国王・宰相 vs ヒルデス
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/ シュベル
ヒルデス・バーリンどちらも罰を受けるつもりはないようで、未だに国王の質問にヒルデスは飄々と答え、バーリンは沈黙し汗を拭うばかりだ。
「ところで、先程のバーリンの発言の中に気になる箇所があるのですが、発言よろしいでしょうか?」
会話の切れ間に、言葉を差し込んだのは宰相ノービスだった。
「何か?」
薄ら笑いを貼り付けた顔を崩さないままヒルデスは、身体半分を宰相ノービスへ向けている。言葉を発した相手が国王でないとわかるとこの態度である。
「いえ、簡単なことなのですが、我が国が竜大公様をお迎えし、竜種の狩りを禁じ、厳罰とするとしたのは2年前の話です。
それとほぼ同時期にセルスティア王国はじめ、この大陸全ての国へ通達を出しております」
言葉を切った宰相ノービスが、国王の方へと視線を向ける。同意するよう国王が言葉を返した。
「そのことについて、我が国にも、もちろん書簡は届いている」
それに頷いた彼が、頷くとヒルデスを真っ直ぐ見据え続きを言葉にする。
「冒険者ギルドに所属しているはずの冒険者たちは知らなかった? その発言はどういう意味なのでしょうか?
今回の件に関して我が国でも、冒険者ギルドに所属していた冒険者・職員たちに話しを聞いたところ間違いなく知っておりました。その事を知ってもなお、お金のために行った者もいたようですが……」
自国の民が、金のために竜種を狩るということに複雑な思いがあるのだろう、苦々しい顔をして質問を終える。
ヒルデスの顔が、この日はじめて崩れる。真顔になり側にいるバーリンを睨みつけるような視線を送っている。視線を受けたバーリンは、動揺しているのか視線を泳がせ何度も汗を拭っていた。
「補足として伝えておくが、我が国でもギルドや商業団体など全てに通達はしてある。これに関しては、私が直々に指揮を取ったのでな、良く覚えている」
沈黙を破りノービスへ援護射撃を繰り出した国王の言葉に、バーリンは顔色を更に悪くし汗を拭う為にあげたはずのハンカチーフを握り締めた。
そんなバーリンの様子を見ている内に、ヒルデスは薄ら笑いを浮かべた顔に戻っていた。
「確かに、私の元へもその通達は届いています。通達を受け、直ぐにギルド内にその旨を記した羊皮紙を貼り、職員達へ口伝するように伝えてあったのですが……」
ヒルデスは、眉根を下げ残念だと言わんばかりの表情を作り、首を振り語尾を濁すように言い終える。
なるほど。奴は他の職員の怠慢だと言いたいのか……。だが――。
その言動がいずれ自身の首を絞めるともと気付かない彼の姿が、見ている私には滑稽に思えた。ついくすりと、笑った私の声が静かな室内へ響く。
顔に笑みを浮かべ場の雰囲気を壊してしまったことに謝罪する。
「すまんな。つい、おかしくて笑ってしまった」
何がとは言わないで謝ってみれば、ヒルデスが憎憎しい顔でこちらを睨みつける。
お前の相手は違うだろうと言う意味を込めて、小動物を追い払うような仕草をしてみせてみると、負け犬が必死に威嚇するような、鼻にしわをよせ歯を剥き醜い顔をする彼を真顔で見つめてやれば、フンと鼻を鳴らし何事か呟いたようだが聞こえなかった。
場の雰囲気を読んでくれたのだろう、宰相ノービスが話しを戻すため発言した。
「先程、言われた内容ですとギルド職員の怠慢だと聞こえるのですが?」
「認めたくはないが、そうなってしまいます……」
彼は自分以外を切り捨てる方向に話しを持っていくつもりのようだ。
切り捨てられた……。そう考えたであろう彼以外の冒険者ギルドの者たちが、はち切れんばかりに目を見開き見つめている。
