罠①
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/シュベル
日が昇りはじめる頃、ウィリアは目を覚ました。窓際で魔道具を作っていた私は彼女の元へ行くとその手に触れると、自身の魔力と彼女の魔力をひとつにして混ぜるように魔力操作を行う。この時、外気に混じる魔力を自身の身体に取り入れるように動かす必要がある。
依然、学園の講師達に行ったものとは少し違う。あれは魔力を無理矢理自覚させるためのものであり、魔力を回復する為のものではない。だからこそ彼らは疲れ果てていたのである。
今回、ウィリアに行った魔力操作は、回復を優先させるものだ。慣れたものであれば、単体で行うより誰かと共に行う方が、魔力の回復が早まるのだ。ウィリアにとってはこちらの方が有効だと思った私は、1時間に1度これを行っていた。
魔力操作が終わり手を離した私に、ウィリアはゆっくりとした口調でお礼を言った。
「ありがとうございます」
「あぁ。大分戻ったようだな、昨夜より顔色が良い。だが、今日は大事を取ってベットに居ること!」
小さなウィリアの鼻を人さし指でチョンと突いた。すると、くすっと笑った顔を見せてくれた。
やはり、彼女の笑顔を見ると不思議と日常に戻った気がする。それほど当たり前になっていると言うことなのだろう。
少し悩んだ顔をしたウィリアを見つめ、「どうした?」と問いかけると彼女は言い難そうに口を開く。
「シュベル様。今日の話し合い……」
なるほど、今日のヒルデスとのことか……。参加したいとは言えない雰囲気を察したのだろう。
側に居てくれればとは思うが、この件に関してこれ以上ウィリアを介入させるつもりのない私は、敢えて体調のことを持ち出した。
「ウィリアは、アルミスたちと留守番しておくこと! しっかり休んで魔力を取り戻すべきだろう?」
寂しそうに笑って見せると、彼女は反論することもなく頷いてくれた。
元々、私たちに従順な部分があるせいか、今までこういった状況で反発したり、反論したりしたことは無いが、たまには、そういった姿も見てみいと思う。
扉がノックされ、アルミスが顔を出す。どうやら、塒からウィリアと私の朝食を持ってきてくれたようだ。ベットの側にテーブルを運んでやる。今日のメニューは、厚切りトーストにバターを塗り目玉焼きを乗せたラ○ュタパン――ウィリアがそう言っていた――と言われるものと黄色のスープ、色味が美しいサラダ、そしてゴロゴロとした焼いた大盛りの肉だ。
塒にいる女竜たちも、きっと早く元気になって欲しいと言う意味合いでこの肉を用意したのだろうが、肉の大きさとウィリアの口を見比べれば、確実に肉が勝ることに、ついプッと吹き出してしまう。
2人は視線を合わせ首を捻る。
「何か、面白いものでもあったのですか?」
理由がわからないと言いたげな顔をするアルミスに、私はふふっと笑うと肉を指差した。
「いやなに、肉とウィリアの口の大きさを見比べて、どう見ても入らないだろうと思っただけだ」
その言葉に、アルミスは近くのフォークで肉を差し比べるように視線を動かす。
「ふふっ、確かに大きすぎますわ。ウィリア様用にするならこれを更に、5つぐらいに切らなければ食べ難いでしょうに……。まったく……、あの子達ときたら。ふふふ」
料理担当の女竜たちを思い出したのか、実に楽しそうに笑った。
「冷える前に、いただきましょう?」
そう言って、席に着くアルミスに同意するように私たちも席に付くと「いただきます」をして、用意された大量の朝食に箸を付けた。今日用意されていた肉は、珍しいグリプスの肉だった。
塒の周辺にはいない獣魔だ、塒から北西に海を渡り1日飛ぶと、月に数回は噴火を繰り返す、活火山があったはずだ、グリプスはその辺りを塒にしているはずの獣魔だ。まさか、態々狩りにいったのだろうか?
