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竜達の愛娘  作者: ao
第五章 ―終章―
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ゴードヴィズの証言

/シュベル


 宰相の尋問に対して、コーラルは素直に答え始めていると言っても、皇王と国王からの圧と……ベルン、カシのやらかした例のやつによって全てを曝け出す以外になくなったのだが。


「では、あなたが密入国をした際、手引きした者は誰ですか?」


「それは、兵士のルルガー隊長です」


「ルルガーと言えば、セルスティア王国との国境に配置した第5兵団の団長の名ですね。

 何故彼があなたに手を貸したのか教えて下さい」


「……」


「答えよ!」


「グリンヒルデから……学費を支援すると約束しました」


「なんだと!」


 宰相の質問に答えていたコーラルが、何故かと問われ詰まると皇王から強い口調で問われ、ここでもまた学園のお友達だと答えた。その答えを聞いた皇王が怒りのあまり、声を大きく張り上げた。


「まさか、その程度であの方はあなたに下るとは思えないのですが?」


「……じっ、じじつよ」


 目を眇め鞭を持つ手の手首をしならさせる宰相に、必死の形相で訴えるコーラルに違和感を覚える。別の何かがあるのではないか……?


「本当にそうか?」


「なっ」


「私が思うに、それ以外にも何かしたのではないのか? 例えば、娘を攫うとかな……」


「そっ、そんなことするわけないじゃ「コーラル殿下に命じられて、私が手配いたしました」」


 私の問いにコーラルが否定しようとするも、横に座るゴードヴィズが口を挟み自白した。


「その全てを話してくださいますか?」


「はい。お話しいたします」


 宰相の言葉に、素直に全てを話すと伝えゴードヴィズは詳細を詳しく語りはじめる。

 事を起したのは、コーラルが卒業し帰国した後のことだそうだ。

 帰国した後ひと月ほどたった頃、娘宛にコーラルから手紙が届き娘の婚姻が近い彼は、娘に内緒でその手紙を開け読んだ。


 そして、娘とコーラルがそう言う関係にあったことを知り憤りを感じたものの、娘が好いた相手であり国の第2王子と言う立場、極めつけは商店の利益も見込めると踏んで、今後娘に変わり自分が手伝うと申し出たそうだ。


 手紙でやり取りをする中でコーラルが、どうにかしてアルシッドク皇国へ入れるようにして欲しいと懇願してきた。その見返りとして、自国で産出される竜の皮製品を安く降ろすと言う言葉に乗せられて、彼はコーラルに会いに向った。


 セルスティア王国へと入国した彼は、コーラルとの待ち合わせ場所である宿屋で、ルルガー隊長の娘を攫う計画を聞かされた。最初は反対したものの、娘には決して手を出さないこと、無事に帰すこと、それと、人の手配だけしてくれれば後は自分がなんとかすると言うコーラルの言葉を信じ人の手配をした。


 そして計画は実行され、誘拐されたルルガーの娘を救った恩を売りコーラルは、無事密入国を果たしたと言う訳だ。


「なんと卑劣な……」


「これがグリンヒルデのやり方か……」


「お二方共、本音が漏れておりますよ?」


 皇王と国王が、ありえないと言葉を漏らすのを止めるよう宰相がその口を開く。

 他に何か隠していることは無いか? と宰相に問われたゴードヴィズは、頭を振った。


 そこで、ベルンに視線を向け頷いて見せれば思考を読んだベルンが羊皮紙の束を、テーブルへ並べ、魔道具を起動させた。


「これは、私はゴードヴィズ商店で記憶する魔道具へ写しこんだものです」


 そうして、私が怒りを覚え暴走した映像が流れると皇王たちはその顔をに驚愕をのせた。誰もが痛ましい者を見る視線で、死したブリゲルタの顔を見ていた。

 この映像を始めてみた、ジオールだけが拳を握り締め、憎々し気にコーラルたちを睨みつけていた。


「今回貴方方が殺した竜は、シュベル様……いえ、王竜の友だった竜なのですよ。そして、そこに座っているジオール様の息子です……」


「そっ……そんなこと知らなかったのよ! 私はただっ【 ドゴンッ 】」


 いい訳がましく口を開いたコーラルの声を遮り、テーブルの割れる音が鳴った。

 息子を殺され憎々し気にコーラルとゴードヴィズを睨みつける、ジオールの双眸から、悲しみの雫が流れ落ちる。牙を剝き今にもかみ殺したいであろう彼の想いが、痛いほど心に響く――。


