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竜達の愛娘  作者: ao
第四章 ―グリンヒルデ王国編―
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思惑② version.コーラル

 コーラルです。そう……オネエキャラの彼です!

 お読みいただきありがとうございます。

 面白いと思っていただけるのならば、ブクマ・評価・感想・レビュー をどうぞお願いします。


/コーラル・ハイド・フォン・グリンヒルデ


 船上から海を眺めていると、オーカスが紅茶が入ったと声をかけてきた。


「コーラル殿下。お茶の用意が整いました」


「そうか……。ありがとう」


 彼も中々良い身体つきをしているけれど、あのダンスパーティーで出会ったシュベル・クリム・ハーナス様には、敵わないわね! 彼は本当に美しかったわ。


 まずは、引き締まった身体のラインもさることながら、無造作ながらに光に当たると輝く黒髪を背中で1本に結んで、男らしい首筋を余すことなく見せ付けて……つい夜のお誘いをしてしまうぐらいには惹かれてしまった。


 それに整った顔立ち、凛々しいけれど分厚くない黒い眉、長い睫毛に引けをとらない金の瞳。あの瞳に見つめられて熱い夜を過ごしてみたいわ……。


 彼の娘のウィリアちゃんも凄く可愛かったし はぁ~。もう1度彼に会いたい。

 そんな、私の思考を読んだように、近くで紅茶を継ぎ足す幼馴染で従者のオーカスが手を止めた。


「コーラル様……。また良からぬことを考えていらっしゃいませんか?」


「ふふ。わかる?」


「えぇ……。どうせあなたのことですから、ダンスパーティーで会ったあの男のことを考えているのでしょう?」


 呆れた顔で思考を読むオーカスに、少しむっとしてフンと横を向いた。


「はぁ~。あなたはもう少し自嘲すべきです! 学園在学中にそうやって何人の男女を泣かせてきたのですか……」


 確かに、在学中はお友達と色々楽しんだけれど、その子たちは好きで側にいてくれたもの、とやかく言われるいわれは無いわ。

 それにちゃんとお別れを済ませてあるし、口止めもしてある。特になにも問題はないはず……。


「しっかりと口止めはすませてあるから問題は無い」


 男口調に戻って、反論すればそれ以上彼は何も言わなかった。


 今回、内々に父である国王からの命令で、アルシッドク皇国にばれないよう入国し、皇王の娘である皇女リーシャに接触すること。惚れさせ、妻に娶るか他の王子でもいいから兎に角、我国との縁談を決めろと言われた。


 そして、名を伏せられたままの竜大公と呼ばれる竜の王と繋がりを持ち、その娘を第3王子の婚約者とするべく交渉すること。

 理由を問いただした途端、やる気は急激に下がったのは言うまでもない。


 まず、皇女リーシャに関しては、アルスティとの縁談を持ちかけようとしているらしいのだが、皇国にいる密偵からの報告では、既に婚約者がいるらしく、父としてはなんとしてもアルシッドク皇国の皇女を自分の息子の嫁に迎えるため、横槍を入れ最終的には人質としたいらしい。


 理由を推察すると、やはり1年と少し前にセルスティア王国とアルシッドク皇国の2国から、竜を守るべく発表された『竜大公を1個の国主として扱う』と言う声明によるところが大きいだろう。


 次に、名の伏せられたままの竜大公との繋がりについては、その鱗をだと思われる――数年前までは、豊富に取れていた竜の鱗が突然取れなくなった。と言うよりも竜自体がどこかへ移動してしまったらしく、その姿も見えなくなった。そのせいで、獣魔が増えているのも要因だろう――竜は数十年に1度の周期で鱗が生え変わると文献に載っている。その鱗をただ同然の値段で譲ってもらうつもりなのだろう。

 娘とアルスティの婚約の話については考えるだけでも面倒だ……。


 「まったく、父上と来たらまさか、学園を主席で卒業して20日もかけて帰国したばかりの私にアルシッドク皇国に戻れなんて命令するんですもの……酷いと思うだろ?

 帰国したら、贅を尽くした晩餐会で見目のいい女性と……楽しいことしようって思っていたのに……」 


 腹立たしげに、建前で愚痴を零せばオーカスはクスクスと笑う。


「仕方ないではないですか。王のご命令は絶対でしょう?」


「まぁ、確かにそうだけれど……。まさか、アルスティの件まで絡んでくるなんてね」


「アルスティ様がどうかされたのですか?」


 無意識に溜息を吐いて、オーカスをみれば楽しそうに微笑んでいる。仕方なくその理由を話してきかせることにした。


「竜大公の娘が凄い美人らしくてね。アルスティ(あの馬鹿)がどうしても彼女じゃないと嫌だとか駄々捏ねてるらしい。

 あの顔で良く言える、同じ親から産まれたけれど、本当に? って未だに疑うわ」


「それでは、アルスティ殿下は竜大公の名前を知っているのではないのですか?」


 疑問を持ったオーカスは、当然のようにその話しを振った。


「……それが、覚えてないの……」


「え?」


 ……やっぱりそうなるわよね。私だって、そうなったし!


「なんでも、突然殴られたらしいわ。そのせいで名前も全て忘れたって話よ」


「それはまた、苦しい言い訳ですね……」


 幼い頃からアルスティを知るオーカスは苦笑いを浮かべる。


 アルスティは、昔から自分に都合の悪いことは全て忘れる。しかも、自分に非がある場合は綺麗さっぱりだ……。そのせいで、父親から疎まれていることすら理解できていない。

 父親とはいえ、1国の国主である。利用価値のない者は息子ですら切り捨てることを厭わないのだとアルスティはわかっていない。


「まぁ、昔からそうだし……。そのお陰で私が向う嵌めになったかと思えば、やる気がでないのもわかるだろう?」


 他の従者に聞かれても問題ないよう繕い話す。


「それは、また……」


「まぁ、仕方ない。言うこと聞かないときは……それでも良いと王の命令でもあるわけだし、失敗すれば父上の私に対する評価を落とすことになるから」


 苦い顔をみせ、ワザとらしく頭に手を置いてみせる。同調するようにオーカスの顔も歪んだ。


 さて、これからどうやって攻め込むか……、まずは、お友達と再会しなければ……。

 父親が息子を監視するために配置した、従者たちに視線を送りつつこれからを思案する。

 進む船から白波を立てる海面を見つめ、一人深い溜息を吐いた。


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