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竜達の愛娘  作者: ao
第三章 ―冒険者ギルド・決着編―
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ハプニング……の海

 お読みいただきありがとうございます。評価・ブックマークを頂きありがとうございます。お時間ある時にでも、感想をいただければ嬉しいです。

/シュベル


  セルスティア王国は、海に面した交易都市として栄えている。他大陸の珍しい品物や書物も多く買い物するも、美しいコバルトブルーの海で海水浴を楽しむも良しとされている観光地である!! 

……と、宰相が教えてくれた。


 昨夜の夕飯時に、ヒルデスが罪人を連れてくるまでの間、離宮にのみ篭るのも勿体無い! と声があがり、買い物か、海か、どちらがいいかウィリアに聞いたところ、海に行きたいと言っていたことから、今日は、皆で海にきている。


 近くの服を売っている店の店主が言うには、海に入るために、みすぎ?なる服を着用するのがマナーとなっているらしい! そう言うことならと、私は人数分の水着を購入しようとしたのだが……。


「無駄遣いはだめです! 水着ならウィリアが作ります」


 そうウィリアに軽く叱られた。叱る姿もいいものだ……!! 両手首を細い腰に置くと肘を横にし、小さな身体を大きく見せるようにして眉を少しだけ上げ、見上げる姿だ!! 可愛くないわけがないのだ!!


 叱られているのに喜ぶ私に、困った顔でを浮かべ。


「もぅ、聞いてるの? シュベルお父様」


 そう言うと、ふすっと息を吐き出し、すぐに魔法で作り出した水着をウィリアは手渡してくれた。水着を受け取り海の側にある2個の掘っ立て小屋に入り、着替えることになった。

 着替えにかかる時間はどうしても、男のほうは早いものである。女たちが入った小屋の近くで出てくるのを待つ間、昨日の国王との話しを脳内で振り返る。


「やはり、仕立てあげてくるのでしょうね?」

 

 宰相は厳しい顔つきを崩すことなく、深い溜息を吐き出した。


「そうであろうな……。あのように王を小ばかにする市民がいるとは……。つくづく私は甘いのであろうな……」


 自嘲するように笑みを浮かべた国王に、ハロウが気遣い慰めるような声音で名を呼ぶ。


「ギルディス様……」


 奴の国王に対する言動は、国を営む王として、舐められていると言わざる得ない。だからこそ、彼の憤りは同じ王として理解できるところだ……。だが、その日会ったばかりの私が、彼に対し言葉をかけるのも憚られる雰囲気だった。


 宰相ノービスが、少し疲れたような顔をして、話しを切り出した。

「とりあえずですが……、ここで彼が何を仕掛けてくるのかいくら考えたところで分らない以上、こちらとしては――「……さま、シュベルお父様?」」


 思考に陥っていた私は、名を呼ばれ、ハッと思考を打ち切り意識を現実へと戻した。紺色のすくーる水着――ウィリアがそう呼んでいた――に身を包んだ彼女は、こちらを見つめ心配そうな顔をする。


 まだ、幼いとは分っていても、好いているウィリアの露になった白く長く美しい首から見える鎖骨は、実に美しく……ほんのり膨らんだ胸部を経て細く滑らかな曲線をかいた腰つき……細い四肢、あからさまに見るのはダメだと分っていても、ついつい視線を送ってしまうのは、男として仕方が無い――。


「しゅっ、シュベルお父様!! 鼻血が出てます!! もしかして熱中症とか?!」


 ウィリアの水着姿見惚れていて鼻から血が出ていることさえ気が付かなかった。慌てたように近付いて魔法:個人箱からハンカチーフを取り出すと鼻へ押し当てた。


「シュベルお父様、少しかがんで下さい……」


 プルプルと身体を震わせ、言うウィリアを見れば、爪先だけで立ち手を必死に伸ばしているではないか!! 私は急いでその場に屈んだ……、それが拙かった……。

 突然屈んだ私に対応仕切れなかったウィリアがそのまま、倒れこんできたのだ。それを支えようと手を伸ばしたその手は見事に彼女を支えた……、そう……僅かに膨らんだ胸部を……!!


