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竜達の愛娘  作者: ao
第四章 ―グリンヒルデ王国編―
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守る者たち

/シュベル


 その日の夜開かれた会議には、20人全員が参加していた。

 目撃された情報や、セシルにより持ちこまれた情報などを皆で話し合う。

 

「なんと、自分勝手な……」


「許せないっすよ!」


 怒りを露にしたのは、ジオールと同じ年代に生まれた老竜の1人である、ガビとユルセイだ。

 声にこそ出さないが、皆腹立たしい気持ちを抱えていることは見ればわかる。

 ジオールやデイハに至っては、その顔に見事な青筋を立てている……。


「お前たちの怒りの気持ちは、良くわかる。だがな、今後について話し合いをしたいのだ。

 頼むから、もう少し押さえてくれ。

 その怒りはコーラルやグリンヒルデの王に会った際にぶつけて構わない」


 宥めるため、グリンヒルデの者たちに怒りをぶつけろと言ったが、果たしてあの国は残るのだろうか?

 まぁ、そんなことはどうでもいい。


「それでは、先ほどの報告をまとめます」


 そう切り出したベルンの声に、参加者全員が頷いた。


「1点目です。ウィリア様を誘拐するように頼まれた者については、スラムの者ではなく。

 グリンヒルデより密入国した、住人であることがユルセイたちの監視で判明しました。


 2点目です。リーシャの婚約者について、現在まだ養子縁組が済んでおらず、皇王の計らいにより、お披露目をまだ済ませていないことから、グリンヒルデにどこの誰かは伝わっていないようです。


 3点目です。公爵からの報告です。彼なりに息子ではなく周囲の者に聞いたところ、やはりグリンヒルデの王子と子息の間に繋がりがあるとのことです。

 訪問理由については、聞いていた侍女が口を割ったそうで、リーシャと引き合わせるための打ち合わせをしていたようです。


 その際、王子の口から竜大公と会うにはどうしたらいいか? などの言葉が漏れていたようです。


 4点目です。3日後、公爵家にゴードヴィズ商店の店主を呼び出したそうです。

 そこで、例の物を見せて鑑定させるそうです。


 5点目です。セルスティアの国王からですが、グリンヒルデからひと月後、第3王子に関することで使節団が送られてくると思念が届いた。


 以上が、今回わかったことについてのまとめとなります」


「では、ここからは各々意見を出し合ってもらう。

 我らにとって重要なことは、仲間とウィリアを守ることである。

 最優先事項であると心得意見を出し合って欲しい」


 私の言葉を皮切りに、各々が相談し合いつつ意見を出し合う。

 そんな中で、グリンヒルデに対して報復すべしとの意見もあがる。

 私もそれに対しては賛成せざるを得ない。自分の番に手を出されそうになっているのだ! 今回ばかりは、人族の法など関係ないと考えている。


 南の竜のことも、塒襲撃のことも、アルスティのことも許してきた。だが、それも終わりにすべきなのだ。あの国がある限り、決して我らに安寧は訪れないとさえ思える。

 

「一言付け加えるのを忘れていた。

 今回の件関して、我らは人の法を守るべきかどうかについても意見が欲しい」


 そう伝えれば、皆の顔が更に引き締まった。

 単純な意味だ。国を滅ぼすという意味のだ……。


 静観の姿勢を取りつつ、意見に耳を傾ける。そんな私に思念が届く。


《シュベル様》


《学長か。どうした?》


《実は、今帰宅したんですがね。コーラル殿下から私宛に手紙が届いてまして……》


《内容は?》


《それが、竜大公様に会うために、ウィスユリア嬢に引き合わせて欲しいと言うものなんですよ》


《ふむ……》


《断りの手紙は、明日朝一番で届けさせますが……。

 学園の生徒に接触して、彼女をおびき出すことも考えられます。注意しておいてください》


《わかった。感謝する》


 学長との思念を終え、ウィリアの学園での友人たちの顔を思い浮かべる努力をする――。

 あの娘の名は……何と言ったか?

 あの男の名は? 

