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竜達の愛娘  作者: ao
第三章 ―冒険者ギルド・決着編―
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贄……と娘

 お読みいただきありがとうございます。評価・ブックマークを頂きありがとうございます。お時間ある時にでも、感想をいただければ嬉しいです。

/シュベル


 海で、ウィリアのはじめてを危うく奪いかけた私だったが、その後は平和そのものだった。流石、交易都市と言うべきだろう、露天に並ぶ珍しい品々や食品を見て周るだけで、あっと言う間にヒルデスとの約束の日の前日となっていた。


 王城内の控え室にて、宰相ノービスと国王が掴んだ情報を交換し共有している。そこに私も加わり彼らの話しを黙って聞いていた。


「ヒルデスですが、どうやらスラムの者に罪をなすりつけたようです」


 そう言ったのは、ハロウだった。その言葉に、国王も宰相も痛ましそうに目を瞑る。


「それで?」


 先を促せば、ハロウはその者について話してくれた。彼の娘が大病を患っており、かなりの金を必要としていたらしい。その男に取引を持ちかけたのだろう……、娘を助ける代わりに罪を自白するようにと……。どこまでも卑劣な男だ!!


「その娘ですが、どうやら神殿の治療を何度か受けたようですが、回復する見込みも無いようで……、高位神官か巫女でなければ治すのは難しいと判断されているようです」


 続けられた、ハロウの情報に私はウィリアに視線を向けた。もし、ウィリアの為にその命をかけねばならなくなったなら、とそう思ったのだ。

 だが、私の視線の意味を勘違いした宰相ノービスがウィリアへ質問する。


「ウィリア嬢、もしここに連れてくることができれば、その娘さんを治すことはできますか?」


 突然話しを振られたウィリアは、暫く考えていたが首を振り


「その子の病名か、症状はわかりますか?」


 逆に宰相へ、質問していた。

 病名や症状を聞いたところで、救える可能性があがるのだろうか? 私は治療魔法を使えない。

 治療魔法は、神聖魔法と呼ばれる種類の魔法だ、これには長年神殿で神に祈り仕えることで発言する魔法だと、私の記憶には残っている。


 宰相は、ウィリアの質問を受け、視線をハロウへと向けた。ひとつ頷いたハロウは、ウィリアへ視線を向け病名を告げた。


「心臓の動きが鈍る病気だと聞いております」


 ハロウの言葉を聞いたウィリアは、ぶつぶつと何かを呟いている。そして顔を上げたウィリアは、ニコっと笑い。


「大丈夫だと思います」


 その言葉に、その場にいた人族全てが、ウィリアへ期待の眼差しを向けていた……。その光景に、底知れない不安を覚えたのだ。


 私の頭にデイハの声が響いたの、ほぼ同時のことだった。


《シュベル様……》


《どうした?》


 デイハの顔に視線を向ければ、困惑した顔がそこにはあった。彼もまた私と同じように不安を感じたのかもしれない。


《ウィリア様のことですが、気をつけるべきかもしれません》


 その言葉に、鼓動がドクンと跳ねる、自分でも判るほど緊張し顔が強張っている。それを悟られないよう出来るだけ、平静を保つように見せデイハへ理由を問うた。


《どういう意味だ?》


《もし、本当にウィリア様が生まれつきの病を治せるのでしたら、人族はウィリア様を狙うでしょう……。神殿の上位にいる、巫女よりも優れていると考えられる可能性が高い! そうなれば……》


 デイハの言葉に、一層不安が増す……。人知を超えた力は、争いの種になり得るのだ! ウィリアを奪われるかもしれない、それが恐ろしい。無意識に膝においた手をきつく握り締めていた。


 そんな、私の手にひらりと花びらが舞のるようにひっそりと手が重ねられる。それを辿り横に座るウィリアを見れば、()()()()()()()()()()()と唇だけを動かし微笑んでくれた。


 重ねられた手が、緊張で握り締めていた指をゆっくりゆっくりほどいていく、強く握ったためか掌には爪の痕が残っていた。優しい指先が傷を癒すように爪の痕が残る掌を撫でてくれている。


