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竜達の愛娘  作者: ao
第五章 ―終章―
98/108

短めです。

/シュベル


 いつの間にか寝てしまったらしい私を起したのはウィリアだった。朝食にも降りず寝こけていたらしく、昼食で痺れを切らし部屋へ来てくれたらしい。

 すまないと謝りつつ、彼女と一緒にダイニングへと降りれば、ベルンはじめ皆が心配そうな表情を見せていた。


「すまない。寝ていたようだ」


 そう伝えダイニングの椅子へと座り、ウィリアお手製の食事をとった。食事中ハタと気付き彼女に学園はどうしたのか? と訪ねれば、朝降りてこない私を心配して休んだのだと言っていた。

 楽しみだっただろうにすまないことをしてしまった……と反省する。


 その後、思念で皇王に召還した者たちが夕方にはくるでしょう。と聞きベルン、カシリア、カシのをつれ皇城へと移動し、皇王たちと数時間振りの再会を果たした。


「朝方ぶりだな」


「えぇ。今朝はお疲れ様でした」


 寝不足のせいか、声はそこまでではないものの、皇王の目の下には見事な青黒い線が入っている。宿のことについては、私に責任があるため先にそちらについて話しを切り出した。


「宿の件についてだが……」


「それでしたら、我々の方で既に謝罪、建て直し、賠償金の支払いを済ませてありますよ。宿の方からも、もう気にしないでくれと言うお言葉をいただきましたので、解決したものと思ってください」


 そう返して来たのはカシだった。

 なんと寝ている間にカシたちが動いていてくれたようだ。

 できれば、食事中に報告しておいて欲しかった。と言う思いを込めカシを見れば、肩を竦め苦笑いを返された。


「そうか……苦労をかけたな。ところで怪我人や死人はでなかったのだろうか?」


 労いの言葉をかけ、心配ごとを口にすれば、そういった者は出ていなかったと報告される。

 ふぅ~と息を吐き良かったと心から安堵した。

 それで……と何やら言い難そうに口を挟んだのは宰相だ。


「昨日のガイアス殿の件でお話が――「口を挟んで申し訳ないのですが……」」


 宰相の言葉に被せベルンが口を挟む。


「その件について、竜族からの返答は否です」


「理由をお伺いしても?」


「既にご存知だとは思いますが、元々人族に対し信頼を寄せているわけではないと言うのが理由です」


「なるほど……確かに、皆様には我々人族が多大な迷惑どころか、攻撃を仕掛けてきた歴史がありますから、そう仰るのも当然だと理解いたします。

 その上でお願い致します。今一度ご検討いただけませんでしょうか?」


 ベルンと宰相の会話を無言で聞き、我らの意志として答えるも宰相にも譲れぬ何かがあるようで、深く腰を折り頭を下げられてしまう。

 彼の言葉は信じられると思っているだが、ガイアスと言う人物に関して何も知らぬ今の状態で、信じると言う言葉はだせないのだ。


「今すぐの返答はできんな。宰相は信頼に値すると考えている。だが、ガイアスと言う人物を知らぬまま安請け合いすることはできん」


「確かに……性急過ぎたと思います。明日、本人と話してからもう一度御再考いただけますようお願い申し上げます」


「ふむ。そうだな……そなたの頼みだ。叶えてやらねばならんだろう」


「お言葉、感謝いたします」


 宰相との会話が済み、紅茶が配られるとそのタイミングで、コーラルの従者を捕らえに向わせたリュークたちから思念で報告が入った。


《シュベル様。捕らえました》


《そうか。やけに時間がかかったな?》


《それが、一人どうしても見つからず……今も捜索はしておりますが、安否すら不明です》


《その者の名はわかるか?》


《オーカスです》


《わかった。特徴などがわかるのならば、書くことが得意なものに書かせてみてくれ》


《はっ。それで捕らえた者はいかがいたしましょう?》


《皇城に運び込め。伝えておく》


《畏まりました》


 一人だけ逃げ切った者がいたか……全て捕らえきれなかったことに不安と共に歯痒い思いを感じる。

 それでも、先に知らせておいたほうが良いだろうと皇王へ伝えようとしたその刹那、微かに聞こえた気がしたのだ……カルミティアル様の声で『あの子が危ない!』と。


 突然立ち上がった私に驚いたような顔を見せる面々を余所に、急ぎ思念をウィリアへと送りつつ空魔法を使い屋敷のリビングへと帰る。何度呼びかけても返事がない。

 視線を動かしウィリアを探すも居ない。焦りを覚え近くにいた竜たちに、ウィリアはどこだ? と聞けば、アルミスと共に出かけたと言う。急ぎアルミスへ思念を送る。


《アルミス》


《あら、シュベル様どうされましたか?》


《ウィリアと一緒か?》


《えぇ。近くのお店にお手洗いにいってらっしゃいますが、ご一緒ですよ》


《直にウィリアへ確認を取れ、思念が届かない》


《そんなことは……シュベル様! ウィリア様のお姿がっ》


《場所はどこだ?》


《デュセイの貴族街近くにある、宝飾品の店マルクスと言う店ですわ》


「くそっ!」


 ウィリアが攫われた可能性に焦り、言葉を吐き捨てると間を置かず全ての竜、そして一度思念で会話したことがある人族に対し思念を通す。


《聞こえる者全てに告ぐ。ウィリアを探せ! デュセイ貴族街近くにある、宝飾品の店マルクスから姿が消えた。竜体で飛んで構わない。今すぐ賊を捕らえウィリアを無事に取り戻すのだ!》


 伝え終えると同時に、カシ、ベルン、ジオール、デイハ、セシル、アルティ、ルリア、カシリアたちがリビングへと集まった。ルリア、カシリアへアルミスの保護と店の者への尋問を任せ、他の者たちには、店付近で不審な者たちを見なかったか聞きだすよう命令を下す。


 私の命を受けた仲間たちが、上空を飛びまわる空へ私も飛翔する。

 ウィリアの姿を探しながらも必死に頭を回転させる……捕らえたはずの者たち……コーラルの手の者で逃げおおせたオーカスがやったのだろうか? それとも……新たな手の者か?


《シュベル様。ユーフェリテに出した使いからの報告です。ジェシカの姿が消えました》


《ならばジェシカが今回の件に関与していると言うのか?》


《可能性としては大きいようです。直にコーラルとその他の護衛に尋問をかけましょう》


《頼む》


 皇王からの報告で、ジェシカが関与して可能性が高くなったことを知る。

 ……何故そこまでする。コーラルが消えた今、母の治療などできぬだろうに、今更ウィリアを攫う意味がないだろう?


 ジェシカの考えなど理解できない。皇王たちが尋問にかけると言ってくれてはいるが、それが済むまでただ待つことなどできなかった。デュセイの街を翼を広げ隈なく探す仲間と共に自身もまた、ウィリアの姿を探し飛び回った。





 太陽が西へと傾き、徐々に日が暮れ始める。

 全員でどんなに探しても、有益な情報も、ウィリアの姿も、ジェシカの姿も見つからなかった。


 私たちが飛ぶことで警戒され隠れられている可能性に思い至った私は、皆へウィリア捜索の中止を伝えたのだが……皆一向に止めようとしなかった。


 それだけウィリアの安否を案じているのだろう。次々と仲間がウィリアを呼ぶように鳴く。その声が、その気持ちが痛いほど伝わり、思念で声をかけつつ私も皆と同じように喉を鳴らした――。

いつもありがとうございます。

皆様が読んでくださるおかげで、最終話まで無事に書けそうです。

今しばらくお付き合いください……。

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