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竜達の愛娘  作者: ao
第四章 ―グリンヒルデ王国編―
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リーシャの婚約・誤解①

 お読みいただきありがとうございます。

 評価・ブックマークを頂きありがとうございます。少しでも気に入って頂けるようであればよろしくお願いします。


 また、既に頂いている方もそうでない方もお時間ある時で構いませんので感想をいただければ嬉しいです。

/シュベル


 ダンスパーティーのあと、私たちはあの会話のせいでかなりの警戒態勢を敷いていたのだが、見事に空振り何事もなく既に3年の月日が経っている。12歳だったウィリアも15歳になり、ますます美しく、優しい女性へと育っている。


 代わり映えしない毎日かと言えば少し違う。彼女が13になった歳からだった、屋敷へ毎日届くようになったものがある。それは貴族からウィリアを息子の妻にしたい旨の手紙だ。

 確かに昔も同じように手紙が届いたり、従者が訪ねてきたりとしていたが、ここまで増えるとは予想していなかった……。

 初めのころは真面目に手紙の返事を書いたりもした……だが、多すぎるのだ。

 

「今日もか……」


「えぇ。そのようです」


 毎日何百と届く手紙の山を睨みつける言えば、ベルンが呆れたように同意する。


「全て燃やせ」


 ここ2年毎日繰り返される夕方の光景を見ながら笑っているデイハとジオールたちへ、鬱憤を晴らすため睨みつける視線を向けた。


「そう、怒らずとも良いではありませんか。ウィリア様が魅力的だからこそ、こうして手紙が来るのですよ?」


「まったくですのぅ。これではウィリア様に度量が狭いと言われ振られるのが落ちじゃ」


「煩い! ウィリアはこの程度で私を嫌ったりはしない!」


 腹立たしげに言い返した私の肩を、ベルンが宥めるように叩いたのかと思えばそうではなく、リビングの入り口を差していた。その手を辿り見れば、今にも泣き出しそうなリーシャが立っている。


「どうしたのだ?」


 問いかけた私への返事はなく、ウィリアを探すように視線を動かしている。ぎゅっと握ったドレスが皺を作るほどの緊急事態なのだろうと思い、急いでウィリアへと思念を飛ばす。


《ウィリア、リーシャが緊急事態のようだ》


《え? リーシャが?》


 そう思念が返って来たかと思えば、パタパタと駆けて来る足音が聞こえるとウィリアの声がリーシャを呼んだ。


「リーシャ?」


 声のする方へ視線を向けたリーシャは溜まらず走り出すと、ウィリアへ抱きつき声を出し泣きはじめる。彼女は戸惑いつつも、リーシャを抱きしめその背をなでる。

 

 漸く落ち着いてきたらしい彼女に、ウィリアはリビングのソファーへ腰を降ろすように伝え、紅茶を入れてやると泣くほど何があったのか? と理由を聞きはじめた。


「どうしたの?」


 鼻を啜り、目を赤く腫らしたリーシャは私たちを気にしつつもポツポツと話しはじめた。


 彼女の話しをまとめると、そろそろ婚約者を持つべきだと両親に言われた彼女は、好きな男性がいることを話したそうだ。

 リーシャの想い人は、爵位こそ子爵だがとても知的で優しい男なのだとか……。

 だが、それを聞いた両親は特に反対をする様子もなかったことから受け入れられたと思っていた彼女は、その後彼に猛アタックを仕掛け、1年かけて漸く彼から色よい返事を貰えたところだった。