《シュベル様? どうかされましたか?》


 心配するデイハの声に我に返る。そう言えば……と、会話の途中だったことを思い出し、慌てて返事をする。


《そうだな! 気をつけておくべきだな》


《はい。皆にも注意いたしましょう。それから、この話はここ以外ではしないよう人族にも伝えるべきかと》


《あぁ。わかった》


 デイハとの思念を終え、先程までウィリアの手が添えられていた、自身の手を見つめた。

 不思議と先程までの不安や緊張が解けて無くなっていることに気付いた。だが、それと同時に指先で撫でられた掌の感覚を思い出し、ひとり悶々とした……。


 気持ちを切り替えるため、出された紅茶をいっきに飲み干した私は、宰相ノービスと国王へ視線を向けデイハとの話しを切り出すことにした。


「ひとつ、こちらから娘を治療するに当って条件がある」


 条件とついた言葉を聞いた、宰相ノービスと国王は会話を止めこちらに向き直ると頷いた。


「治療したものが誰なのかは、伏せてもらいたい。それが条件だ……」


 2人は顔を見合わせると、ふっと表情を崩し笑みを浮かべる。


「伏せるのは、当然ではないですか!」


 国王が、笑みを湛えたまま親指立てた片手を腕ごと前へ突き出して見せた。その様子に、くすりと笑ったのはウィリアだった。何が面白かったのか私には理解できないかったが、その後もウィリアは楽しそうにくすくすと笑っていた。


「ハロウたちにも、戻り次第伝えます! 心配は不要です」


 安心させるよう、国王は付け加え発言してくれた。


「感謝する。その言葉のお陰で、ウィリアを守ることができる」


 本心からの言葉だった。それを聞いた、国王は照れ臭そうな顔をするとわざとらしく、立ち上がり右手を胸に沿え、左手を伸ばし街中で見かけた芸人のようなお辞儀をしてみせた。


 そんな、空気を割くようにドアがノックされ、侍女たちが入ってくる。その手には、沢山の料理がのった皿を載せていた。それを合図にするかのように昼食がはじまった。


 ウィリアや女竜たちの作る料理には、劣るものの生で食べていた頃を思い出せば十分なご馳走となった。相変らず、モリモリと無心で食べる元南の竜たちに国王はじめ侍女たちがあんぐりと口を開け驚いていたには笑った。


 食事が終わり、和やかに食後のお茶を飲んでいると、ハロウが戻ってきた。その後には数名の民間人の服装をした騎士と思しき人物たち、その後ろにはぐったりとした女の子をかかえる正装した騎士が立っていた。


「陛下、例の娘です」


 ハロウは手短に報告すると、娘を抱える騎士に奥に置かれたソファーを指し示しそこへ寝かせるよう伝えた。寝かされた娘は、ぐったりと身体を起す力も無いようで、その顔色黄土色に近い色合いをしていて悪い……。


 直ぐに、ウィリアは動き出した。国王がハロウを側に呼び耳打ちする。


「お前たち、直ぐにこの部屋より下がりなさい」


 ハロウの言葉に、騎士達は困惑の表情を見せたが、国王たちの視線を受け一礼すると退室していった。テーブルに置かれた紅茶を飲んみ一息ついた国王が、私からの条件をハロウへ伝えた。


「ハロウ」


「なんでございましょう? 陛下」


「先程決まったことだが、今回この娘を治したものは伏せることになった。この件を知る者全てに周知させよ」


 厳しい口調で伝えた国王に、ハロウは深く礼をすると部屋を後にする。改めて感謝の言葉を口にするため、口を開いた。


「感謝する」


 国王は首を横に振りに爽やかに微笑むと、ウィリアの方へと視線を移した。追従するように私も視線を向けその様子を見守った。

お試し企画として、書いてみました。

【お前なんかに、王太子妃ができるわけがない!!】

https://book1.adouzi.eu.org/n6789ft/


お時間よろしければ読んでみて下さい!!

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