第47話 ホムンクルスに血はあるのか
「……ナルディア。ちょっと協力してほしい」
「なんすか? 改まって」
「……ホムンクルスより、人間にしたいって言ったでしょ?」
「あー、はい」
理論の組み立てくらいなら、賢者であったときも禁忌だからだけど理解はしていた。
今その地位はないし、組み立てを実現するにはどうすればいいかでホムンクルスを人間体に創り変えることが出来てしまう。禁忌の中でも禁忌だが、僕自身禁忌の一環でマリアーノちゃんから受け取った体液で不老長寿になってしまっているんだ。
禁忌なんて、今更怖くない。
だからこそ、ナルディアにも再確認を取りたかった。
「本当に、アツシの寿命が尽きるまで傍にいてあげれる? 君自身の身分偽装もできなくはない」
「あ、はい。それはたしかに」
「わかった。提供してもらいたいものがあるんだ。君の『今』の髪と血液」
「……それだけで?」
「魔法薬の材料として、いくつかね。ちょっと多めにもらうけど」
「わたくしが血をお取りしますわ~」
「ちょい待ち!? 苦無はだめっしょ!!?」
「……マリアーノちゃん。冗談でも材料の取り扱いもあるんだから、普通に針で」
「はい、では仕込み針で」
「マリアーノ? 俺で遊んでない??」
髪は根元まで欲しいから、数本抜き。血は針で垂れたのをシャーレに入れていく。これであとは、向こうの方で調整していた試験薬と混ぜ……僕の魔力を込めた魔法薬に仕上げていくだけ。出来上がったのは三日後で、飲むのにはアツシも立ち会ってもらった。
「……ホムンクルスにも血があったんだ?」
「感心するとこ、そこ?」
「いや、勝手なイメージ持ってただけだけど」
出来上がった薬は銀色の錠剤。これひとつで、国の資産が賄える代物だけど……完成しているかを確認するのに時間がかかったからね。マリアーノちゃんに飲ませるわけにはいかないから、久しぶりに鑑定などに時間をかけたのだ。
ナルディアは水の入ったコップと、空いている手には錠剤を。しばらく眺めていたが、最終の注意として僕はもう一度確認を取る。
「これを飲んで、身体が創り変わるのは魔法薬だから痛みはないはず。だけど、効果を発揮できたら……二度と元に戻れないと覚悟しといて。逆を作るのなら、また血と髪の毛補充しなきゃいけない」
「……いや。俺! 人間になる!!」
「ナル……なんか、言い方勇者ぽい」
「篤嗣が言わんで!?」
と言い切ったあとに、錠剤と水を口に含んで一気に飲み込んだナルディア。一瞬、身体が青く光ったが痛みなどの副作用はなかったみたいなので安心したよ。確認のために、アツシにナルディアの身体をぺたぺた触ってもらえば。
「なんか……質感が、違う? 前も体温あったけど、ぬるいより熱い??」
「……人間、なれたん?」
「じゃね? 大きな差は……こんなくらいだけど。いきなりシたらいかんだろ?」
「まあ、僕とマリアーノちゃんは向こう行っているから。しばらく『確かめて』ください」
「ん」
「お、おぅ……」
それから二時間くらい、僕とマリアーノちゃんは自分たちの部屋でいちゃいちゃしてたけど。アツシたちも同意の上で体液交換したとかで……マリアーノちゃんが召喚扉越しに掃除をお願いするくらい、恥ずかしくて向こう行けなかった!!
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