「っ!!」


「いっ……!」


 叫びそうになったのを慌てて止めたかのように口を手で押さえるウィリア……。

 触れてはいけない部分に触れてしまった、その手を離せばウィリアは私に覆い被さるようにその身体を私の身体に預けるも慌てたように離れ、背中を見せると両膝を抱え座り込んでしまった。


「だっ、だだだだ、だいじないか?」


 真っ白になった頭で必死に考えた問いがこれだった。


 徐々に頭が活動をはじめる……。そうすると、今度は、ほんのり膨らんだ部分を触ってしまった罪悪感と男としての喜びが鬩ぎ合う……。


 私の問いに対してウィリアは、微かに頷いているようだった。狭間から抜け出し、まずは謝るべきだろう!! と考え、口を開こうとしたのと同時だった。


「シュっ……、シュベル様……。せっ、せ、責任取ってくれますよ……ね?」


 振り向いたウィリアは、耳まで赤くなりうるうるした瞳を向け両手で胸部を隠すような仕草で、恥ずかしそうに上擦った声でそう訴えた。責任とは……? ぁ……!!


「も、ももももちろんだっ!!」


 動揺したとはいえ、返事がこれでは……自分で言うのなんだがカッk――。


《シュベル様……。女性にはもっとスマートにお返事してください? 格好悪いです!》


 まさに、それを思っていたところだとは、言いたくない相手から思念が飛んできた!! イラッと来てつい、思念を飛ばしたベルンを睨んでしまった。


「まったく……。シュベル様は、もう少し大人の余裕を持つべきだわ!」


 皆全てを知っているような顔を向け、ルリアの言葉を皮切りに、扱き下ろしていく……。


「わしは、もう少しどーんと構えるべきじゃと思いますがのぅ? それに、触れて揉みもせんとは……! 将来が不安になるのぅ……」


 ジオールの言葉に、ベルンがうんうんと頷いている。


「もう少し、余裕を持てばいい男竜だと思うのですが……。今のはいただけないですね……」


 同じように頷いたカシが言う、少し憐れみを含んだ視線を私に向けた、デイハが……。


「シュベル様、これからです! 大丈夫です。その時が来れば上手くできますから!」


 と、励ましの言葉をくれた。プチッと何かが頭で弾けた。


「なんなのだ、皆して……私とて……、お、男なのだぞ! 好いた娘に布1枚しか着けていない状態で、触れれば動揺もする! なのにお前たちと来たら!! ジオール、お前だって、シシルに触れればこうなるだろうが! ベルン、お前もカシリアを想像してみろ! 同じだろう?」


 その言葉は海へとこだました。


 想像したのだろうジオールは少し赤くなると視線を逸らし。ベルンはあからさまに顔を背けた。ふんっと鼻を鳴らし、私はドスドスと足音を響かせ、砂浜を早足で海へと歩いたのだった。

 そんな、私を追うように皆がくすりと笑い着いてくる。ウィリアは、未だ唇を噛み視線を彷徨わせているようだが、その表情は恥ずかしさからくるものだと見てわかった。


 そのまま、海へ入ろうと足をつけてその冷たさに、慌ててウィリアの腕を掴み引き止める。竜たちは気にする様子もなく海へと入っていった。


「入らない方がいい。この温度では冷たすぎて病になるやもしれん!」


 まだ、視線を合わせるのは恥ずかしいが、そんなことを言っている余裕はなかったのだ。ウィリアの手を引き、水辺から離す。

 アルミスたちが用意してくれた、敷物の上へ座らせ、魔法:個人箱から取り出した上着をかけた。


「その、さっきはすまなかった」


 事故とはいえ、ウィリアの許可を得ず触れてしまったのだ……。謝るべきところだ。

 変わらず、視線を合わせようとはしなかったため、彼女が落ち着くまで、その場から離れるべきと判断して、海へ行こうと立ち上がり足を踏み出した私の耳に慌てたような声が聞こえた。


