第42話 鍋は鍋でも
「初回の鍋だけど、二種類あるから多数決でいくぞ」
僕とマリアーノちゃんがこたつ沼から無事に脱出できたあとに、アツシの部屋に行けば。
買い物から帰ってきたあとなのか、アツシは見慣れないものを持っていた。食材らしいけど……大きな液体の入った袋?かなにか。鍋の材料みたいだが、識字できる僕の目で確認しても。
「トマトスープ、カレー鍋? どっちが美味しいの?」
「カレーはまだ食べさせてないけど。見た目は『アレ』だが味はスパイス効いててめっちゃうまい。トマトは酸っぱいけど、あっさり系かな」
「へー? どっち選んでも、残ったのもまた食べれるならどっちでもいいけど」
「そういうと思ったけど。……鍋の初心者というか、俺の好きなチョイスで買ってきただけだし。〆の飯は同じようなのにしたが」
「しめ?」
「麺類か米かで悩んだんだが、米で食うと美味いんだよな」
「……どっちのが美味しい?」
「さっぱりよりも、こってりが好きなわたくしはカレーですわ」
「俺はどっちでもいいかなあ?」
「……マリアーノちゃんに寄せたいのでカレー」
「……じゃ、ユディさん優先ってことになったから、カレー鍋だな」
材料の仕込みは、今回僕とかマリアーノちゃんが加わる必要はなく。アツシとナルディアで調理を担当してくれているらしい。その間は、僕んとこよりは小さいけどこたつに入ってぬくぬくしてました。やっぱり、こたつ沼になっちゃう!!
「ソーセージは最後がいいから。鶏肉も火が通るの早いし」
「レンチンで芋に火通すの?」
「そーそー。あの袋に入れて耐熱皿にのせれば」
ちゃんと料理しているふたりの背中が頼もしい。僕も覚えたいけど、今はお邪魔だから……マリアーノちゃんとこたつ布団の中で手を握っています。ちょっと恋人つなぎのこれが! こたつであったかいから余計に気持ちがいい。ご飯前なのに、ムラムラしてくるが……これも、我慢!!
しばらくして、鼻に届いてきたのは本当にスパイシーな独特の香りだった。
「アツシ。もうすぐ出来るのかい?」
「時短色々したから、もうちょい。あ、ユディさんたち白い服か?」
「ん? 服の色?」
「出汁の色が飛んだら、クリーニング代やばくなるから。なんか黒いもんとかに着替えて!!」
「あ、うん?」
マリアーノちゃんは黒のシャツを着ているから問題ないけど、僕はそうじゃない。時間もないから、ここは無詠唱でさっと着替えてみた。……色だけ、マリアーノちゃんとおそろいのタートルネックとやら。これ、首元が隠れるしあったかいから重宝しやすいんだよね?
「ほい、出来た。おまたせ」
こたつの上に、どんと置かれた大きな鍋。
中にはこれまで見てきた冷凍食品にはなかった、色とりどりの食材が入っていたよ。熱々で美味しそう……なんだけど、色がすっごい茶色い。ナニカをイメージしちゃいそうだけど、スパイシーな香りがお腹を刺激するから食べたいと思っちゃうんだよね?
「まあ、これがカレーの匂い。素晴らしいですわ!」
マリアーノちゃんっもこう言っていることだし、アツシが最初取り分けてくれたから……ちゃんと食べなきゃだしね!! お茶碗より少し大きい器に入った具材の色はアレだけど……やっぱり、いい匂いだったからフォークでひとつ口に運んでみた。
次回はまた明日〜




