第46話 『本』はダメでも?
「主さま? 寒くなるということなら、こちらはいかがでしょう?」
まあ、致したことである程度彼も落ち着いたのか。タブレットを持って僕の前に差し出してきた。彼にもパスワードは教えているので扱えるようにはさせてあるけど。なにを?と画面をのぞき込めば。
『本』以上に魅力的なそれを見て、朝ごはんのときにアツシに提案したんだ!!
「……ノベルティで、ブランケットを作りたい??」
「そう……お許しが出たもので」
マリアーノちゃんから、と言えば、アツシも納得したのか『ああ』と頷いてくれた。
「たしかに、ブランケットならいいかもな。くるまっても……だし」
「だろう?」
少し間が空いたのにはツッコミを入れなかったが、お互いにわかり切っていることなので言い合わない。『マリアーノちゃん』の所有物って目印がつくことくらい、推し活抜きにしても同意見だしね。
「けど。資金は問題ないとして……俺の住所で毎回ユディさんが買いものしてもなあ」
「そう、そこ。僕の『本籍地』は別のとこに偽装してあるから」
この建物で毎回毎回、収集の荷物が届くのは大変よろしくない。なので、僕は身分登録のカードに魔法で細工することにしたんだ。『転送装置』とかを組み込んで、召喚扉向こうの家に荷物が無造作に置いてあってもおかしくないように!!
試しに、実は今朝のうちに食品で試したら出来たんだよね? アツシに見せれば、それならとその食品は冷凍庫に入れた。業務用の鶏肉だから、解凍するまで使わないし。
「まあ、夢中になるのはわかるけど。俺に節約言うんなら、ユディさんもほどほどにしろよ?」
「……はい。それはもう」
軽く二十歳近く年上だから、あのときは偉そうなこと言っちゃったけど。僕の貯蓄がこちらだとかなりの資産を養えるくらいあるからって、アツシが年を取らないわけじゃない。学生を卒業したら、この部屋に常にいるのは相方になったナルディアだけだ。ナルディアの人間への転身は……まだ研究を始めたばかりだから、魔法で下手に調整はしていない。
とりあえず、今回はノベルティの作成ってことで……マリアーノちゃんを印刷したブランケットとやらをどこの印刷所に頼むかが問題だ。
安さよりも、質感の良さとかの『口コミ』を重要視しながら選び。マリアーノちゃんとも打ち合わせしながら選んでから、一週間後には。
「まあ、本当に」
「……可愛い!! 美しい!!」
段ボールの中に、丁寧に梱包されたブランケット。表面には僕が撮った写真でも、ブランケットへ引き延ばしても大丈夫か確認したものにしたんだよね?
背の高い僕に合わせて、通常サイズよりかなり大きめ。マリアーノちゃんが僕の懐に入っても十分に包み込めるくらいの大きさ。お互い、事後のときに寒くなっても……なんて、アツシくらいにはだいたい予想ついちゃっているだろうけど、いいよね!! 僕の魔法が少しでも推し活に役に立つくらいなら!!
偽装魔法はあんまりよくないが、世界を越えているとなると誤差を整えるのは大変だから仕様がないのだ。
次回はまた明日〜




