対策会議①
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/シュベル
グリンヒルデ第2王子コーラルに、屋敷の所在がばれたのだとわかり、直ぐにでも何らかの対策を立てるべく緊急会議が開かれることになった。
屋敷で、会議をすれば他の竜たちに不安を与える可能性があること。
宰相から皇国の一大事でもあると訴えがあったことなどを考慮し、会議を行うのは皇城でと言うことになった。
宰相の計らいで、用意された会議室のような円卓を囲み話す。
「では、グリンヒルデにシュベル様の屋敷の場所がばれたのですか?」
眉間に深く皺を刻んだ皇王の言葉に、肯定するよう頷いた。
「なるほど……。実は、数ヵ月前からこちらにもグリンヒルデ第2王子より、竜大公様への謁見の申し込みがきているのです。
今のところ、お会いになることはないと突っ返してはいるのですが……、屋敷がばれたとなればいずれは直接訪ねる可能性が高いと言わざるを得ません」
まさか、皇王の元にも同じような手紙が届いていたのか。
しつこく絡み付く、蛇の様な奴なのかもしれんな。
最悪、塒に篭ってしまえばいいのかもしれんが、塒の方へ第3王子が討伐隊をしかけるようなことをしてしまっていることを考えれば、そこも安全とはいえないだろう。
「どこかに、移住する――案が、一番安全ではないでしょうか?」
「しかし、そうなれば折角馴染んだ皆が、困惑するのは間違いないだろう」
冷静に判断を下し、移住案を出すリュークに、渋る意見を出したのは、苦い顔をしたデイハだった。
「できれば、移住は避けたいですね」
「うむ。そうじゃのぅ」
デイハの意見に、ベルンとジオールが同意する。
彼らの同意は尤もだ、折角築き上げたこの地で知り合った友人や顔見知りを、己から捨てるのは忍びない。
「移動しないのであれば、不可視の魔道具を作り出すなどはいかがですか? 以前仰られていた、塒を囲んだ壁のように囲んで見えなくしてしまえばいいのでは?」
「忽然と屋敷が消えれば、それこそ街の住人が混乱するでしょう」
手を挙げ発言する学長の意見に、首を振り宰相が住人のため不可能だと告げる。
私も、宰相の意見には同意だ。混乱を招きたい訳ではないのだ。
皆がうーんと唸り、腕を組み何か良い案はないのかと思考する。
「やはり、目的が判らないことには対策のたてようがありませんね……」
「目的と言えるほど、鮮明なわけではないが、ある程度ならばわかるぞ?」
悔しいと書いた顔をする宰相。
自信があるわけではないが、手紙や行動からある程度の目的はみえると言えば、みなの注目が集まった。
「お聞かせ下さい」
自身の手を広げてみせる。
「まず、グリンヒルデの第3王子が、冒険者ギルドを使い我らの塒を襲撃しようとしていたこと。奴等の目的は、我らの持つこの身体だった。
それとほぼ同じ時期に、宰相は覚えているだろうが、セルスティアで国王が言っていただろう?
