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竜達の愛娘  作者: ao
第三章 ―冒険者ギルド・決着編―
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お菓子……と嘘

 お読みいただきありがとうございます。評価・ブックマークを頂きありがとうございます。お時間ある時にでも、感想をいただければ嬉しいです。

/シュベル


 デイハの側を離れようとしないウィリアを無理に側に戻すことはせず、そのまま任せることにした。現在国王と共に、別室にて紅茶を飲んでいる……。


 お菓子は、ウィリアの特製お菓子を出してやる! お菓子を摘んだ国王は、その美味しさに驚愕したように目を見開き、満足するまで口に運んで食べていた。


「そうだ! ウィスユリア嬢。頼みがあるのだが!」


 お菓子を食べ終えた国王がウィリアへそう切り出した。


「なんでしょうか?」


 可愛く小首を傾げ、国王を見上げる。


「この菓子を、私の妻にも食べさせたいのだ! 少しでいいから分けてもらえないだろうか?」


 どうやら彼は、愛妻家だったようだ……。奥方とは恋愛結婚だったらしく、その出会いから現在に至るまで、彼らの恋バナを私たちは冒険者ギルド総本部・ヒルデス到着まで聞かされることになった。


 場所を、謁見の間に移した私たちは、ヒルデスとはじめて相対す。傍若無人な態度を改めることなく、入室してきたヒルデスは、細い目を更に細めこちら見る、その顔が醜く笑ったのを見落とさなかった。

 

 奴は、そこそこの身長に、横に広い幅の体躯、長い赤い髪を後に流し、細い目に黒い瞳をした30代後半に見える男だった。


 国王が姿を見せると、ヒルデスはじめ数名の冒険者ギルドの職員と思しき者たちは、あからさまに膝を折る姿勢を取り、国王へ口上を陳べはじめる。


「国王陛下に拝謁かない、恐悦至極に存じます。本日はどのようなご用件でのお呼び出しでございましょうか?」


 国王の眉尻が僅かに上がり、その瞳には怒りの色が見え隠れしている。


「どのような用件か? お前たちの方が良くわかっているのではないのか?」


 ヒクヒクと口の端を、痙攣させ国王が、ヒルデスに尋ねる。彼は顔をあげ姿勢を戻すと、国王を見詰めその顔を変えることなく平然と言ってのけた。


「申し訳ございません。陛下! 私には何故、呼び出されたのか検討もつきません」


 国王の顔色が赤くなり、その眼にははっきりと怒気が篭った。その表情を見ていた、ヒルデスは身体をビクリと揺らしたが、なんとか堪えているように見えた。


「わからぬのなら、その手紙を読むがいい」


 告げると同時に、文官からヒルデスへ皇王からの手紙が渡される。その内容は、皇王がセルスティア王国・国王へ宛てた手紙、ヒルデスの名で出された手紙の写し、冒険者ギルドの張り紙が纏めて手渡されていた。


 奴は、当然のようにその内容を読み、薄笑いを浮かべたまま紙を元に戻す。額に何度か、右人さし指をトントン軽く当てる仕草のあと、国王へ口を開いた。


「アルシッドク皇国の皇王様に、返信を出したのは私ですが、あの時の報告では、元デュセイ支部の支部長が、貴族に高圧的な態度を受け、それに反論したところ冒険者ギルドの建物を破壊したと報告を受けたまでです」


 ……。ヒルデスと言う男は自分達に責任がないと言いたいのだろう……。私たちを罪人と決め付け、呼び出しておいてよく言えたものだ!!


 国王も、似た考えだったのだろう……。表情は真顔そのもので、あの主役のような身振りすら無く、平坦な声音でヒルデスを問いただしている。


「では、その報告した者の誤解だと、お前は言いたいのか?」


 薄ら笑いを浮かべた顔が縦に振られる。


「そのように私は考えております」


「では、その者を直ぐに捕らえ連れてくるのだ! 私が直々に取調べしよう!」


 国王の発言に対し、ヒルデスは瞬時に返答する。


「あの者は、冒険者ギルド総本部に対し誤解を与え、国との亀裂を入れかねない報告をしたため、既に罰を与え解雇しております。」


 国王は、男が語った事実とやらに、驚愕し声もでないようだ。

 ……!! 庇っているのだろうか? 否、この男は騙している……。薄ら笑いを浮かべた顔に、僅かだが汗が光っているのが国王からは見えずとも、私には見える!!


