺は昨日から空元気の旦那の様子が気になってたので聞くことにした。一番知っているはずのこいつが黙るくらいってことは……よっぽどかもしれないのに。
「俺らじゃ頼りにならないのか?」
「……見抜いていまして?」
「元気ないことくらい、篤嗣でもわかるさ。けど、俺らが突っ込んじゃいけねーくらいかとは思ったりはしたよ。それでも」
近しい意味で、お互いを生かしてくれる……危機とまではいかないが、恩人の悩みくらいは聞いてやりたい。俺をホムンクルスじゃなく『人間』にしてくれ、色々魔法でこっちの人間に仕立ててくれたんだ。
篤嗣とともに、年を食ってどっちがどっちで死ぬんだとか笑って話せる側に立ててくれたのも……ユディの旦那のおかげ。なら、マリアーノはホムンクルスとして向こうの世界でも生き続けれるようにしたっていうのであれば。
もうわだかまりはないはずなのに、あの元気のなさはなんだ? セックスレスどころか俺らくらいにお盛んなのは知ってんのに、昨日だけ向こう側でなにかあったのか??
「口止めはされていましたが、ご自分で気づかれたとなると……」
「お前がなんかした?」
「わたくしというよりも、『精霊』が仕向けた可能性があるのです」
「『精霊』?って、お前の核になっている??」
「ええ。主さまを欲するのは『わたくし』ではないと……宣戦布告させられた気分ですわ」
最後の言葉を聞いたときに、『精霊終わったな』と俺でも思った。
いくら、ベースにはなっていても『マリアーノ』と『精霊』は別物。いずれはどちらかが主人格になるのは決定事項だが……これはもう、『マリアーノ』が奪い取る前提で今も肉体か精神側でせめぎ合いが起きているのかもしれん。
となると、旦那の意識に入り込んで『マリアーノ』を取り上げるとかなんとかした……なら、『精霊』が仕向けたにしては馬鹿な宣戦布告じゃないだろうか? 旦那を必要以上に悲しませるだけでなく、余計に『マリアーノ』への執着が向上するだけだろうに。
どっちも、馬鹿で愚か。
どっちも、悲しくて愛おしい。
なんて、小説とかの似非知識になりそうだけど……そんな攻防が『マリアーノ』の中で起きていたのなら……旦那はただの被害者だな。めっちゃ可哀想!!
「ふたりとも~。ご飯出来たよー」
「無水ハヤシで野菜とキノコマシマシだ」
「わかりましたわ~」
表面上は『マリアーノ』が隠しても、いつかは『精霊』もそれを黙ってなかったのが今回で分かったのなら……ユディの旦那はどっちを取るんだろうか? ホムンクルス化しただけの身体か、魂は別の精霊か。
難しいが、選ぶのは本人だからな?
次回は水曜日〜




