第3王子と面会
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ほんじつで第3章は終わります。
/シュベル
その日の空は重く圧し掛かるような雲に覆われ、今にも雨粒が落ちてきそうで憂鬱な気分にさせた。
国王との面会の時に話した、グリンヒルデ王国第3王子である、アルスティ・ハイド・フォン・グリンヒルデに会うため、私とデイハ・ウィリアの3人は、セルスティア王国王城内中央付近にある応接室で椅子に座り、王子の登場を待っていた。
重い気分を払拭するために気を使ってくれたのか、ウィリアがコーヒーと以前とっておきだと言っていた、ヒステパイと言うケーキを出してくれている。
サクサクの生地に包まれた甘酸っぱいヒステの実がしっとりと口当たり良く、その爽やかに香り非常に気分を落ち着かせてくれる。
緊張した面持ちのデイハも、少し和んだような表情を見せ、室内は和やかな空気になりつつあったのだが、ノックと共に第3王子と国王・ハロウが姿を見せ、その空気が緊張したものへと戻ってしまった……。
折角のお茶タイムが怪我された気分になるのを感じ、少しだけふてくされた顔をしてみればウィリアにクスリと笑われてしまった。
3人が席に座る。侍女が既に用意していたであろう紅茶が入ったカップを配り終えると退室していった。物音ひとつ立てることが憚られるような状態の中、国王が紅茶をひと口飲むとハロウが紹介をはじめた。
「こちら、グリンヒルデ王国第3王子のアルスティ・ハイド・フォン・グリンヒルデ殿下です」
高圧的な態度で踏ん反り返り座る、第3王子がピクっと下げたか下げてないかわからないほどの会釈と思われる行動をした。
彼の王子は、フォファーに座っているため余計にそう見えるのかもしれないが、身長は低く横に太く腹が重そうで、少しでも体勢をかえようものなら服がはち切れてしまうのでは無いか? と思わせるほど肉で満ちた身体を持ち、その顔は、細い目、ソバカスで覆われた頬に分厚く大きいな唇に顎のない幅広い顔をしている。
《まさかとは思いますが、先程の行動は挨拶なのですか?》
困惑気味のデイハの思念が届いた。
《すまん。わからん》
正直にわからないと答えれば、国王が思念に参加してくる……。魔道具を持っていたらしい。
《アレでも一応、挨拶なのです……》
《そっ、そうか》
挨拶だったらしい……。見る限り首がないから仕方ないのだろう。
《知っていたらでいい、教えて欲しいことがある》
国王に視線を向け思念を飛ばせば、視線だけで頷いてくれた。
《その……、第3王子と第2王子は、同じ両親から産まれているのか?》
質問の意味が分ったらしい国王が、その瞼を開き、眼球を必死に動かし、涙目になりながらも笑いに堪える様を見せられた。皆は大丈夫だろうか? と回りを見れば、ウィリアの右に座っていたデイハが、フルフルと震えている。
敵を見てその怒りに震えているか? 心配になり思念を送ろうとした刹那
「ぶほっ」
噴出していた。肩を震わせ笑い続けるデイハに釣られるように国王も限界を向かえ、声を出して笑っていた。2人が笑い終わるのを待っていたようにハロウが立ち上がる。
「それで、こちらが竜大公シュベル・クリム・ハーナス様とそのご息女であるウィスユリア様、元グリンヒルデ王国内に居を構えられていた、竜族の長デイハ・ミスガナ様です」
ハロウの説明を聞き終えるや否や、第3王子はそのままの姿勢で我らを指差すとその口角をあげ、野太い声で発言した。
「であるか! 声を出すことを許す」
《これは、頭が弱い人種なのですか?》
笑い終わりって幾分緊張が解けた様子で辛辣な思念を送るデイハ。
《だろうな……。果たしてこれの話しを聞く必要があるのだろうか?》
同意し疑問を思念で送れば、国王の思念が送られてくる。
《はぁ……、これだから馬鹿は! 申し訳ありません。少しお待ち下さい。それと、両親は同じですよ》
「ぶふっ」
どうやらデイハはこの話題が壷のようだ。瞬時に顔を戻すことができないようで、ピクピク眉と口角を震わせ至極真面目な顔を作ろうと努力している。
《……シュベル様のっ、意見にぃ、同意いたしますっ》
復活するまで暫くかかるようだ。
既に馬鹿だと言うことを知ってしまった私たちと、思念で話せる国王は焦りを露に馬鹿王子へ耳打ちする。それ見つめる私たちに挟まれるように座っているウィリアは、不思議そうにその光景を見ていた。
出された紅茶1杯を飲み干すほどの時間を経て漸く、国王と第3王子の打ち合わせは終わったようだ。
「我は、グリンヒルデ王国第3王子・アルスティ・ハイド・フォン・グリンヒルデである。此度、そなたらの領地とは知らず立ち入ったことすまなかったと思っている」
そう言うと、まったく下がっているとは思えない礼をしてみせた。
「今後は立ち入るな。我らが望むのはただ平和に子を成し暮すことだ」
その言葉に、国王たちは頷いている。
短く太い指を顎のような肉にあて考え事をする仕草を見せた彼は、浅くソファーに座りなおすと紅茶をひと口飲んだ。