『グリンヒルデ王国では獣魔の被害が頻発しているようで、竜に戻って貰えないか交渉するため、竜を探している』とな
策は失敗したものの、セルスティアとアルシッドクは、正式に私を国主として認めると通達をだしたこと。これにより、グリンヒルデは痛手を受けることになったはずだ」
広げた指先を1本折ってみせる。
「次に、その年に学園で行われた、ダンスパーティーで第2王子は『第3王子の件でも話したいことがあった』のだと言っていた。
その帰り、第2王子と聞き覚えの無い男の会話を聞いたのだ。『報告をどうするか』『必ず来ていただきましょう』と言う内容のな」
更に1本指を折る。
「そして、卒園したにも関わらず、一度国に戻り。密入国と言う状態で舞い戻ったこと。その後リーシャに縁談を持ち込んだこと。
学園で作った伝を利用し、私やリーシャの婚約者のことなどを調べている。
今回、手紙が届いたのは、ゴードヴィズと第2王子が会ったと報告が来た次の日だ」
3本目を折、皆を見回した。
「そのことを、踏まえ考えれば。第2王子はグリンヒルデの王の命を受け、ゴードウィズやこの国にいるお友達や他の者たちを使い、私へ接触しようとしている。
もしくは、第3王子の態度からウィリアを欲しているための交渉の可能性もある。
そして、気に入らない声明を出した、セルスティアとアルシッドクの繋がりに亀裂を入れるため、リーシャを利用しようとしている。
と言うことがわかる」
判ったからと言って、対策と呼べるほどの策がでるかと言えば否なのだが……。
と、そこで宰相より提案が入る。
「もし、可能であるならば……。セルスティアの国王様にご連絡を取っていただけないでしょうか?」
理由など聞く必要はないだろう。事はアルシッドクとセルスティアの2国に関することなのだ。
だからこそ、彼はそれを皇王に伝えるため敢えて言葉にしたのだろう。
「構わん。連絡を入れてみよう」
返事を返し、思念を送るも……反応が無いようだ。
仕方なく、カシを呼びセルスティア王国へと飛んでもらうことにした。
「わかりました。では」
その場で空魔法を使い消えるようすをマジマジ見てた、学長が食い気味に魔法について聞いてくる。空魔法だと教えれば、いつか自分も使えるだろうか? と聞いてくる。
学長に、ウィリア程の魔力があれば可能だろうが、既に魔力の成長は止まっている年齢だ。
残念だが、無理だ。と伝えれば、判りやすいほど項垂れていた。
そうして、時間を潰しながらカシの帰還を待てば、思念が入った。
『シュベル様ですか? うわぁ~。初めて使いました』
あぁ。収集家らしい言葉だな。と少し懐かしさを感じる。
『あぁ、そうだ』
『今から、直ぐにいきます。もし、新しい魔道具があれば後で見せていただきたいのです。図々しいお願いではありますが、宜しければお嬢様の菓子をわけていただきたいのです……。
その、前回の講習おり頂いた、菓子を、王妃が大変気に入っておりまして、お願いできないでしょうか?』
『帰るまでに持ってくるよう。伝えて置こう』
『ありがとうございます!』
感情が豊かなのだろう。本当に嬉しそうな思念でお礼を言う国王は、その後直ぐにカシと共に現れた。何故、わざわざ思念で伝えたのだろうか? どうせ、魔道具を使いたかっただけなのだろうと考え、思考を打ち切った。
頼まれた菓子のことを、ウィリアに伝えれば快く返事をしてくれた。思念を切る間際に、彼女は『話し合い大変でしょうけど、頑張って下さいね』と伝えてくれる。
その言葉を何度か反芻し、大変だろうと、ウィリアを守るためならば、この程度なんと言う事は無い! とやる気に満ちた。
顔をあげてみれば、皇王と国王が握手を交わし仲良く席に座るところだった。
気配を消していた従者により、国王の前に紅茶が置かれ室内に、要人だけとなったところで宰相が、何も知らないであろう国王へ説明をはじめた。
内容を聞くうち、国王の顔色が苦々しい顔になっていく。その様子を見つめていた皇王も、うんうんと頷いている。
どことなく、似てる雰囲気をかもし出す2人を前に、ほっこりした気分になった。
説明を終えた、宰相がセルスティアの方で何か情報はないか? と質問すれば、神妙な顔をした国王が、思い当たることを話してくれる。
「実は、我が国とグリンヒルデ国とは、航路が開かれているのを皆さんはご存知かと思いますが、最近グリンヒルデからの入国者や移住者が急激に増えているのです」
「それは、どういう?」
「私個人が親しくしている、住民たちに探らせたのだが、どうやら国内情勢がかなり危ないらしい。私が知る、あの国はその……、竜を狩ることで生きながらえていたのでしょう」
ギリっと歯を噛み締める音にデイハを見れば、デイハは気遣わしげな顔でアルティの肩を撫でていた。アルティには、まだきつい話だったな。
己の配慮の足りなさに、申し訳なく思いつつも話の腰をおることはせず、国王へと視線を向け頷いた。




