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竜達の愛娘  作者: ao
第五章 ―終章―
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かつての友

/シュベル


 抱かかえたまま、彼女の背を擦りゆっくりと過ごす。


「ウィリア。すまなかった……どうしてもアレを片付けなければいけなかったのだ」


 視線を私へ向ける彼女へ、顎でテーブルの上にある羊皮紙を示す。

 それを見て反省したような素振りを見せると、膝から降りようとする。


「ダメだ」


 離したくないと言葉と腕でウィリアを引き止める。

 小さく「もぅ」と呟いた彼女は、私の我侭を受け入れてくれるように、背に手を回してくれた。


「今日の学園で何をした? 見れなかったから教えて欲しい」


「そうです。シュベル様! 今度、課外授業があるんですよ!」


 背に回した両手を、胸の前で組むように合わせニコニコと笑う。

 課外授業か……できれば、参加をやめて欲しいところだが、この調子では難しいだろうな。


「そうか。ウィリアは参加したい?」


「はい。実はジェシカとリリアナと一緒の班になったんです」


 ジェシカとリリアナか。あの時声をかけていた女子生徒たちだな。


「2人とは仲が良いのか?」


「うーん。リリアナは、何回か話したぐらいですけど、凄く優しい子なんですよ」


 もし、グリンヒルデの王子のお友達だったとすれば、注意すべきはリリアナの方だろうか?


「そうか。優しい子ならば大丈夫だろう。ところで課外授業は何処まで向かうのだ?」


「えっと、確かニルクヘブンって言う町です。この国の端っこにあるそうです」


 ニルクヘブンか……後で、宰相に聞いておこう。

 先に数名竜を飛ばしておく方が良いだろう。


「ふむ。そこで何をするんだ?」


「確か、その街に着くまで、馬車に乗って生徒だけで行動するんです。

 獣魔も出る可能性があるみたいですけど、冒険者になりたい子たちには

 その訓練代わりになるみたいです」


「そうか。女の子ばかりでは不安だな……」


 つい本音を漏らしてしまう私に、ウィリアはクスクスと笑う。


「平気ですよ。ジェシカの剣は凄いんです。それに私にはシュベル様に教えて貰った魔法があります」


「そうだが……共に行けぬのだぞ?」


「シュベル様は心配性過ぎます。これでももう15歳なんですよ?」


 だからこそ心配なのだ! と言いそうになり、言葉を飲み込む。

 15歳と言えば、もういっぱしの女性なのだ。その魅惑的過ぎる身体も、髪も男ならば飛びつきたくなるに違いないのに……本人が全く気にしていないところに私は大いに不安を感じてしまう。


「女性らしくなったからこそ、気をつけねばならないのだぞ?」


「もぅ。ウィリアそんなに美人じゃないです!」


 はぁ~。溜息を吐きたくなるほど判っていない! これは一度、どう思われているのかを教える必要がある。


「いいか? ウィリアは自分で考えるより遥かに可憐で、儚げで美しく、身体も女性らしいく非常に男を魅了するのだ。

 お前を手に入れるために、必死になっている者さえいるのだぞ?

 そんな、のほほんとしていては、私が不安で一時も離れられなくなってしまうだろう」


 必死に私が考えうる言葉でウィリアを表現すれば、彼女はポっと頬を赤らめ照れたように、視線を下げるとその頬を両手で押さえた。

 喜んでくれたようでなによりではあるが、今はそう言うことを伝えたいわけではないのだが……。


 とそこへ、扉をノックする音が聞こえ、返事を返す前にアルミスが扉から入ってきた。

 ウィリアを抱かかえたまま固まる私と、抱かかえられたまま顔を染めるウィリアを、見ていないかのような表情で、彼女は用件だけを伝える。


「夕食ですよ」


「はい。アルミス御姉様」


「あらあら、シュベル様のお返事が聞こえませんわね?」


 ふふっと笑いつつ、視線を合わせてくるアルミスに何とか頷き了承を伝える。

 それを確認すると頷いて部屋を後にするのだが、その間際余計な一言を残していった。


「シュベル様、それ以上のことはまだダメですからね? ふふふっ」


「……わっ、わかっている!」


 扉が閉まりキュッと首元のシャツを握ったウィリアが、頬にキスをしたかと思えば膝から降りると振り返る。


「アルミス御姉様には内緒です」


 悪戯っ子のような微笑を見せ手を差し出してくる。

 ふっと笑い、あぁ。内緒だと伝えその手を握りダイニングへ向かうため部屋を後にした。

 

