繋がる糸
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/シュベル
室内は、まだ薄暗いものの、もうすぐ日が昇るのだ。と窓の外から、差し込む明かりを見て思う。
ベット縁に立ち、両手と背を伸ばした。
久しぶりにゆっくりと眠れたな。ウィリアと寝室を別けてからと言うもの不眠になってしまっている。
モゾモゾとベットの掛け布団が動き、紫苑色の頭が現れる。
「おはよう。ウィリア」
愛しいウィリアの寝起きの姿に癒されつつ挨拶の言葉を伝える。
まだ寝ぼけているのだろう。私へ挨拶を返すと目を擦り必死にくっつく瞼をあげているようだ。
「んっ。おはようございます」
「あまり擦ると、赤くなってしまうぞ?」
余にも擦る頻度の多さに、赤くなってしまうと伝え、手をやり止めた。
「うぅ~ん」
寝ぼけた姿をみるのは、実に10年ぶりぐらいだろうか……。とても愛らしいと思う。
ベットの上に、両足を膝から折り座っている。頭は、こくりこくりと船を漕ぎ、まどろみを感じているようだった。
その姿を見るだけで、幸せな気持ちになれた。
ポテっと音がなりそうなぐらい可愛く、ベットに誘惑されてしまったウィリアを抱かかえもう一度布団をかけ直し寝かせてる。
物音で起さないよう、ダイニングへと移動しようと1歩を踏み出した私の袖を何かが引っ張る。
振り返りみれば、ウィリアの手がしっかりと握っていた。
「こういうところは、子供のままだ……」
ベットの端に腰かけ覗く寝顔は、幼いウィリアと大人のウィリアがいるようでどこかむず痒く、愛しさが増す。
《シュベル様》
《セシルか、どうした?》
《はい。学長に例の物を渡しておきました》
《そうか、苦労をかけた。戻ってゆっくり休んでくれ。アルティにもそう伝えてくれ》
《はい》
これで、漸く第二王子に関することがわかるかもしれんな。
緊張の糸が、緩むように大きく口を開け欠伸をした。眠るウィリアの頭に自身の頭を添わせるように着ければ、次第と眠りへと落ちて行った。
まどろみの中、自身の頬に何かが触れくすぐる気配を感じ、瞼を開ければそこには、瞳を閉じ近付くウィリア顔があった。
やはり、彼女は美しいなどと見惚れていれば、柔らかな感触に驚き、目を見開いたのも束の間、衣擦れの音が聞こえ、咄嗟に瞼を硬く閉じた。
急激に身体が熱くなり、何が起こったのか理解できず、気付かれないよう必死に寝ぼけた頭で思考する。
ベット中央へ身体が傾き、彼女が離れる気配に
嫌だ! このまま離れるのは嫌だと乾いた欲望が、私を突き動かした。
きつく閉じた瞼を開き見れば、ウィリアと視線が交差する。彼女が瞳、表情に望んでしてくれたのだと瞬時に悟った。
初めてにもかかわらず、迷い無く赤く火照った頬に手を添えれば、熱を持ち柔らかな感触が伝わってくる。
頬に触れた親指を、優しくウィリアのそれに触れなぞれば、受け入れるように瞼を閉じた。
高鳴る鼓動が煩く鳴り響くのを聞きながら、喉を鳴らし、ゆっくりと形良い桃色をしたそれの感触確かめるよう、自身のくちびるを押し付ける。
ウィリアの腕が背に回り、彼女の腰と肩に手を回し、互いに離れたくないと何度も、啄むように口づけを繰り返した。
自然と離れ見つめ合い、彼女の肩を抱きその身体を寄せる。
恍惚とした表情のウィリアを視界に納め、その頬に指先を沿わせ夢じゃないことを確認する。
「シュベル様」
「んっ?」
「これからもずっと一緒ですよね?」
「約束する」
扉を叩く音が聞こえ、慌てて距離をとり返事を返せば、カシリアが室内へと入ってきた。
ウィリアが室内にいたことに驚いた様子をみせるも、用件を思い出したの真面目な顔になり学長と宰相の来訪を告げた。
「わかった。支度が済み次第下に降りるとしよう」
頷き部屋を後にするカシリアを見送った。
「折角……2人きりだったのにな……」
残念だと心底思い言葉にすれば、ウィリアも寂しげな表情を見せ頷いた。
「まっ、また。その……」
「2人の時間を作ろう」
彼女は、恥ずかしげに言葉を濁した。
それを拾い上げ伝えれば、花が綻ぶような笑顔を見せ頷いてくれた。
「じゃぁ、着替えてきますね」
そう言い残し、部屋を後にするウィリアを見送り、私も急ぎ支度するとリビングへと向った。
ソファーで寛ぐ、2人を視界にいれそちらへと歩み、挨拶を交わすと腰を降ろす。
「それで、どうして2人が揃って訪ねたのだ?」
私の問いかけに2人が顔を見合わせ、頷くと数枚の羊皮紙を滑らせ渡してくる。
内心首を傾げつつも、羊皮紙に目を走らせる。書かれたのは、30人はいるだろう。名前と位などの詳細情報が書かれている。
羊皮紙から学長へ、訝しむ目を向ければ説明してくる。
「これは、彼の方が在学中にお友達と呼んでいた生徒達の名前です」
「お友達?」
「はい。彼の方は、その……、男女問わず寝所に連れ込む方だったようで……」
苦い顔をすると、言葉を濁した。
その実……節操なしと言うことなのだろう。もしや! 以前感じた全身に這い回るような寒気は、このことを示していたのだろうか?
