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竜達の愛娘  作者: ao
第四章 ―グリンヒルデ王国編―
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夏の終わり

 お読みいただきありがとうございます。

 評価・ブックマークを頂きありがとうございます。少しでも気に入って頂けるようであればよろしくお願いします。

 また、既に頂いている方もそうでない方もお時間ある時で構いませんので感想をいただければ嬉しいです。


第4章のはじまりです。

/シュベル


 夏季休暇も、あと数日で終わりを迎えると言うある日、ウィリアに2人デュセイの街で買い物をしようと誘ったところ頷いてくれたので、今日は2人で手を繋ぎのんびり見て回ることにした。


 今回買う予定の者は、パーティー用のドレスと私たち大人用の服だ。秋の終わりに、学園に通う生徒とその保護者を集めダンスパーティーがあるそうで、その注文が込み合う前に、制服を作る際世話になったリーシャお勧めの服飾店に注文してしまおうと考えたのだ。


 燦々と降り注ぐ、暑い日差しのなかを2人で日傘を差しウィリアの歩調に合わせゆっくりと歩く。小さな傘に肩を寄せ合うようにして歩けば、眼前に広がる景色も、街行く馬車やひとも全てが、私たち2人のために存在しているような感覚になるから不思議だ。


「シュベル様、あそこ見てください!」


 瞳をキラキラさせた、ウィリアの差した指を辿れば、裁縫関係を扱っているらしい店が見えた。


「寄って見てみるか?」


 彼女は嬉しそうに頷いた。


 店先には、店主が作ったであろう刺繍入りの小物が並んでいる。店内に入れば、色彩豊かに締め上げられた糸や布地が並んでいる。

 楽しそうに眺める彼女を見守りつつ、店内を見て回る。人族が好きなものに関して未だ良く分らないが、ウィリアが好きなものであれば理解したいと思っている。


 気に入った色があったのか手にとり見比べているが、両手にそれぞれを握り決めかねているようでその場を動かなくなってしまった。

 刺繍糸ひとつで、真剣に悩むウィリアが、とても可愛く思えた。


「ふふっ」


 声を殺し笑っている姿に気付いたらしいウィリアは、小さく唇を尖らせ上目遣いに恥ずかしそうな表情でこちらを見上げると、少し拗ねたような声を出した。


「なんですかっ?」


「いや、ただ――くっふふ」


 つい堪えきれなく笑ってしまう。ウィリアはポカポカと叩くとぷぅっと頬を膨らませ目を細めて見せた。秋に見かける、シマジマリスが頬袋に食料を詰め込んだ愛らしい姿にそっくりで愛しさが倍増するのを感じて、腕の中に彼女を閉じ込めた。


「しっ……シュベルさま?」


 自身の身体を雷が伝うように、彼女の声が耳まで届いた。

 困った……、自制しなければとあれほど考えていたのに! ウィリアを前にすれば容易くその壁が崩壊していまう。直ぐに離せば冗談で済むのだろうが……、離したくない。


「ウィリア……」


 小さく彼女だけに聞こえる声で、名を呼べば……、懸命にその腕を背に回してくれる。ウィリアの頭に顔を埋めれば、優しい花の香りが鼻腔を擽った。


 そんな私たちの横から、咳払いをする音がする。またか! と思い睨む視線を向ければ、仁王立ちの男店主がジト目で見ていた……。

 すっかり忘れていたが、ここはデュセイの街にある裁縫関係を売っている店内だ。現実に引き戻され慌ててウィリアを離し、彼女が持つ糸を購入して店を後にする。

 視線が交差すると同時に、噴出し笑った。


 昼になり、どこかで食事を食べようと相談している私たちへ声をかけてくる男性がいた。どうやら、飲食店を始めたばかりのようで客引きに出ていたらしい彼の話しを聞き、それならばと着いていくことになった。


 案内された場所は、私たちの目的地からは少し離れた場所だった。大通りから路地へ抜けると、噴水広場があり店はその目の前にある小さめの建物だ。

 少し古いレンガ造りの外観、壁に這った蔦がよりアンティークな雰囲気を持っている。

 

「ようこそ、シルフィーの館へ」


 彼は笑顔で、店の扉を開き私たちへお辞儀をすると歓迎してくれた。

 室内を見渡せば、正面には大きめのカウンターがあり、その横に磨かれた木目の美しいテーブルが5個置かれ、奥は調理場なのだろうせわしなく動く女性の姿が見えた。


「お好きなお席へどうぞ」


 そう言って、彼はカウンターの中へと入って行った。私たちは、噴水飲みえる窓の側の席を選び座る。噴水の周りには元気に走り回る子供たちの姿や話し込む女性たちの姿があり、まるで魔道具を使い日常を観察する気分になった。