「それならば、いい案がある! この私が考えた妙案だ!」
我ながら賢いな我は、と続けた彼は顎肉をタプタプと上下に揺らし細い目が更に細くした。
「竜族と我が国で和平を結べば良いのだ。我の意見であれば、父上も無碍にはしないはずだ」
言葉を切り大きく息を吸い口角をあげ気持ち悪いと思える顔を晒した。例えるなら、オークのオスがメスに求愛するような顔だ……。
そして、太く短い指をウィリアへ向けると頭のおかしい発言をはじめた。
「そこで、和平をより強固なものとするため、そなたの娘であるウィスユリアと私が婚姻し、夫婦となればいいのだ。もちろん、正妃として迎え入れるし優遇すると約束しよう! どうだ、素晴らしい案だろう?」
ソファーへ踏ん反り返り、ドヤ顔を決めた後、気持ち悪い顔のままウィリアへ視線を向けた。
その言葉に直ぐさま立ち上がろうとした私の後ろをデイハが無言で歩き彼へ近寄ると、その崩れた顔面めがけ、握り締めた拳を勢い良く振りぬいた。
ガツっと言う音と共に、ソファーごと後の壁に飛ばされ激突し壁にめり込んだ形になった馬鹿王子に向かい、デイハの罵倒する声が更に追い討ちをかける。
「ふざけるのもたいがいにしろ!! お前は自分の立場もわきまえず何が和平だ。望むのなら今すぐお前を殺し母国ごと焦土とかしてやるぞ? 世話になった、セルスティアの国王がいるからこの程度で許してやるのだ! 2度と舐めた口をきくな!」
デイハは、興奮し赤黒く変色した顔色で眉間に深い溝を刻み、白くなるほど握り締めた拳を震わせていた。ピクピクと痙攣し反応している、馬鹿王子の様子から殺さぬ程度に力を抑えていたことが伺える。もし私が先に動いていれば、間違いなく殺していた――。
そう考え、暴力的なシーンを見せてしまった! と心配になりウィリアの方を見れば魔法:個人箱から取り出したハンカチーフを持ち、デイハにかけよっていく。
「デイハ叔父様、血がついています。どこか痛めたりしてませんか?」
そう、声をかけデイハの手の方を拭いていた。あれを介抱していれば止めただろうが……その存在を無視される馬鹿王子が少し哀れに思えた。
心配する彼女のおかげで留意が下がった様子のデイハは優しいいつもの笑顔を向け「大丈夫だ」と言い優しく頭を撫でている。
応接室内はカオスとなっている。
仕切るはずの国王とハロウは、視線を窓の外に向けデイハが馬鹿王子を殴り飛ばした事実を見なかったことにするつもりなのか見ようともしない。
デイハはウィリアを膝に乗せ、2人で紅茶とお菓子を楽しげに談笑しながら食べている。
仕方なく溜息を吐き、馬鹿王子の側へ近付くとめり込んだ身体と引き出してやると、怒りを露にした彼は、ドスドスと大きな足音を立て扉に向って歩いていくと扉を開けその前でこちらを振り返り
「おまひぇたひゅ、おほひぇてひゅりょひ!」
そう叫ぶも、殴られたせいで歯数本かけ顎の形が変形しているためか理解に苦しむ言葉を吐き捨て乱暴に扉を開けると出て行った。
「あーその、すまん?」
とりあえず、折角整えてくれた謝罪の場を台無しにしたことを謝ってみる。
「「あれは、馬鹿王子が悪いだ(のです)」」
横に首を振ってみせた国王とハロウは、シンクロしたかのように同時にそう返してくれた。
「馬鹿なのは否定できないが……、今回の件でこの国がグリンヒルデに何かされるとかはないのか?」
心配になり問いかければ、国王はニヤリと笑って見せた。
「無いと言えます」
きっと私の顔には既に、何故? と書かれていたのだろう。問いかける前に理由を話してくれる。
「馬鹿がやらかした事実があります。それに、身柄はこちらが確保しておりますから……。
あの程度であれば、切り捨る可能性もありますが……。
それでも今回、アルシッドク皇国と我が国は正式に、竜大公様を1個の国主として扱うことを取り決めました。
その発表は既に各国へと伝達されております。そのことを踏まえ考えれば2国を敵に回しグリンヒルデが攻撃をしかけてくるとは考えられません」
「そうか……。だがいいのか? 簡単に言えば敵に回ると宣言したも同義だぞ?」
国王は、大きく頷いた。ありがたいことだ……。
「それで、ですね……。竜大公様には是非、我が国の魔術師たちへ魔道具の作り方をご教授いただきたいのです!!」
疲れ落ち窪んでいたはずの瞳をランランと輝かせ、無邪気な子供のような表情を見せた。
あぁ、そう言うことか……。国王が必死になったのは、魔道具のためだったのか……。
ジト目で見れば、数度咳払いをした後、言い訳をはじめた。言い募ればそれだけボロがボロボロ出てしまう彼に堪えきれずに笑った。
世話になったこと、竜を守ると約束してくれたことを踏まえつきに2度程度ならば構わないと伝えた。グリンヒルデの動向が分り次第教えると言ってくれたところで、国王は自身の仕事に戻る時間になったようで、執務室へ向うと言うので私たちも一緒に部屋を後にした。
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