 思いつかない。ウィリア以外に興味がないことが、ここに来て仇となる結果だった。


 アルミスであれば、知っている可能性が高い。しかし、この時間彼女は自身の子供達の面倒を見ている時間だろう……。邪魔するのも忍びない、明日聞いておこう。

 そう思考を打ち切り、話し合い中の皆へ学長からの報告を伝えた。


「確か……。ジェシカ? だったはずです」


 突然、カシが訳のわからないことを言い出した。

 ジェシカ? 人族の名前か?

 訝しむ表情をして見回せば、カシ以外誰も意味がわかっていないようだった。


「その、ジェシカだったか? それはなんだ?」


「ウィリア様の学園でのご友人の1人だったかと……」


「なるほど!」


 1人だけだが、ウィリアの友人の名前が分った。他にも判れば良いのだが……それ以上はカシも覚えていないと首を振っていた。

 やはりアルミスかカシリアに聞くしかないだろう。


「ウィリアにどうやって誘いをかけると思う?」


「今までのことを鑑みれば、手紙が一番妥当なのでは無いでしょうか?」


 私の問いかけに対し、直に答えたのはベルンだった。

 言われて見れば、今までも思い当たる節がいくつもある。

 人族の習性というべきかもしれないな、何かあれば、直に手紙と言う物を送る。


「では、ウィリア様にかんしては大丈夫でしょう。

 今までもシュベル様が管理していらっしゃいましたし」


「そうだな」


 これまで、ウィリアの名義で届いた手紙は、一度私たちが開封していた。

 害虫が何度も手紙を送っていたからなのだが、ここへ来てまさか、あれが役に立つとは思わなかった。


「もう少しで、学園も再開しますからのぅ。今まで以上に監視体制をきつくせねば」


「そうだな。あと7日だな。できることならそれまでに、片付けたいところだが……」


「事を急いては仕損じますぞ」


 ジオールの言葉に、焦りを感じ言葉にすれば、デイハに諌められる。

 デイハには、感謝しかないな……。

 

「それでは、知りえた情報で今後どのように動くか決定いたしましょう」


 場を仕切るベルンの言葉に、ひとり、1人が意見を陳べる。

 最後に賛成意見が多いものを、今後取り入れることを決め会議は終了となった。



 会議の終了後、ベルン、デイハ、ジオール、カシ、リュークと私の6人でゴードヴィズ商店にどのようにして潜り込むかについて話しをしようと思ったのが既に、皇王の伝を使い潜り込む算段がついていると言われた。

 できることならば、行かせたくは無いのだが……。


「それで、どのようにして潜り込む算段だ?」


「皇王の伝で、ある皇王の信頼する侯爵を紹介していただきました。

 その方は他国から、奥方を迎えられているそうです。

 奥方の遠縁の者が、仕事を探していると言う話をして貰い、潜り込ませてもらえるようです」


「なるほど。ではその侯爵にも何かしら礼をするべきだな。何が良いか……」


 私の質問に答えていたベルンが、礼をするべきだろうという言葉を聞くや否や「必要ありません」と断言する。

「何故だ?」と問いかければ、彼は非常に良い笑顔を見せ、「レッサーですから」と答えた。

 意味がわからず、困惑する私の正面に座る、カシが突然「ぶはっ」と噴出し笑う。


 カシはひとしきり笑うと、息を整えるため深呼吸をした。


「レッサーヌヌキですよ。シュベル様」


「……っ!」


 思い当たる節のある、私とジオールが顔を緩める。

 未だ困惑しているデイハたち南の竜に、ベルンが説明した。

 皇妃の父である、ガルゼル・アンドレ・ヌクリスが協力してくれたこと、その彼の行動や姿が非常に、レッサーヌヌキに似ており、私たちの中ではそう呼ばれていることまで丁寧に話してきかせていた。


 その話しを聞くも、思い当たらないのか、表情が優れない様子を見てベルンの言葉に追加する形で教えてやる。


「叙爵される時に、部屋に尋ねてきた老人がいただろう? あれだ」


 その言葉に漸く、頷き納得した様子をみせた。

 それから、2日後の早朝。

 ベルンは共に行くというカシリアを何とか宥め諭し、迎えに来たレッサーヌヌキと共に、ゴードヴィズ商店へと向った。

いつもありがとうございます。

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