「グリプスか……」
思考していたため無意識に声に出してしまった。
「グリプスって、鷲の頭に翼があってライオンの身体持った獣魔ですか?」
知恵の女神ミスティ様から、与えられた知識で思いついたらしい。私は、肯定するため頷いた。淑女のような美しい見た目に反して、口に無理矢理、肉の塊を押し込んでいたアルミスが、その肉を咀嚼し終えウィリアを撫でる。
「ウィリア様は物知りですわね!」
ウィリアは、えへへと声に出して笑って見せると小さく切り分けた肉を小さな口へと含んだ。アルミスとは偉い違いだ……。
アレだけあった肉も、料理もほぼ私とアルミスの腹に収まり、食後の紅茶を飲んでまったり寛いでいると、ドアを開け声をかけて来る者がいた。
「シュベル様。国王よりヒルデスが到着したと連絡がありました」
硬質な声で事務的に告げるベルン。
「わかった。他の準備は?」
「問題ありません。いつでも行けます」
その声に頷き立ち上がり、ウィリアの頭をワシワシ撫で朝の約束を再度確認する。
「約束、覚えているな?」
「はい。アルミス御姉様、ルリア御姉様と3人でこの部屋で休んで待ってますね」
復唱したウィリアに頷き、アルミスに頼むと部屋を後にした。リビングには、男竜たちが集合していた。リラックスはしているようだが、これからの事を考えいくつか注意をしておくことにした。
「お前たちに伝えておく。どんなに相手が理不尽なことをしたとしてもその場で力を使うことは許さない。それから、もしもの時は直ぐに塒へ空魔法を使い帰るんだ! いいな?」
言い終え、皆を見回す。その中で、不満そうな顔をしていたのはジオールとアルティだった。この2人は血の気が多い……! もう少し落ち着いてくれればいいのだが……。
「ジオール、アルティ。今回は国王と宰相が動くことになっているのは分っているだろう?」
名指しで問いかければ、渋々と頷いている。その様子に、呆れながらも笑いを浮かべると2人共ばつの悪そうな顔で視線を逸らした。
侍女が入室し、ハロウが来たことを伝える。顔に掌をパンパンと打ちつけ、引き締め直すと廊下へと移動した。
恭しく頭を下げたハロウに、手短に挨拶し終え、謁見の間へと進む。途中で宰相ノービスが合流したが歩みを止めることなくそのまま移動した。
謁見の間入ると、まだヒルデスは居なかった。先に、私たちを通したのだろう。5日前より国王の側にいる臣下と思われる人物が数名増えていた。
私たちが入室したことを目にした国王が、数名の臣下と思わしき人物たちを連れ立って歩いてくる。
「本日はご足労いただき感謝します」
堅苦しい言葉を使い、感謝を陳べる国王は、連れていた人物を紹介してくれた。
1人目は、元ギルド総本部の執行官として勤務していたと言う、キリクと言う老人で、ヒルデスの若い頃を良く知る人物だそうだ。
2人目は、現在冒険者ギルド総本部の副本部長をしている男で、マギと名乗った。
3人目は、スラムを統括していると言う女性で、ニーヤと名乗っていた。その女性と一緒にカレラも着ているらしい。
この3人を呼んだ理由を国王は話してくれた。
「キリク殿を呼んだ理由ですが、今回関与していると思われる執行官。名をバーリンと言うのですが……。前回の謁見のおり奴をヒルデスは連れて来ていました。今回も、必ず同行させているはずです。
これまでもバーリンに関しては何度も冒険者や住人から訴えがあったのです……。その度に冒険者ギルドの取り決めだ! などと言い逃れを繰り返されたり、煙に巻かれたりと……、芳しくない結果になっています。そのためそれを防ぐためキリク殿に来ていただきました」
「バーリンか……。私も注意しておくとしよう!!
私の返事に、国王は深く頷いた。
「お願いします」
「次に、マギについては、もうお分かりかと思いますが……。ヒルデスの悪行を知る人物です。彼は、今まで何度もヒルデスに注意を促しているようですが、改めるどころか増す一方だったようで、彼の方からも言うべきことがあると申告を受け、この場に同席させています」
マギは、目を瞑り頭を下げると謝罪した。
「気にするな! ところでひとつ聞きたい。ヒルデスはグリンヒルデとの繋がりがあったりするのか?」
グリンヒルデの名に、宰相ノービスとマギが反応した。マギも眉根を寄せ苦々しい顔で頷くと話してくれた。
「詳しくは分りません。数ヶ月に1度の頻度で、ギルド長にグリンヒルデの紋をつけた者が面会を求めていると、受付より報告が入っています。それが、ここ1年ほどは週に1度になっています。ちょうど同じ頃、ギルド長の独断で竜の討伐以来が、各ギルドに通達されています」
マギを静かに聞いていた国王も、その顔色を変えていた……。
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