「いっ、いっちゃ……、やだ」


 素早く振り返りウィリアを見下ろすような体勢のまま尋ねた。


「一緒にいてもいいのだな?」


「うん」


 その声は、とても小さかった。だが、しっかりと耳には届いていた。人ひとり分位の間隔をあけ、ウィリアの横に腰を降ろす。

 静かに、波の音だけが聞こえている。たまに、入るルリアやアルティの「ひゃっほ~~」と言う声は、聞かないよう努力した。


 沈黙に耐えかねたのは、ウィリアの方だった。


「さっ、さっきのことは、謝らないでほしいの。事故だってわかってるの……、少し驚いただけ、そっ、それに触られるの嫌じゃなかったから……」


 俯き耳まで赤く染め話すウィリアを見つめ、聞いた言葉を反芻する。

 触られるの嫌じゃなかったから……触られるの嫌じゃなかった……。っ!! そっ、それはつまりいずれは、ゆっ、許してくれると言うことだ……!! 喜びを感じ、右手を握り締め「よしっ!」と言ってしまった。


 落ち着くまで何度か深呼吸を繰り返すと、ウィリアの()()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()に対し、本心から礼を言った。


「ありがとう。ウィリア」


 気分が高揚し、先程までの緊張が嘘のように、強張った身体がほぐれて行く。驚かせないよう、手を伸ばし頭の上で丸く結ばれた髪に触れた。ふわふわとした髪が手の動きに合わせ伸縮するさまを楽しんでいると、ウィリアとの間隔が狭くなった。


 目を瞠り動きを止めた。上目遣いに見上げてくると、えへへと可愛い声で笑う。


「シュベル様の手はいつもウィリアに優しいから……。好き」


「そうか……、私もウィリアに触れると安心するのだ。何故かは分らないが、心地よい気持ちになれる」


 ウィリアの前で虚勢をはる必要は無い……。王としての自分ではなく、ただの男として彼女とは話していたいと思ってしまう。彼女も同じように思ってくれるのであれば、それだけで満足だと思える。


「シュベル様……」


 名を呼ばれ、ウィリアに顔を向けた……。桜色の唇が近付き頬に優しく柔らかさを伝えると、耳に響いた「大好き」の言葉に、堪らずウィリアを引き寄せ抱きしめた。


「すまない。後でいくらでも謝る、だから少しだけこのままで……!!」


 ドクドクと早鐘のようになるふたつの鼓動が聞こえる、ウィリアも同じように緊張しているのだろうか? それとも……。波の音が消え、鼓動だけが支配する。

 腕の中にいるはずのウィリアの顔が、大人の女の顔に見えた。もっと、その顔を見ていたいと無意識に、顔にかかった髪を横に撫で付けると視線が絡み合った――。


《それ以上は、ダメですわ。シュベル様!》


 沖合いに居たはずの、アルミスから思念が届いた……。


《わっ、わかっている。これ以上は何もしない》


《それならよろしいのですが……。口付けしそうなほど近付いて、見詰め合っていらっしゃったので……ふっふふ》


 実に楽しそうな声で、思念を返すアルミスを恨めしく思うも、感謝した。これ以上視線を絡めていれば、自制は難しかっただろうと自覚したからだ。


「あー、その、すまなかった……。つい抱きしめたくなってしまった」


 私は、顔に笑みを貼り付けウィリアを離すとそう言った。ウィリアもホッとしたように肩に入った力を抜くと、照れ臭そうに笑い。


「謝らないで下さい! いっ、嫌じゃないです」


 いつもより少しだけ大人な笑顔を浮かべていた。


 今回は、アルミスのお陰でなんとか堪えられたのだろう……。ハァ~。なんでこう自制ができないのだろうか? ウィリアを大事にしたいと思っているのに、このザマとは……。これからますます女らしくなっていくだろう、いつまで耐えられるのだろうか……?


 海を眺め自己嫌悪に陥る私を余所に、竜達は楽しそうな声をあげ、大量の獲物を持って浜へあがってくるのだった。

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