「お前は、王と謀るのか?」


 突然横に居た、私の発言にヒルデスは今まで浮かべていた薄ら笑いを消し、キッと睨みつけてくると両手を広げ、その口を開いた。


「謀る? 私が? この国の民である私に罪をなすりつけようというのか!? この……。っ!!」


 最後の言葉を言う前に、少し冷静さを取り戻したらしいヒルデスに、私は余裕の笑みを浮かべ更に彼を挑発する。


「謀っていないというのなら証拠が必要になるな!! お前の言う罪人を今すぐ連れてくるがいい……。だが、罰したのであれば運ぶ人員も必要であろう? あぁ、運ぶのに時間がかかるかもしれんな……。そんな無駄な時間は、国王にも私たちにも無い! 私の連れを連れて行け、数分もかからず往復出切るはずだ。……なんなら私が、竜体になり運んでも構わんぞ……?」


 言い終え、彼に向け更に笑みを深くして見せれば、ヒルデスは明らかな怒りの表情を私に向けると、国王へ向き直り自身の潔白の主張をはじめた。


「陛下! 私の話は事実でございます! この者は私を貶めるためこのような発言をするのです!」


 必死の形相で、訴えるヒルデス。

 私と彼の会話を聞いていた、国王は瞼をしっかりと閉じ暫く沈黙を保つとヒルデスへ真っ直ぐに視線を向けている。


「冒険者ギルド・総本部代表である、ヒルデス・シャベールに命じる! 誤解を与え国に亀裂を入れかけた、その罪人を連れてくるのだ!」


 否と言うことができない、勅命に対しヒルデスは異常なほど汗を掻き、動揺に瞳を激しく揺らしている。そんな、ヒルデスを見遣り私たちは、思念を交わす。


《これで詰んだようですのぅ》


 どこかスッキリとしたジオールの声がする。とそれに、反対するように硬質な声でベルンが否定した。


《まだですよ?》


《えぇ、まだですわね……。人族の王の前でアレだけシラを切ろうとしたんですよ? この程度では、詰んだことにはならないと思いますわ》


 アルミスの言い分が、正解だろう……。私も、この程度であの男が簡単に諦めるとは思えない。それに同意するように、カシ・デイハが思念を交わす。


《私もアルミスに同意します。この程度のことなら、罪人を作り上げて対処するのでは?》


《そうですな……。私も、カシ殿に同意見です》


《つかよ~。この男殺したらだめなのか?》


 アルティが、極論を言い出すとリュークが、止めに入る。


《アルティ……。その短絡的な思考をどうにかしないと、いつか彼女に振られますよ?》


《なっ!! なんで今、あいつ(リンカ)の話がでるんだ!》


 何を思い出したのか……。顔を赤く染め照れ隠しのように思念の声が大きくなるアルティに、デイハが諭すように助言する。


《アルティ……。リンカ殿を番に選ぶのならば、もう少し男としての器を大きく持たねば捨てられてしまうぞ?》


《デイハ様まで……》


 くすくすと楽しそうに笑ってしまった私たちに対しヒルデスは、憎悪を載せた視線を向けると、直ぐに薄ら笑いを浮かべ直す。


「分りました。その者をつれて参ります……。ですが、暫しの日数をいただけませんでしょうか?」


 ヒルデスは真っ直ぐに国王の目を見つめ、猶予を願いでる。


「何故だ?」


 理由を問う国王に、ヒルデスは俯きがちになり、その表情を隠すと


「実は……。罪人だと思い、かなり厳しい罰を与えてしまい。今は病床にいるのです……。ですから、動けるようになるまでの間、お時間を賜りたく……」


 国王は、諦めたように一度その瞳を閉じると、宰相ノービスへ視線を向けた。ノービスもまた、諦めたように頷いた。その様子を確認した、国王が私へ視線を向けると、申し訳無さそうな顔を見せ、ヒルデスへ、向き直る。


「わかった。時間を与える! ただし、その期日は切らせてもらう! 5日だ。それまでにその者が回復しないようであれば、王宮に運びこちらで神聖魔法である、治癒魔法を行使したのち尋問する! よいな?」


 国王の決断に、ヒルデスは薄ら笑いを浮かべると跪き感謝を陳べた。その後、踵を返す間際、こちらに視線を送りボソボソ呟くと謁見の間を出て行った。


 その後、国王の計らいで、王城の敷地の外れにある、離宮を借りることになった。

 この国へ数日滞在せざるを得ない状態になってしまった。仕方なく振り返れば、初めての国に滞在できることが嬉しいのか、ウィリアはニコニコと笑っていた。


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