「なるほど……。そうでした、ヒルデス殿にお伺いしたいことがあるのです。
我が国の冒険者ギルドに、竜族の討伐依頼の紙が張り出されていた件ですが、発行元を辿るうち冒険者ギルド総本部より出されたことが、判明しております。その件についてどなたが受理され、発行されたのでしょうか?」
宰相ノービスは、抑揚のない声音で言葉を紡ぐと眼鏡をクイっと押し上げ、鋭い視線を彼へ向けた。
「その件もついては、私にも判りかねます」
「では、早急に調べていただき、その者たちの名を教えていただけますか? 既に竜大公様の領土に侵入し攻撃した者もいますし、無罪放免というわけには参りません。我が国で起こった事件の発端を作った者たちは、我が国で捕らえ裁かねばなりません」
「そうだな。既に実害が出ているのであれば、我が国も協力すると約束しよう!」
ノービスと言う男は、こういう事をやらせれば本当に上手い。丁寧な言葉遣いで相手を油断させ、自己保身に走るような言葉を選ぶよう相手を追い詰める。
それに追従し援護する国王の言葉もまた、良い布石だ……。
「……こちらでも、調べるよう手配いたしましょう」
ヒルデスは、自身が罪の証明のため利用されているなど、気付きもしない。
宰相ノービスは、薄らと微笑み視線を彼とバーリンに交互に向け更に問いかけた。
「バーリン殿とヒルデス殿にお伺いしたい。我が国への返事の書簡に関して、5日前にお伺いした時は、ヒルデス殿本人が『アルシッドク皇国の皇王様に、返信を出したのは私ですが』と言っていせんでしたか?」
「それがなんだ!」
執拗な尋問に焦れはじめたのか、彼は踵を何度も小刻みに揺らし、イラつきを隠そうともせず徐々に語気を荒くしはじめた。
宰相の言葉の意味に気付いたバーリンは、閉口したままドッと流れ出る汗を拭くことも忘れ俯いた。
「つい先程、バーリン殿は『ギルド職員が出したものであり、ヒルデス殿は関与しておりません』と言われましたね? そして、ヒルデス殿は『ロートの仕業です! 本人が自白しております』と言われましたが、あなたが返信を出したのではないのですか? どちらが真実かお教え願えますか?」
笑っていたはずの顔が、幾千の戦場を駆けた猛将のように獰猛な表情へと変わると室内を、異様な沈黙と焦燥が支配した。
そこへ爆弾が爆発するかのように焦りに満ちた大きな声が響いた。
「俺は、知ってる! この目で見たんだ! ギルド長が手紙を書いていた!!」
漸く……、蒔いた種が芽吹いたようだ。裏切り者は必ず、裏切られた者から反撃を食らう。
それに気付けなかったヒルデスは保身のために仲間を裏切り、仲間の命を差し出したのだ。
今回は今までのように生易しい刑罰ではない……軽くて死罪になるだろう。そんな状況でどんな大金を貰おうが受け入れる馬鹿はいないだろう。
口の端をあげたように見えた宰相ノービスが、叫んだ冒険者へ視線を向ける。
「ギルド長とは、ヒルデス殿のことですか?」
「あぁ、そうだよ。俺は確かに見たんだ! 手紙を書いてたとこを! 他にも、グリンヒルデ王国の使者から金を貰う変わりに、ギルド長は竜討伐の依頼を冒険者に依頼してたんだ!」
暴露され、怒りの矛先をその冒険者の男に向け、ギロリと睨みつけると違うと反論する。
「それは間違いです。陛下! この者とバーリンが結託しているのです。以前からギルド長の座を狙っていると噂があがっていました! グリンヒルデと取引は私を嵌めるために用意したしたものなのです! この2人はその事実を隠し、私へ罪を着せようとしているのです!」
必死に言い繕いはじめたヒルデスを更に追い詰める人物が声を出す。
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