第45話 作ってみたい『本』
画像のデータも増えてきた。
そのデータを保存したり、整理するための道具も確保できた。
なら、あのイベントでちょっと気になっていたものが作れる段階まで来たかもしれない。
資金はそれなりにあるし、僕なら……と思って、アツシに相談したんだ。『本』を作ってみたいという願望を。
「……マリアーノとナルディアだけ、だよな? 映したの」
「そうだけど?」
提案してみたけど、あんまり乗り気ではなかったみたい? アツシの部屋には、ほかの人たちが作った本が収納されているからおかしくはないのに? 何か別の問題でもあるのだろうか??
「……売る目的?」
「いいや。自分で欲しいだけ」
「完全自己満足、か。 んじゃ、そこのマリアーノが許した?」
「ん?」
マリアーノちゃんの許可がいる? なんで?と思ったけど、優雅にお茶を飲んでいた彼はにっこりと笑っているだけ。このパターン、前にもあったぞと背中に寒気が走った気がした。
「……向こうで話し合ってこい」
「……はい」
「ふふ。行きますわよ、主さま?」
クローゼットに移動して、僕の部屋へとくぐれば……マリアーノちゃんはまだにこにこしていた。けど、やっぱりそのにこにこが怖いです!! 僕、マリアーノちゃんの画像とかをまとめた『同人誌』を作りたいと言っただけなのに?? これも浮気行為になるの!!?
「……あの、マリアーノちゃん?」
「はい?」
「本も、だめなの?」
「……夢中になられるでしょう? ご覧になって」
「え? まあ、君が写っているし?」
「それが嫌ですわ。最近も構ってくださいませんもの」
たしかに、時間さえあればタブレットを操作して画像の整理やなんやらをしているような?
それで自分との接触がおろそかになっているから……淋しかった? なんて可愛い嫉妬なんだ!! けど、悪いのは全面的に僕なんだけどね。だから、彼を引き寄せて耳元で囁いてあげた。
「ごめんね、君を置いてけぼりにしちゃって」
「……でしたら、わたくしをもっと愛でてくださいませ」
「今日が僕からでいいの?」
「あの画像を慈しむように、わたくしも……です」
「それ以上に、してもいいのなら」
「まあ……」
昼間から致すのはよくないというわけじゃないけど。今日は特別何もない日。最近、少し褥での運動もおろそかにしていたから、マリアーノちゃんも色々不満が溜まっていたかもね。僕からなんて、大体決まった愛で方しかこれまで出来なかったけど……今日は。
「……口づけて、いい?」
出来るだけ、優しく壊れ物を扱うような……が、僕なりのマリアーノちゃんへの愛情表現だから。頷いてくれたあとに、しっとり柔らかい唇を互いにこすり合わせていく。服を脱がせば、女性のような凹凸のある上半身じゃないのに、厭らしく見えてしまうのは外がまだ明るいせいだけじゃないだろう。
きちんと男性の身体をしているのに、愛でたいそれはかつて娼婦と疑似恋愛を買ったときの……それ以上の興奮を覚えしまうんだ。まっ平らな胸とお腹を触れば、艶のある彼の声が漏れ出るから……自分しか聞けないように、くぐもってもいいからと自分の唇で塞いだ。
次回はまた明日〜




