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竜達の愛娘  作者: ao
第四章 ―グリンヒルデ王国編―
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秘策と呼べるもの

/シュベル


 公爵が退室するのを見届けると、皇王が宰相に何故、あのような提案をしたのかを問いかけた。

 

「それは、簡単なことです。彼は実直故に、皇王様へ忠誠を誓っています。

 それに、たった1人の息子まで失いたくないと考える筈です。ですが、公爵家の親子関係はよくはありません。そのため怪しまれず、動向を探るのに一番適した人物は、公爵以外にはおりませんから」


「なるほどな……では、ゴードヴィズ商店と取引させる理由はなんだ?」


「それにつきましては、竜大公様と懇意にしていると思わせるためです」


 淀みなく答える彼には、確信があるのだ。

 彼の発言を聞いて、直にカシに鱗を取りに行かせたのは彼のその策に、私も乗ることにしたからなのだが……。皇王・国王・学長は未だに理解できていないようだな……。


「すまん。理解が追いつかないんだが? はっきりと言ってくれ」


 頭をガシガシ掻く学長が、ついにお手上げ状態になり伝えれば、国王が笑い、皇王も苦笑いを浮かべる。


「はっきり申し上げれば、、ゴードヴィズ商店とコーラル殿下の繋がりは間違いないでしょう。

 今現在、シュベル様と()()()()()()()と言えば誰が思い浮かびますか?」


 宰相の問いかけに、学長たちはポツポツと名前を出した。

 皇王……、宰相……、セルスティア王国の国王陛下、皇女殿下……と


「全員がここにいるな……」


 気付いたように、国王が告げれば皇王と学長はハッとした顔を見せた。

 頷いた宰相が、その通りだと付け加え説明を再開する。


「現在の状況ですと、コーラル殿下は尻尾を出す事すらできないのですよ。

 ですから、()()()()()()()公爵を接触させるのです。彼を接触させることで必ず、殿下は動くでしょう。公爵本人も、息子の命が懸かっているいるのです、何かあれば直に報告してきます」


 宰相の言葉を聞いていた学長が、なるほどと漸く理解できたように大きく頷いた。

 毎回してやられるばかりなのだ、今回はこちらから仕掛けてる。

 そのための公爵なのだと、彼は言いたいのだろう。


「そうだ、宰相公爵にこれを渡して、常に身に付けさせておくといいだろう」


 そうやって取り出したのは、2つの指輪に加工した魔道具だ。

 ウィリアの髪留めに使っているもの、タイに着けるブローチとそれぞれ同じ魔法を込め、更に記憶するように設計されている。


 竜の鱗だと、我らが常に側に居る必要がでるので、説明している最中に個人箱から取り出した魔石に魔法を込め、設計というよりは追加で魔法を籠めた物だ。

 加工が施された理由については、ウィリアがそのまま魔石を、渡すより見栄えがいいから、と教えてくれたからだ。


 礼を陳べた宰相が、直に公爵の後を追い退室していく。

 それを見送り、私たちも帰宅するためウィリアへ声をかけた。


「ウィリア」


 リーシャと話し込んでいたらしい彼女は、呼ばれたことに反応し振り返りると状況を見て判断したらしく、リーシャに別れを告げると私の側へと歩み寄よる。


「シュベル様。お待たせしました」


「では、帰ろう」


 そう声をかけ、カシに国王の送迎を頼み、皇王たちへ別れを告げ空魔法で転移した。

 屋敷の玄関へと着いた私たちは、靴を脱ぎ――ウィリアが脱がないと叱るので脱いでいる――リビングへと移動する。


 すでに、夕飯の支度が始まっているらしいキッチンからの声に、慌てたように駆けて行くウィリアを見送り、ソファーへと沈み込んだ。

 呆然と天井を見上げ、長く塒を離れていた気分を味わい、ふわふわと身体が浮く感覚に、瞼を閉じれば、直にまどろみの中へと沈んで行った。


                 ・

                 ・

                 ・


「……べ……さ……。シュベル様……。起きてください!」

 

 耳の側近くで、ベルンの声を聞き瞼を開けば、眼前に彼の顔があった。

 驚きに、つい突き飛ばす。勢いが良すぎたため、ドカっと音を立て壁に激突し止った。ダイニングに集まった皆が、注目するなか首を振り立ち上がったベルンは、いつもの無表情を浮かべている。

 驚いたとは言えやりすぎたと心の底から謝罪の言葉を口にする。


「すまん。驚いてやってしまった」


「あぁ。別に問題ありません。この程度、壁はシュベル様が修復して下さいね」


「あぁ」


 特に怒った素振りも無く冷静に返す彼に対して、私の方がどことなく引き攣ったであろう笑みを浮かべてしまった。


「そうでした。食事の準備が整ったとウィリア様がお呼びですよ」


「そうか。終わったら行く」


 修繕するため背を向ければ、思い出したかのような言葉を付け加えベルンが、起した理由を話す。もう少しで抜けそうな壁を魔法で修繕しつつ、分ったと答えれば離れていく足音が聞こえた。