 メニューと水を持って着てくれた女性に礼を言いお勧めを聞く


「角ウサギのシチューが美味しいですよ」


 それでいいか? と視線でウィリアを見れば頷いたのでお勧めを注文する。


「では、それをふたつと後は、パンとサラダとあっさりした飲み物を頼む」


「はい。少々お待ち下さい~」


 ペコっと頭を下げ女性がカウンターの中へ向い注文内容を告げると、それは直ぐに運ばれてきた。


「おまちどうさまです~」


 運ばれおかれた、シチューには大人の男性の拳はある大きなの肉の塊が入っている。肉は柔らかく口に入れればホロホロと解けた。丸く少し硬めの黒いパンと野菜を千切っただけのサラダ、飲み物はあっさりとした口当たりでほんのり甘く、柑橘系の香りで飲みやすかった。


 食事も終わり、会計を済ませ「また来る」と告げ店を後にする。相変らずの日差しだが、ウィリアが興味を持った店や物を見ては2人でのんびりと歩く。


 古物商と思しき店の前で突然立ち止まった彼女を振り返れば、目の前を凝視したまま止まっている。視線を追い見れば、以前、演習場に乗り込んできたグリンヒルデ王国の第2王子の姿があった。

 彼は、古物商の親父と真剣な表情で話している。


 その様子に何故かはわからないが、とても嫌な感じがした。彼と深く関わるべきではないと直感的に感じた。私は焦り、急いでウィリアの手を引き直ぐにその場を後にするため空魔法を使い、目的地だったリーシャお勧めの服飾店の前へと移動した。


 目を瞬かせて驚いていたウィリアを連れ店内へ入る。半年前と変わらない女性店主がニコニコと微笑みを浮かべて、挨拶をしてくれる。


「お久しぶりでございます。竜大公様。本日はどのような物をお求めですか?」


 無言を貫く私の変わりにウィリアが答える。


「実は、今度学園でパーティーがあって、そのドレスが欲しいです」


「まぁ、そうでしたの! でしたら採寸いたしましょうか?」


 女店主に連れられウィリアが奥へ向って歩き出すのを呆然と見送る。自身の手に違和感を感じ見てみれば、酷く汗をかいていた。

 気持ちを落ち着かせるために、深呼吸をひたすら繰り返す。


 漸く、店内に飾られたドレスが色を帯びて見えるようになったと思えば、ウィリアの採寸が終わり女性店主と共に奥から戻ってくるところだった。


「シュベルお父様。お待たせしました」


 ニコニコと微笑み駆け寄ってくるウィリアに、気にしなくて良いと首を振りその身体を受け止め、頭を撫でる。


「あらあら、相変らず仲がよろしいのですね。ほほほ」


 女性店主の笑い声を聞き、本来の目的を思い出した私は、彼女へ屋敷へ来て欲しいと伝えた。

 本来であればこちらがここへ訪ねるべきところなのだろうが、ウィリアとのデートを優先させるため、今回、留守番を言いつけた他の竜たちのドレスや服を注文しようとしたのだが、採寸の必要があることを考え、屋敷へと来てもらうことにしたのだ。


 後日訪問を約束してくれた彼女に別れを告げ、休憩がてらカフェに入る。

 木々を利用したオープンカフェになったそこは、公園の側にあるため夏の花々が色濃く咲くさまを伺い見ることができる。

 木陰になった席に座り注文した紅茶をひと口飲めば、渇きを感じた喉が潤された。


「シュベルお父様」


 神妙な顔つきをしたウィリアに呼ばれ、視線を向ければ瞳を揺らしている。


「どうしたのだ? 何か言いにくいことでもあるのか?」


 中々続きを言おうとしない彼女を気遣うよう声をかける。


「……あのひと……には……」


 誰の事を言っているのだろうか? そう思考しはじめる私へウィリアを意を決したような顔を見せはっきりとした声音を出した。


「グリンヒルデの第2王子には近付かないで下さい。あの人に近付くと良くないことが起きる気がするんです! 理由はわからないですけど、なんだか怖いんです」


 言葉尻は弱々しい声音になってしまっていたが、心配してくれているだろうことは分った。ウィリアを安心させるため、席を立ち彼女を抱き上げ座りなおし、できるだけ優しく落ち着いた声音を意識して言葉を紡いだ。


「あぁ。大丈夫だ。心配させてしまったな!」


「いいえ……」


 俯きフルフルと首を振って答える彼女の腰に手を回し、暗くなってしまった気分を払拭するため天を仰ぎ空いた手で額を押さえ


「折角のデートが台無しだ……」


 そうワザとらしく声を出せば、くすくすと彼女は笑ってくれた。

お前なんかに、王太子妃ができるわけがない!!(連載版)

https://book1.adouzi.eu.org/n8351ft/ もよろしくお願いします。

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