「どうやって……わしの息子を殺した? あれはお前たちに殺されるほど、軟ではないはずじゃ」


 搾り出した声音で、自身の息子の死の際を知ろうとする彼の声が静まり返った室内に木霊す。

 誰も何も言わない時間が続き、ゴードヴィズがその口を開き売りに来た冒険者ギルドから聞いたと前置きして、詳細を話し始めた。


 アルシッドク皇国より西の火山に近い場所に、ブリゲルタは塒を据えたらしい。

 数年前までは安寧に暮らしていたようだった。

 それが急変したのは、ある男が彼の塒の鱗を狙ったことに端を発する。


 その男は、鱗が欲しいばかりに危害も何も加えていないブリゲルタに、あらぬ罪を着せ冒険者ギルドに依頼を出した。そして、冒険者たちはブリゲルタを塒から追い出したそうだ。

 その後も、執拗な攻撃にブリゲルタは塒を点々と変え、ついに雪原地方まで追いやられてしまった。


 住み慣れぬ土地で弱りつつもなんとか塒を確保しようとしていたブリゲルタの隙を狙い、冒険者たちは魔力を止める魔道具を使った……そのまま、寒さにやられつつも果敢に応戦したブリゲルタは、数日後冒険者によって討ち取られた――。


「その男の名は?」


 語り終えたゴードヴィズが、私のその問いに頭を振って答えた。

 誰が命じたのかは不明か……冒険者ギルドに問い合わせたとして、果たしてそれが判るかどうかさえ怪しいところだ。

 敵を討ってやりたい……友のため、ジオールのために――。


「ふむ。冒険者ギルドは現在体制が変わり、マギがギルド総本部を取り仕切っている。

 マギに問えばもしかすれば、相手が判る可能性が高いかと」


「本当か?」


「えぇ。マギはヒルデスの件でシュベル様たちには、本当に感謝していたようですし少しぐらいなら融通を利かせてくれるでしょう」


「頼めるか?」


「もちろんです」


 敵はとれないかもしれないと失意気味だった気持ちが、国王の言葉で浮上する。

 私たちへ協力しようとする人族の王たちに、どう気持ちを伝えたものかと思案する私の耳に取り調べする宰相の言葉とゴードヴィズが、持ってきた冒険者の名なら判ると伝えた。


「他に知っていることはないか?」


「竜を持ってきた冒険者の名ならわかります……」


「全員の名ですか?」


「はい。それからパーティー名も……アルギス、ニュール、バリンス、ガリア、キット、カルシル、ヴィーナ、バルフォン、ヒルナ、リリセナ、ルルシー。パーティー名は、黄昏の月です」


 パーティー名は、黄昏の月か……大層な名前だな。

 ゴードヴィズのあげる名前とパーティー名を聞きでた感想はそれだけだった。

 

「ところで、その二人は今後どうするつもりですか?」


 そう問いかけたベルンの問いに、皇王たちは暫し沈黙すると牢へつなぐと返事を返した。そこで、ベルンは自分の考えを伝える。


「どうせ死ぬ運命にある者たちです。それを使って一気にグリンヒルデと言う国を無くしてしまいませんか?」


「なにを……」


「馬鹿な……」


「ほう。どうすると言うのだ?」


 ベルンの言葉に、驚愕する皇王と宰相を余所に私はその案を詳しく説明するよう促した。


「現在既に、ご存知かとは思いますがグリンヒルデ国内は、荒れております。いつ暴動が起こってもおかしくないほどに……そこで、この二人が、民達から啜り取った税を何に使っていたのか暴露し晒すのです。そうすれば、後は……勝手に潰れるでしょう?」


 ニヤっと笑ったベルンの瞳には、獰猛な光が宿っていた――。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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