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竜達の愛娘  作者: ao
第五章 ―終章―
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コーラルの自白

/シュベル


 突然のことに驚いただろうに皇王は、先に到着したカシからの説明を真剣に聞いている最中だった。

 コーラルとゴードヴィズを抱えたデイハとジオールの姿を目にすると、説明の途中ながらも直に兵士を呼び二人を縛り上げるよう伝えると宰相へと思念を飛ばしていた。


 その後カシからの説明を聞き終えた彼は、まず件の宿屋へ人を遣いにやることとジェシカとその親を呼ぶための召喚状を書きあげ、侍従へ渡していた。

 その侍従と入れ替わるように、宰相が到着する。

 

 慌てて来てくれたらしく、息を切らし扉をあけた彼は私たちの無事を一番に確認すると、厳しい視線を縛られた二人へと向けた。

 詳細な説明を思念ですれば、その顔は更に険しくなった。


 ジェシカの家族についてはその確証が取れ次第、なんらかの措置を下すとの皇王の言葉にウィリアを気持ちを思い少しだけ苦い気持ちになる。


「すまんな。まだリーシャについては何も聞いておらんのだ」


「それは我らがするべきことです。ここまで連れて来て頂いたのですから。これからは我らが拷問してでも吐かせましょう」


 リーシャのことについても気にはなっていたものの、友のことウィリアのことを優先してしまったため謝罪の言葉を口にする私へ、皇王はニヤっと笑いを浮かべ気にするなと伝えてくれた。

 コーラルを捉えたことで皇王たちには迷惑をかけると思っていた……それなのに、この対応だ。本当に素晴らしい人族なのだと思い知らさせる。


「割り込んで申し訳ないのですが……。

 ウィリア様を誘拐する民と言うのが、何処にいるのかはまだ聞いていないのですね?」


「あぁ。少し脅しすぎたようでな……言葉が聞き取り難いのだ」


「なるほど。わかりましたその件についても早急に取り調べを致しましょう」


「たのむ」


 宰相が思案する顔をした後、割り込む形で聞いてくるも私も皇王も特に気にならず、そのまま宰相との会話に切り替え続ける。

 ニコッリと微笑むことで了承を示してくれたのだが、何故か背筋に冷たいものを感じ辺りを見回してしまった。


 そんなことなど気にした様子も無く、宰相は二人へと近づくとその膝を折り優しいけれど底意地の悪そうな笑顔を浮かべ二人へ詰問をはじめた。


「さて、ではお話を聞かせていただきましょうか……?」


「ひぃっ!」


「なっ……なぜ……ぎゃっ!」


 何かをいいかけるコーラルの手を、側にたつカシが平然と足で踏みつけグリグリと回すも、宰相の目にそれは映っていないのだと思った。


「それではまず。お仲間の居場所を吐いていただけますか?」


「そっ、それはいえ――うっ……言う。言うからそれ以上私の手を踏まないでちょうだい!」


「さっさと吐けばいいものを……」


 抵抗するコーラルへ向け、カシの底冷えするほど憤りを含んだ声音が降り注ぐ。

 撓る鞭を取り出した宰相が、それを己の手に打ちつけパシン、パシンと音を立て再度問いかける。


「お仲間の居場所をお教え願えますね?」


「ちょっと、まさかそんな物でぶつ気じゃないでしょうね?」


「だとしたら、いかがされますか? 早く吐いた方がご自身のためではありませんか?」


「宰相ごときが、グリンヒルデ第2王子に向かってそんなことをすれば極刑はまぬがれ――ひぃっ「いいからさっさと吐け……ここで殺されたいのか?」」


 怒り心頭気味のジオールが首を片手で掴みあげその凶悪な顔を近づけ脅す。


「くっ……かはっ……」


「ジオール、それぐらいにしておかねば死ぬぞ?」


 私の言葉に掴む指の力を緩めれば、コーラルがどさりと音を立て落ちると咳き込み荒く息をする。


「逃げ場がないことは理解していただけましたか?」


「ゼェ……ゼェ……ゲホッゲホ」


「我らが王竜の番に手を出そうとしたのじゃ、その命を持って償わせるべきじゃ!」


 忌々しそうにコーラルを見遣り呟くと、フンと鼻を鳴らし私の左横へと移動するとドサリと座るジオールの背を感謝を込めそっと撫でた。

 右横に座るデイハも無言ではあるが、その表情は険しくコーラルを睨みつけている。

 己を必死に律しているのだろうと彼の背にも手を添え撫でてやった。


 中々吐こうとしないコーラルに対しついに、宰相の鞭がしなりその頬を打ちつける。叩かれた顔に赤く筋が入る。わなわなと震えキッと宰相を睨みつけるコーラルに更に鞭が飛ぶ。


