第27話 推し活の極み?
僕は、アツシの『推し活』とやらをなめていたみたいだ。なぜなら、家で見せてくれた撮影よりもずっとずっと『活き活き』しているように見える。マリアーノちゃんとナルディアに簡単な説明をした後は自由に動き回っていいっていうのに、うまくついて行って……いろんな角度で真剣に写真を撮っていく姿は素人には見えない。
大学では違う学びをしているそうだけど、本当に就きたい職はこちらなんじゃと思うくらい顔が輝いていた。
「次はナルが攻撃バージョン」
「はい。音があまり鳴らない範囲で受け止めますわ」
「おっけぃ。長刀と苦無の接近戦ってなかなかないしね」
三人は当たり前のように打ち合わせていくけど。僕、ちょっと以上に話題についていけないから……かなり疎外感を覚えた。もう少し、おじさんにもゆっくり撮らせてください。このデジカメじゃ、マリアーノちゃんの勇姿をうまく収めきれません。まだまだ修行がいるんだなと自覚しました、反省。
「あら? 主さま? お撮りになりませんの?」
次にアツシが指示を出す前に、マリアーノちゃんが気づいてくれたのか僕のぼっちが解放された!! アツシはやっぱりきづいていなくて『しまった』って顔をしていたけど……夢中になっていたのは仕方がないから、いいよと返事をしてあげた。
「すごいね。アツシみたいに撮れる人って多いの?」
今度は僕が撮りやすいようにマリアーノちゃんたちにはゆっくり動いてもらうようにしてから、アツシに話しかけてみたんだけど。アツシはなんか、ため息ついちゃった?
「……そんなことねーよ。本職のカメラマンほどの機材は持ってないし、介護の仕事の傍ら趣味でちょーどいいんだ。本職にしたくはない」
「それでいいの?」
「んー、まあ。ひとそれぞれだし? 俺は、丁寧に衣装とかの作品も作りたい性格だからこんなかも。……別に、推し活を極めているとかじゃないから。俺くらいはそれなりにいるよ。資金さえあれば」
「……そんな感じなんだ」
たしかに、アツシが裕福かと言われれば違うとも言えるし。僕も向こうでは似たような感じだから、ウマが合うのかもしれない。それでも、お互いの恋人が『推し』で『ホムンクルス』っていう共通点があるから……こんな風に年の差友人でのやり取りが出来るのかもね?
「よし、一端休憩。時間……は、まだ大丈夫だな」
「あんまり動いてないから、俺は平気」
「わたくしも同じですわ」
「けど、ホムンクルスって水分補給いる感じなのか?」
「いいえ」
「んー、食事も本当はあんまり……だけど、篤嗣たちと食べるの楽しいし」
「アツシ。そのことなんだけど」
ナルディアについての『人間変換』の研究をしようか、改めて提案してみたんだけど……アツシはなぜか渋い顔をしてしまった?
「……それ、ユディさんが罪に囚われることない?」
「ないとは?」
「禁忌とか、そーゆー部類じゃないの? その魔法の研究」
「まあ、聞こえは悪いけど。記録さえ残さなければ、大丈夫じゃないかな? 僕の頭に残すのは問題ない」
「無理してない?」
「逆に、僕は……まあ、マリアーノちゃんと恋人になってそういうのもしたし。いつまで長生きするかわからなくなったからね。全然気にしてない」
「え、マジ?」
「だから、俺最初から出さなかったでしょ?」
「あぁ……ぁ」
「ふふ。篤嗣様、可愛らしい反応ですわね?」
「マリアーノ、元の持ち主はいっしょでもあげないよ?」
「問題ありませんわ。わたくしには主さまがいますもの」
というやり取りをしたあとは、結局小休止しようと初めてのペットボトルの飲み物とやらを飲むことに。ムギチャってお茶らしいけど、香ばしい麦の香りが独特で意外に美味しく飲めたね。
次回はまた明日〜




