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竜達の愛娘  作者: ao
第四章 ―グリンヒルデ王国編―
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思惑① version.コーラル

 version.コーラルです。閑話にしようかと悩みましたが本編での掲載にしました。


 面白いと思えましたら、ブクマ・評価・感想・レビュー いただけると嬉しいです。

/コーラル・ハイド・フォン・グリンヒルデ


 カーテンの隙間から差し込む、光に目を覚ましベットを見遣れば、生まれたままの姿で眠るお友達が目に留まった。


「卒園式か……折角、仲良くなったお友達とも、これで終わりね……」


 横に眠る彼の髪を撫でると、ベットを揺らさないよう降りる。

お友達が泊まった日は、従者のオーカスが眠る内に湯を用意してくれていることを知っている(あたし)は何も纏わず浴室へと向う。


 学園の生活で何が一番気に入っていたかと問われれば、ふふっ。間違いなく一緒に寝てくれるお友達と言ったでしょうね。

 けれどそれも、今日で終わり。本国に戻れば別にお友達が沢山いるから寂しくはない。

 

 猫足のバスタブに花を浮かべた、湯船にゆっくり浸り冷えた身体を温める。

 この学園生活で、唯一の心残りを思い出した。

 ダンスパーティーで見かけた、存在感のある漆黒の黒髪を無造作に背中で縛った、鋭い金の瞳を持つ彼のことだけ……。


「はぁ~。もう少しお話ししておけばよかったわ」


「入りますよ? コーラル様」


「あら、もうそんな時間?」


「えぇ」


 オーカスが、バスローブを用意してくれるのを見て湯船からたちあがる。

 差し出されたバスローブを受け取り羽織ると、用意された椅子へと座った。

 丁寧な指使いで髪を拭きあげ、襟足から左へ流れるようにゆるく編み込んで髪紐で止める。


「よろしいですよ」


 その声を合図に、バスローブを脱ぐと今日で最後となる制服へと袖を通していく。


「そういえば、彼は?」


 ベットで眠る友人のことを指して聞けば「お部屋にお送りしました」と返してくれた。

 仕上げとばかりに、首にかけた帯をお気に入りのエメラルド色の竜鱗のブローチで留めて貰い、鏡に映る自分を、いつも通りマジマジ見つめおかしいところが無いか確認する。

 

「うん。問題ないわ」


 オーカスへお礼を言い、リビングへ移動すると父が着けた従者であるジェリが、一礼して椅子を引いてくれた。静かに腰を降ろしテーブルに置かれたナプキンを広げ膝に置けば次々と食事が運ばれてくる。


「ありがとう」


 幼い頃から、乳母にテーブルマナーを厳しく躾けられてきたお陰なのか、今では優雅だと誉めそやされるほどになった。けれどそれは……王族なら、当たり前……と言う言葉で片付けられてしまう。

 常にその言葉がついて回る抵抗をしらない幼い心は、不安と常に見張られる圧を抱え堪らなく孤独を感じてしまった。……だからお友達が必要になった。


 そして、この言葉遣いになったのも同じ頃。オーカス以外には決して知られてはならない、習性……男も女も同じにしか見えない、だからこそお友達はどちらでも良かったし、平気で利用した。

 後腐れの無い、男を選ぶことも多かったけれど……。


「もう、いいわ……」


 味も何もしない食事を中断し両手に持った、ナイフとフォークを皿の上に置くとグラスを取り水を飲むとナプキンで口の周りを拭い立ち上がる。


 差し出された、鞄を受け取ると少し早いとは知りつつも部屋を後にした。

 卒園式が行われた会場は、大講堂で入園式よりも生徒の数は少ない。在校生代表の現学園生徒執行部のメンバーがいるぐらいだった。


 疎らに座る学生たちの間を縫って中程に腰を降ろした。


「御機嫌よう。コーラル殿下、最後ですからお隣にお座りしてもよろしくて?」


 そう声をかけ、返事を待たず直ぐ隣に腰を降ろす女子生徒がいた。お友達の1人である、ヒルディナ嬢だ。


「今日も美しいね。ヒルディナ嬢」


 お世辞で彼女の機嫌を取りつつ、寂しそうな顔を見せれば直ぐに絆されてくれる。私の手にそっと自身の手を重ねてくる彼女に微笑みを向ける。


(わたくし)コーラル様のお側に侍れること、嬉しく思いますわ」


 小さな声でそう伝えてくれる。

 彼女をお友達に加えてやったのには、利用価値があるからでしかない。彼女の父はこの国でも有数の商家だ。表で扱っているのは主に食料品、裏で扱うものは龍の血や肉などなのだ。


 龍の肉を食べることが当たり前の我が国とは違い、この国では滅多に出回ることは無い。

 だからこそ、引き入れ可愛がってやっただけなのだが、何を勘違いしているのだろうか?