「いい加減、吐いて頂けますか? どうせグリンヒルデ王国など(じき)に内乱になるのですから」


「なっ!」


「ご存じなかったのですか? 民は疲弊し国にその反旗を翻す算段をつけていますよ?」


「戯言を言うなぁぁぁ!」


「戯言でこのようなことを言うとでも? くすくす。ではそうですね、もうお一人お呼びいたしましょうかここに……」


 本当に楽しそうに笑うな……などと考えていれば、宰相が此方を向くと唇を動かし私にあることを頼んできた。頷きカシへと思念を送る。


《カシ。セルスティア国王を連れて来てくれ。諸事情の説明は頼む》


《御意》


「ぎゃっ!」


「オット、シツレイシマシタ」


 カシが消えると同時に奇声をあげたコーラルを見れば、狙い済ましたかのようにへたり込み座るコーラルの太ももを踏みつけ立つベルンの姿があった。

 あえて、体重をかけるようにして降りるとどう考えても棒読みのセリフを伝える。そんな彼にチラリと視線を向ければ口角が少しだけ上がっていた。

 わざとだな……そう思いつつも何も言わず宰相の尋問を観察する。


「先程から何度もいっておりますが、先にお仲間の潜伏先をお伝え願えませんかねぇ?」


「わかったわよ。ニルクヘブンの一つ手前の村よ」


「その村の名は?」


「カージスよ。もういいでしょう? 全部話したんだから、さっさと開放してちょうだい!」


 そう叫ぶコーラルに宰相は首を振りまだだと伝える。


「次ですよ。リーシャ皇女に対して何をしようとしたかをお話しいただけますか?」


「そっ、それは……」


「私の娘のことだ、しっかりと話してもらうぞ? コーラルよ」


 宰相の問いに対して言いよどむコーラルに、今度は皇王がその視線を向け口を挟む。

 王の威厳を纏った彼の言葉に、主犯であるコーラルは、瞼を閉じ観念したかのようにポツリポツリと計画を話しはじめた。


「リーシャ姫を妻に迎えろと父王の命だったのよ。私じゃなくてもいいから、グリンヒルデの兄弟の誰かと婚姻させろって言われたわ。

 だから、学園時代の友人に頼んでいたのだけど……彼女が辺境伯の息子と婚約関係にあるって言われて、その婚約者を別の友人に頼んで誘惑してもらうつもりだったの。

 でもその婚約者が誰かわからなくて計画は進んでいなかったわ」


「協力者とは誰だ?」


「フィルボ・アガーシル・ウッドビルとヒルティナ・ナルセシアとニーク・ジョンスよ」


「他にはいないのですか? 例えば、そこにいる男の娘ともあなたは関係を持っていたのでしょう?」


「彼女は違うわよ。確かに関係はあったけれど、結婚した子に連絡なんて取れないわ」


「なるほど」


 宰相が皇王へと視線を投げれば、頷いた皇王が兵士を呼び、その3人の名を告げ城に連れてくるよう命じた。

 兵士が退室するのを見計らったように、セルスティア国王を連れたカシがベルンと同じことをやった……。


「ぐぶっ」


 もう、悲鳴すらあげられないのかくぐもった声を出すコーラルの顔面をセルスティア国王とカシが踏みつけた。

 踏みつけた事に気付いているであろう、セルスティア国王が非常に爽やかな笑顔を向けるとコーラルから飛び降り着地すると何度かその場で飛んだカシが、何食わぬ顔で私の側へと立った。


 酷い顔が更に原型を無くし醜くなると、セルスティア国王に丁寧に頭を下げた宰相は尋問の続きをはじめた――。

いつもありがとうございます。

最後までお付き合いよろしくお願いします。

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