 ダイニングへ移動しつつ皆を見渡せば、雑談を交し合いつつ私が席に付くのを待っていてくれたようだ。少しだけ早足で歩き椅子へと座った。

 両手を合わせ感謝を籠める「いただきます」と言葉にすれば、皆もいただきます。と口々に言い食事をはじめる。


 今日は、皆大好きカレーの日だ。

 トッピングと言われる、揚げた野菜や肉を好きなだけカレーに載せ食べる。


 ウィリアにお勧めを聞けば「ソラヌム(なすび)の天ぷら」だと言うのでそれをカレーにつけ食べてみれば、ジュワとした甘みあるつゆとカレーを含んだ衣が非常に合う。

 他にはないかと聞き、魚のフライやエビのフライ、オーク肉のカツなどを進めてくれた。

 皿を空にするごとに、ひとつづつ試し食せば、あっと言う間に満腹となった。


 食後の紅茶を飲み干し、立ち上がる。

 ぽっこり張り出した腹を見せ、床に転がり眠る仲間たちを微笑ましく思いつつ塒へと向った。


 塒の会議場には、20名の仲間たちが待っていた。

 いつもの、会議メンバー以外にも、今回はリーダー的存在が必要となることを考え呼んだのだが、多すぎたか……?


「皆。忙しいだおろうに集まってくれ感謝する。早速だが、皆にも説明しておくことがある」


 そうして、現時点で判明していること全てを伝えた。

 反応としては、やはり南の竜たちの方が酷く。動揺したり、怒りを露にしたりとそれを抑えるデイハの苦労が伺えた。

 

 既に、監視の任務に入っている者たちへは後で伝えることとして、監視の任務に協力して欲しいと頼めば、全員がやる気を見せてくれる。

 自発的に、詳しく纏めようと言う意見が出れば、監視をどういった順で回すか、報告に思念を使えないものがいる場合、魔道具を渡すのかどうかなど、色々と詰めていった。


 纏まった内容を、ベルンが読み上げ確認していく。


「では、交代は日が昇ると同時で行うこと。班はそれぞれ、ウィリア様、リーシャ殿、婚約者殿、公爵殿の塒ということでよろしいでしょうか?」


「あぁ。それで構わない」


「それと、思念を使えない者については、首にかけるタイプの魔道具を用意して持たせること。全ての情報がシュベル様に集まると混乱を極めることになるため、各リーダーを一度通して報告すること、でよろしいですか?」


「そうしてくれ」


「更に、屋敷への侵入の恐れも考えられることから、塒を囲った魔道具と似た魔道具をシュベル様には作って頂くことになりますがよろしいですね?」


「あぁ」


「以上ですが、他に気になる点などある方はいませんか?」


「ゴードヴィズ商店の方はどうされますか?」


 他に意見がないか聞くベルンの問いに、手をあげたリュークが質問する。

 しばし思案するような顔を見せたベルンは、私へと視線を送り考えを伝える。


「皆の反対がなければ、擬人化した者を内部に送り込むのはいかがでしょうか?」


 いっせいに場が騒然となる。

 理由を問うつもりで口を開こうとすれば、察したベルンが先に説明をはじめた。


「内部であれば、ゴードヴィズ商店とコーラルが動いた際、直に知らせることができます。

 そうなれば、護衛する者には、良い情報になりますし。後手に回ることもありません。

 守るべき方々もより安全になるでしょう」


 それは、確かに試すべきだと思った。そこで、誰がいくのに適任かを思考する。

 もし、向わせるとすれば判断能力が高く、冷静に物事を考えられるものでなくてはならない。

 と、思ったところでベルンが声をあげる。


「もし、お許しいただけるのであれば……。私が潜入したいと考えています」


「ばかなっ!」


 そう否定する、叫び声をあげたのはカシだった。

 カシとベルンは、同じ時期に生まれた竜だ。それに、カシの娘であるカシリアと恋仲にあることから、カシの心配する気持ちも理解できた。

 感情的になるカシに、ベルンはゆっくりとした口調で説得している。


「潜入する者は、冷静な判断力が必要になることはわかるでしょう?」


「それはっ……」


 言葉につまる、カシに対してベルンは言葉を続ける。


「私以外に、いないと考えます。カシどうか理解して下さい」


「死ぬ危険が、伴うのだぞ? カシリアを心配させる気か?」


 カシに理解を求めたベルンに対し、娘を持つデイハがカシの言いたいことを代弁し擁護する。


「死ぬ気はありませんよ。リアを心配させるのは忍びないですが、私がゴードヴィズ商店に潜入することで、他の仲間が少しでも安全になるのであれば、彼女はきっと背中を叩いてでも送り出すはずです」


 カシリアの気持ちを考えろと訴えるカシとデイハ。

 彼女ならば、自分を送り出してくれると語り、お互いに譲ろうとしない。

 繰り返される主張に、言い負かされ折れたのはカシとデイハの方だった。


「わかりました。ですが、ベルンには条件を飲んでもらいます」

 

 カシの言葉に、ベルンの顔が一瞬引き攣ったように見えた。 

眠った状態のあとに『・・・』を分りやすいかなと入れてみました。

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