この羊皮紙には、グリンヒルデ第2王子コーラルが、学園在学中に手を出した生徒達の名前が記された名簿と言うことになる。
「なんと、恐ろしいことだ……」
「それと、こちらが頻繁に出入りしていた商人などの一覧です」
漏れ出てしまった感想を聞き流すように、眼鏡の奥にある相貌を光らせた宰相から、追加の羊皮紙を差し出され受け取った。
受け取り見れば、5件ほど書き出されている。どれもこの国を基盤に他国とのやり取りをしている。と注意書きがされている。
その中には、もちろんゴードヴィズの名前も入っていた。
「このリストの中で、今も関係がある生徒や保護者がいる可能性は?」
「それですが……、3年前に卒園し、今現在は私の耳として働く元生徒へ、このような手紙が届いたそうです」
答える代わりとばかりに、厳しい表情で宰相はある1枚の手紙を広げて見せてくれる。
その内容は、日常的な話を綴り一度会って、お茶を飲まないかと言う誘いの手紙だった。内容に問題は見られない。
「これがどうしたのだ? ただの手紙であろう?」
「内容はそうですが……。実際に彼は、ある貴族の屋敷で、卒業生と在校生を含めた20人ほどの参加者と一緒に、コーラル殿下とお茶を飲んだそうなのです」
「それが?」
「その後日、酒を嗜むと言う目的で、何度か彼を含め数名と個別に会っているようです。
そこで、コーラル殿下は参加者たちに、この国にいると言われている竜大公について、そしてリーシャ様の婚約者について、執拗に聞かれていたようなのです」
なるほど……。そう言えば、セルスティア国王も以前、グリンヒルデから竜に関する手紙が届いたと言っていたな。
第2王子の目的が、我ら竜族だとするならば、ウィリアではなく何故リーシャの婚約者などを知りたがる?
グリンヒルデに関わる何かで、この国が関与するものがあるのならば、リーシャが必要となる可能性もあるのだが……。もしや、リーシャを人質にとり、皇王に我らを討伐させる気なのか?
なんとなく、目的は見えるが……。はっきりとしないと言うところだろう。
「その席は未だに開かれているのか?」
「それなのですが、どうやら数日うちにまた行われるようなのです」
「その時にでも、やつ目的がつかめればよいが……!」
そこで、燃やした手紙を思い出した。
「昨日、そのグリンヒルデから手紙が届いていたな……内容は、鱗のことで交渉したいから、グリンヒルデの王が会いたいと言っていると言うものだ」
「それで、その手紙はどうされたのですか?」
確認したいのであろう、宰相の言葉に暖炉を指し示した。
意味が理解できたらしい彼は、ほんの少しの呆れを見せたが言葉で訴えることはなかった。
「しかし、それってまずいんじゃないですかね?」
そう訴えたのは、顎に指を添えた学長だった。
「何がですか?」
「いやね、ここにグリンヒルデ王国の名前で手紙が届いたってことは、竜大公様の居場所をコーラル殿下に知られてると考えた方がいいのでは?」
ハッっ顔を宰相たちへと向けた。宰相も同じだったように、私を凝視している。
ここがバレたのであれば、いずれ本人が乗り込んでくる可能性もある……。
ウィリアや仲間に危険が及ぶかもしれない。確かにそれはまずい。
何を呆けているのだ私は!! 自身に怒りを覚え、硬く拳を握る。
「差出人の名前は、第2王子だったな?」
近くに控えるベルンの方を見れば、同意を示すよう頷いた。
「直ぐに対策を考えましょう」
厳しい表情に戻った宰相の言葉に、その場にいる皆が頷いていた。