 けれども、今日になって突然両親が辺境伯家の男と婚約することを強制してきたとのだと言う。


 リーシャを大切にしている皇王が何故? と思わなくもないが……。きっと、彼女の婚姻も国のためになるのだろうなと父として彼へ同情した。


 ウィリアもなんとなく理解はしているのだろう、だが、リーシャのことを考えどう返すべきか悩んでいるようだった。

 困り果てるウィリアの様子を見て、彼女たちへ提案する。


「リーシャ」


「はい?」


 突然呼びかけられ、リーシャはピクっと肩を揺らし警戒したようだ。


「泊まって行くか?」


「……いいのですか?」


 思わぬ提案に、一瞬固まるも痛々しいほどの笑顔を見せる。


「あぁ。かまわん、部屋はウィリアと一緒でいいのだろう?」


 そう、提案すればウィリアの方が嬉しそうに立ち上がるとリーシャを部屋へと連れて行ってしまった。そんな2人を見送り、リーシャを預かることを皇王へと思念で伝える。


《今、いいか?》


《はい》


 皇王は、ひどく疲れた声音を思念に乗せ答えた。


《リーシャだが――《まさか、そちらへ行っているのですか? 直ぐに迎に向わせます》》


 名を出した途端、被せるように発言する皇王の声音を聞く限り、どうやら、誰にも告げず黙って来ていたらしい。


《まぁ、落ち着け》


 まずは落ち着かせ話しをする。


《とりあえず、リーシャのことだが……。今日はウィリアと話したいだろうから泊まらせる》


 そう伝えれば、落ち込んだような声音で彼は了承してくれた。


《シュベル様……王とは孤独なのですね……》


 感傷的な彼に対し同意しておいた方がいいだろうと考え《そうだな》と返せば、聞いてもいないのに自身の思いを語りはじめた……。


《実は、今回リーシャを辺境伯の男児(だんじ)へという話はあの子と想い人である子爵家の男児が付き合いはじめた頃からあったのです……ですが、2年ほど前、突然グリンヒルデ王国から縁談が舞い込みまして……。回避するためには既に、話しを貰っていた辺境伯との話しを推し進めるしかないと判断いたしました》


 ここでまた、グリンヒルデか……。


《どの王子の嫁にと言われたのだ?》


《それが……、第3王子です》


《馬鹿王子か!》


 対面した馬鹿王子の姿や言葉が脳裏を過ぎり、あれと結婚などリーシャが哀れ過ぎると考えてしまう。


《それをリーシャには、話したのか?》


《いえ……、話そうとした矢先飛び出していってしまいまして》


《なるほどな……》


 これ以上、私が踏み込むべき話では無いと思い挨拶し思念を切った。

 皇王には同情するが……リーシャの気持ちを考えれば、納得はできないだろう。


 昼食の時間になりウィリアと共に、2階から降りてきたリーシャの話を聞いた女竜たちは、食事をしながら皇王を貶す会話を繰り広げている。


 その中には、自分の番に対して不満を持つ者もいるようで……、徐々にその会話は、相手に対する不満をぶちまけるものとなっていった。


 会話が進むに連れ、耳が痛いと言わんばかりに視線を逸らしはじめる男竜たちを気にかける様子もなく女竜たちは、不満を声高に言い続けている……。


「ウィリア様も、この際ですから言いたいこといってしまいましょうよ!」


 そう切り出したのはルリアだった。

 視線だけを彷徨わせ考える素振りを見せたウィリアとは違い。


 何を言われるのだろうか? と不安を感じると同時に、きっと彼女は私を褒めてくれる言葉を言ってくれると言う期待とで鼓動が早くなる。


「遠慮する必要はありませんわ! あちらにいるのは岩とでも思えば問題ありません」


 アルミスがチラリと視線を寄越すと微笑んで、ウィリアを煽った。

 アルミスの視線を追うように私と視線を合わせたウィリアは、恥ずかしそうに顔を染めると視線を外した。


「実は……」


 リーシャがその手を握り目を輝かせ聞き返す。


「ありますのね?」


「その、シュベル様にお願いと言うか……」


「もう! はっきりおっしゃって!」


 頷いたウィリアは、肩を少しだけ張ったように背筋を伸ばすと言葉を口にする。


「私も15歳になったし……、流石に同じベットで寝るのはちょっと……色々とね?」


 恥ずかしそうに俯くウィリアを余所に。

 ぇ……? と声を発した女竜たちが固まった。

 その反応にわけがわからず、首を傾げた私へデイハとジオールといった古参の男竜たちが詰め寄ってくると、事実か? と確認してきた。

 

「あぁ。何か問題があるのか?」


 純粋にわからないから聞いただけなのだが、はぁ~。と皆して深い溜息を吐くと呆れた表情になった。


「いいですか? シュベル様」


 そうしてはじまる、男竜(妻帯者)たちからの説得、何故共に寝てはいけないのか! ウィリアを番とするつもりなのだろう? などの言葉と共に口々に、ありえないと言われ、最後には不本意ながらも了承するしかない状況に置かれたため了承する。


 この日を境に、私とウィリアの寝室は完全に別けられることとなったのだ……。

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