第41話 こたつ沼になる
「え? アツシ、こういうご飯作れるの?」
「……材料があればな。完璧には無理だけど」
今日のご飯も、カップ麵とかって美味しいご飯ではあったけど。塩気が濃いからとかあんまり身体によくないとかで……アツシがちゃんと『自分たち』で作ろうかと言い出したのだ。若返りであんまり感じてはいなかったけど、たしかに濃いめの味付けなのは冷凍食品も同じ。
なら、普通の食材を買いだして、『作り置き』とやらをいっぱい作ろうということになった。僕もせっかくなら覚えたいなって、資金面はもちろん手助けしていくとも。前回、ギルが届けてくれた金額を見ても……日本円とやらで見ると、相当な額だったしね。
なら、自炊を覚える意味でも勉強料になるってことだから。
「チャーハンとか、スパゲッティじゃないのを作るのかい?」
「それも作れなくないけど。……飽きないか?」
「全部美味しいから、僕はいいけど」
「わたくしも大丈夫ですわ」
「俺も~」
「……けど。そろそろ寒くなるし、人数いるなら鍋料理がうまいんだよな? 家で焼き肉するのもいいけど、匂いがぬいらに移るし」
「焼いた肉のにおい?」
「煙が凄いんだよ。換気しててもダメ」
「僕が魔法使おうか?」
「毎回焼き肉も塩分濃いから却下。たまの贅沢以外は作り置きや鍋料理が身体もあったまる。もうすぐ、冬近いしな」
「冬……か」
寒い季節。雪の降る淋しい季節。
賢者だった頃は、寒いから部屋にこもりっぱなしで仕事してたっけ……。あんまりいい思い出がないけど、今はマリアーノちゃんがいるから……もっと違う過ごし方があるんだろうか。とりあえず、僕とマリアーノちゃんには『コタツ』とやらを向こうの家に置くかどうかを聞かれた。
「あら、こたつは素晴らしい防寒設備ですわ」
「俺んとこはもうあるけど、一人暮らし用だからちっさいし……買い直すにも置く場所がないからな。見に行くのに付き合うけど」
「どんな設備?」
「ホームセンターに行こうぜ」
連れてってもらったホームセンターとやらは商業施設のひとつらしく……僕感覚だと商会の店舗内ってところかな? 家具家電、掃除道具に娯楽品も少々……。そして、肝心の『コタツ』のコーナーに行けば。
「机と布団をかぶせたもの?」
「内側に暖房器具があって、下半身をあっためるのに使うんだよ」
「ああ、座るときに寒いから?」
「そ。気に入ると思うぜ? 布団の柄や机のサイズは色々あっから」
なら、マリアーノちゃんといっしょに使う意味で薄い赤の布団を選び。僕とマリアーノちゃん用ってことだけど、寝ころがってもいいような大きいのを選んだ。組み立ては僕の家ですることになり、マリアーノちゃんと組み立てたが……プラグがないので、電気を通すことが出来ない問題は、魔法で解決。プラグの先に雷をまとわせたら使いたい放題だ。
「まあ、あったかい」
しばらくして、中に熱が行き渡ったのか。僕とマリアーノちゃんは隣り合わせで座り……くっついている以上の温かさに、思わずぽわんとしてしまう。布団の買い替えもいっしょにしたけど、異世界の布団技術も侮れないなあ……。僕の使ってたそこそこ高級なのよりも、段違いに温かいし触り心地がいい。
それに、このコタツの温かさはやばい。
足が適度に温まり、腰まで来ると……その、マリアーノちゃんが横に居てひっついてくれているから。ムラムラするのが止まらないわけです!! まだ昼間だからダメなのに!!?
「主さま、このこたつ……気持ち良過ぎて出れませんわ」
「……たしかに。あったかいから、出れないねぇ」
色っぽい言い方だけど、それはコタツに関することだと僕も我慢した。青二才の年頃なんてとっくに過ぎているはずなのに、若返りと体調が整ったことで本来の性欲を取り戻してしまったのか。
おそるべし、これがアツシの言う『こたつ沼』なのか!!
次回はまた明日〜