 それでも、表情を変えたりしないのが、王族なのよ。


「そうか、私も嬉しいよ……。だが君にお父上は賛成してくれるのだろうか? 既に君には婚約者がいるのだろう?」


 事実を告げれば、彼女は顔を引き攣らせ白々しい笑い声をあげた。

 だから、私も優しく突き放す言葉をかけてあげる。


「いいんだよ。美しい思い出にしよう……。君に迷惑をかけたくないんだ」


 彼女の双眸が徐々に潤み、一筋の雫を流すもそれを拭うことはしなかった。ここで情けをかければ泥沼に嵌る気がするからだ。

 他のお友達を気遣う振りをして席を移動する。

 疎らだった、席が既に埋まりつつある状況を見て、卒園式の開始が近いことを悟ったあたしは、急いで空いている席へ座った。


 それから、そう時間もかからず式ははじまった。

 卒園に際し、魔力操作に関する記憶をなくすことが、学長から直々に伝えられる。講師の顔すらも既に思い出せない状況で、今更……と思うもグリンヒルデの王となるためには、必要なものだと思案する。どうにかして、講師と接触したいところだ。


 長ったらしい学長の挨拶も終わり、式は順調に進んでいき終わりを迎える頃にはグスグスと鼻を啜る音が周りから聞こえていた。

 こう言う感傷的なことは苦手なのよね……。そう腹の中で思いながらも、近くに座る女子生徒へハンカチーフを差し出してやる。

 戸惑ったように顔をあげた女子生徒は、弱々しい声で礼を言うと受け取り目元を拭っていた。


 式も終わり、大講堂を出ようとするあたしの元へ下級生のお友達が沢山、花束を持ってきてくれる。皆口々に、お祝いと寂しいという言葉を伝えてくれた。

 寂しい笑顔の仮面を貼り付け同意する。たったこれだけのことで、人の心は感嘆に掌握できる……くだらない……。


 時を見計らったように現れたオーカスが声をかけてくる。


「コーラル様。時間が押しております」


「そうか。わかった……。それでは、皆元気で」


 名残惜しそうに振り向き手を振れば、咽び泣く数名の女子生徒を支える他の女子生徒の姿が見えた。


「なぜ、あぁ泣けるのだろうな?」


 本音を零せば、呆れた顔を見せる従者はいつものように答える。


「それだけ、あなたの被る仮面が好みだったのでしょう」


 その言葉に返事を返すことなく、学長室へと歩く。

 重厚な扉の前で、立ち止まりノックをすれば専属事務官の女性が用件を聞いてくる。

 もう何度目かわからないほど、頼んだかしら? 「魔力操作に関することで」と伝えれば、扉を開け中へと案内してくれた。


 何か書類仕事をしているらしかった学長が、その手を止めソファーへと移動する。


「こちらへ」


 向かいのソファーを勧められ、そこへ座ると紳士な生徒の仮面を被り説得を試みる。


「何度もお時間をいただき、申し訳ありません。

 魔力操作の講師の方をお1人でいいのです。紹介していただけませんでしょうか?

 もちろん、我が国でできる事であれば、ご協力を約束いたします」


 やはり苦い顔を見せた学長は、首を横に振り「すまない」と一言だけ告げた。


「何故ですか? 我が国が、魔力操作を使ってアルシッドク皇国に戦を仕掛けると御思いですか?」


「いや、そうではないんだ。魔力操作を学外に持ち出す場合、皇国に必ず申請し許可を取らねばならないんだ。それには、講師の紹介も含まれる」


 学長は、折角固めた頭をボリボリ掻く。

 なんとか手がかりだけでも引き出せないかと食い下がる私へ「仕事が残ってる」と理由をつけたい席を促した。

 

 部屋から追い出され、寮への道すがらオーカスが助言をくれる。


「学長がダメならば、皇王を落とせば良いのではありませんか?」


「どういう意味だ?」


 ニヤっとした笑みを浮かべた彼はの提案は、とても素晴らしいものだった。


「なるほどな……。では急ぎ国へ帰るとしよう……」

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