 ダイニングに着けば、既に皆が揃って待っていた。繋いだ手を握ったまま用意された椅子へ座る。

 皆で食事ができる感謝をこめて「いただきます」と言えば、皆も一同に頂きますと声を出し合掌する。

 モリモリと減るおかずの山を見つめつつ、ウィリアが取り皿に乗せてくれたおかずをフォークで刺し口へと運ぶ。ウィリアには劣るが……生肉に比べれば非常に美味いと言えるだろう。


 そんな感想を思い浮かべ食事を進める私にベルンから、食後見せたいものがあると思念が届き了承する。




 食後ソファーへと座り、紅茶が来るのを待っている間。ベルンから羊皮紙の検分は終わったかと聞かれる。まだだ、と返事をすれば……

 出された紅茶を楽しむ暇もなく、ベルンとカシに引き摺られるような体勢で自室へと運ばれた私に、微笑みを浮かべたデイハにテーブルへ放置中の羊皮紙を示される。


「シュベル様。これをなんとかして頂きたいのですが?」


「……すまん」


「はぁ~。我々も手伝いますから早く済ませましょう!」


 仕方ないと結局4人がかりで、羊皮紙の山を片付ける。 

 深夜になりなんとか羊皮紙を片付け終えた所で、ベルンが魔道具を取り出し指先で触れれば、沢山の木箱が部屋の壁に映し出された。

 

「ゴードヴィズ商店内の倉庫です。この印のついた木箱の中身をご覧下さい」


 完結に説明するベルンの言葉を耳で捕らえつつ、視線は壁を見つめる。

 そこに映し出されたものは、我らの仲間の頭だ。頭部だけを切断され、牙を剝いた口を大きく開き、今にも食い殺さんと恨みのこもった目をしたまま氷漬けにされている。


「なっ……」


「ブリゲルタ……」


「っ……」


 誰もが絶句した……ブリゲルタは、私と同じ年に生まれた北の竜だ。かつて競い合い、力を高めあった仲間だ。だが、彼は人と共に歩むことを嫌い人の居ない地へと、100年ほど前旅立ったはずだった……なのに、何故――。


「これは――「誰が殺したのだ!」


 怒りに震える声で、何かを言いかけたベルンへと問えば、目を閉じ頭を振った。


「彼の首はいまもゴードヴィズ商店にあるのですか?」


「2日前に、ビュリンデと名を偽った、グリンヒルデのコーラルが購入していきました」


 デイハの問いに答えるベルンの言葉に、私は怒りに任せ両拳をテーブルに打ちつけ立ち上がり、窓へと向かう。


 そんな私を止めるようにカシとベルン、デイハが必死に身体を掴む。

 それを振りきり、窓を開け上空へ飛翔すると同時に、コーラルが泊まっている宿屋を目指し翼を羽ばたかせた。


 思念で何度も呼びかけてくるデイハ、カシ、ベルンを無視して宿屋の上空へと到着するとそのまま宿屋に向け竜体のまま降下し突っ込む。


 木々やガラスの割れる音と共に着地した重さを感じた地面が揺れる。

 悲鳴を上げ逃げ惑う宿の者たちには目もくれず、ただ血走り怒りを抱えた瞳で友の敵を探した。

 

 そして見つけたのだ、金の髪を揺らし醜い顔で必死に逃げようとするコーラルの姿を……。

 それを追いかけ捕らえるよう首を擡げ、口を開く。

 従者と思しき者たちが剣をこちらに向けそれを阻止しようと立ちはだかる。


 首を大きく唸らせ叩きつけるよう振れば、短い悲鳴と共にあっけなくその身体が吹き飛び起きあがってくる様子も無い。

 座り込み後すざりするコーラルを、かみ殺さないよう口に咥え建物から引き摺り出す。


「ひっ!」


 悲鳴を上げる醜い声を聞き、その身体を前足の爪で摘まみ持つとその場を飛び立った。

いつもありがとうございます。

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