第22話 自分よりも愛らしい
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まあ、本当に……主さまは可愛らしい。
賢者に至るまで、わたくしの魂の核である『精霊』はずっと待ちわびていたようですけれど。こちらでの『魂宿り』になっていたマリアーノと融合する上で、精霊そのものは核部分へと確立していった。
本能意識はあれど、基本はわたくしのままで良いご様子。
主さまの『初めて』をいただけるためでしたら、手段を選ばない代わりに……と、精通関連はわたくしに譲ってくださったようですが。
(愛らしかった。ですが、後朝ではわたくしを労ってくださった……)
こちらがぺろりといただいてしまったのに、あのご様子ですとご自分から行為を施してみたいのでしょうか? そんな……ことが、本当であれば!!
(わたくしは……ボクは! 主さまになら従順な僕のように施しを受けたい!!)
つい、つい……本性の『男』が出てしまいそうでしたけれど。アサシンとして、両面の性を持つわたくしは……顔立ちの関係もあり、身体はともかく『女』扱いが多かった。
男娼としてなら、いくらでも弄られた経験はマリアーノのゲーム情報としては組み込まれていますが。実際に『致した』のはわたくしも初めて。
存分に撫で回し、思うがままに交わった……あの恍惚とも言える幸福感。
今晩も……今晩もいただけるのでしょうか? 滾ってしまいそうで危うい……わたくしの愛らしい主さま。ゲームの方へ夢中になりそうでしたが、『わたくし』を引き当てたことへの喜びは目の前にわたくしがいるのに少々複雑でしたわ。
ですが、仕様の関係でそのまま遊べないことにはほっと出来ましたが。
「じゃ、そろそろ寝るか」
篤嗣様が言い出した言葉で、わたくし平静を保っていられたでしょうか? 篤嗣様とナルディアの行為については……『そうでした』と言わんばかりのオーラ感知でわかっておりますが。
今朝方、主さまがおっしゃっていましたように。ホムンクルスの体液を通常摂取し過ぎると大変、と思い出しましたの。では、エチケットは注意しなくてはとナルディアにこそっと告げましたわ。
「あ、やっぱり? 昨日……まあ念のため外には出したけど」
「こちら側でのエチケット、買いに行かれては?」
「篤嗣と話した上で、ちゃんと言う」
「ええ、よろしくてよ」
話が終わってから、すぐに主さまのところへ向かい腕を組みましたが……若干わたくしが引きずられていくような?? クローゼット経由の召喚扉を潜ってから閉められると、わたくしを強く抱きしめてくださいました??
「…………違うってわかってても嫌だ」
「……主さま?」
「……マリアーノちゃんの恋人は僕だ」
単純な情報交換の会話だけでも嫉妬していただけるだなんて!! 本当に……愛い殿方ですわ。わたくしの外見だけですと、たしかにナルディアと並べば見目の良い男女の恋人にも見えそうですけど……わたくしの恋人はたしかにユディ様ですもの。
御顔に手を添え、そっと持ち上げれば泣きそうな愛らしい表情でした。ですから、軽くですけど口づけましたの。
「ご安心くださいな。わたくしの恋人様も間違いなく貴方様です」
「……ほんと?」
「ええ。事情はさておき、わたくしは貴方様を求めていますわ」
「じゃあ……」
もう少しお話かと思いましたが、ひょいと抱きかかえられ……朝整えたベッドに横たわる形に?? これはもしや?!
「……主さま??」
「まだ二回目だけど、今日は僕から」
「え……あ」
爽やかな男性特有の体臭に、平常を保ててない今では酩酊しそうでして。服を脱がされながらも近づいてくる、主さまの柔らかな唇に釘付けでした。昨夜、わたくしからして差し上げたように、しっとりしつつも濃くて甘い口づけ……いいえ、大人のキスを!?
そこからはまるで、薔薇の花に包まれたような、良い空間が始まりました……。
次回はまた明日〜




