国王・・・親書?
今日で、この作品の掲載をはじめて1ヵ月……。改めて、読者の皆様に感謝申し上げます!
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/シュベル
私たちは、セルスティア王国へ向うため旅の準備をしている。理由は、呼び出されたためだ。流石に看過できない内容に、宰相を連れてセルスティア王国にあるギルド総本部へと向うつもりだ。皇王も、是非にと言っていたからな。
今回、バスカたちも一緒に移動するため、宰相の案でセルスティア王国にある王都入り口まで竜体で、やつらを運ぶことになった。そのための籠を今、大急ぎで作っているところだ。
何故、このようなことをするのか? 宰相に聞いたところ、黒い笑みを浮かべた彼は、竜とはどの国にとっても脅威であり恐ろしいもののはず! そこを上手く利用しましょう。だそうだ……。
準備が整う10日後まで、私はウィリアの学校の様子を除き見ると言う、非常に大切な仕事に勤しむことにする。いつの間にか友人と呼べる女性徒が増えたようだ。それに混じって、男子生徒がいるんだが!!
目を疑った私はアルミスを問い詰めた。
「アルミス、これはどう言うことだ?」
私の問いに、ニコニコしていたアルミスが答える。
「ウィリア様にも、同い年の男性と知り合うことは必要です! シュベル様以外の男性と話しをして
はいけないなどとは、言えませんもの。ふふふ」
「だめだ! ウィリアに男を近づけさせるのはダメだ! また変なのがついたらどうするのだ!」
私は、両手で机を叩き立ち上がると渾身の力で叫び、その声は講師準備室に響き渡ったのだった。
慌てたように、扉が開き他の講師たちが入ってくる。
「何かあったのですか?」などと聞かれ、不機嫌な顔の私を余所に、アルミスが適当に言い訳を言うと上手く追い払った。
「シュベル様、落ち着いてくださいませ。別に、この男子生徒たちがウィリア様に、恋情を抱いているわけではないでしょう?」
そう言って、アルミスの指が鏡を指したその時だった、鏡の中の男子生徒が、ウィリアの手を取りその指先へ唇を触れさせていた。
何がどうなってそう言う状況になったのかは分らないが、私はアルミスに恨めしい目を向ける。アルミスは、私から視線を逸らすと、慌てたように準備室の扉から出て行く。
私は鏡を見つめ、先程のことを思い返しイライラとしていた。そこへ、アルミスが扉をあけ戻ってくる。
「ウィリア様にご事情を伺ったところ、先程の授業の内容で分らないところがあった男子生徒に、教えてあげただけだそうですわ。ほほほ」
わざとらしい笑い声をあげるアルミスに、無言でチラリと恨めしい目を向け直ぐに鏡に視線を戻す。軽く舌打ちしたい気分だ……。
「シュベル様……申し訳ありませんでした。どうか許しください」
頭を下げるアルミスの姿に、溜息を吐くと私は厳しい口調のままアルミスへ言葉を返す。
「もういい。お前は今後、見張りはしなくていい……塒で、わが子でも可愛がってろ!」
「そんなぁ~。シュベル様! 後生ですから~!」
情けない顔と声を晒して縋りついてきた彼女の手を私は弾き返し。無言で彼女の目を見つめた。
「今回だけだ! 次は無いと思え」
「はい!!」
私自身、この対処は、甘いとは分っているのだ……。それでもやる事はやってくれている事を考えると、仕方が無いと諦めるしかなかった。
それからの10日間は、ウィリアの学園の様子に、イライラしたり笑ったりと充実した日々を過ごした。
輸送用の籠が出来上がったと連絡が入る。後1週間ほどで、夏季休暇に入るウィリアをおいて行くなどもっての外と言う私の一言で、学長に直談判して、早めの夏季休暇をもぎ取ることに成功した私は、上機嫌で出発の準備を進めた。
その日の朝早くに、出発することになった。目指すはセルスティア王国、王都だ。私が持つ籠にウィリアと宰相を乗せ、他の者たちが、それぞれ10名ずつ籠に詰め込み乗せている。
楽しそうにはしゃいぐ声音でウィリアが私へ声をかける。
「シュベルお父様、凄いです!! 空がこんなに近いなんて! 」
初めて空を飛んだ、彼女の感想に私は胸を張りドヤ顔をすると、高度を少し上げた。
「そうだろ? 空は何者も拒まない!! 我ら竜種にとって、空こそ宝なのだ!」
「本当に凄いです! ウィリアこうして空を飛べるなんて思いませんでした!! シュベルお父様たちの見てる景色が見れて本当に、嬉しいです」
空に目を向けるウィリアの大人びてきた顔が、優しく微笑みを浮かべる。
馬車で、片道2週間と聞いていたが竜体で飛べば、その日の夕方には、セルスティア王国、王都に到着することができた。私たちの姿を見た、国の兵士が慌てて城門へ集まるさまなど、失笑を誘った。多くの、住民が悲鳴を上げ逃げ惑っている。
別に取って食ったりしないのだが……。
城下を旋回し速度を落とすと、門前付近の広場に籠を優しく下ろし、私たちも降り立つと、魔法:擬人化を使い人化する。多くの兵士の前で、竜が人化するさまを見せることになってしまったが、特に問題は感じられないので良しとする。
私たちが人化し終わった頃、恐る恐るといった具合に、剣を抜き包囲していた兵達が、徐々にその範囲を縮め、代表者と思わしき男が声を張り上げ、聞いてきた。
「セルスティア王国、王都に竜が何の用か?」
その声に答えたのは、宰相だった。これに関しては事前に打ち合わせをしておいたので問題ない。
「私は、アルシッドク皇国にて宰相をしております。ノービス・ニケ・バルフォンと申します。こちらに、アルシッドク皇国・皇王陛下であらせられます、シェルジル・グラシエ・フォン・アルシッドク様より、セルスティア王国・国王陛下ギルディス・アイル・セルスティア様への親書を預かってきております。お取次ぎをお願いいたします」
実に堂々とした物言いであった。宰相の言葉に、代表者は剣を収めるよう周りの兵士に指示を出し、こちらまで歩を進めると、片膝を着き頭を下げると
「ご無礼ひらにご容赦願います」
そう、謝罪の意を示した。
宰相は、それに頷き顔に、微かな微笑みを湛え
「お分かりいただき、感謝いたします。さっそくで申し訳ありませんが、国王陛下へお取次ぎをお願いできますでしょうか? それと、できれば城内に案内もお願いしたいのですが?」
彼が有能なのは知っていたが、これほど物事がスムーズに進むとは……いずれ、この者が引退した暁には是非、我領地に欲しいものだ。などと考えている間に準備が整ったようで、先程の兵士と共に、馬車へ乗り込み城へ移動する。
セルスティア王国の街並みは、木造の建物が多くどこか古風な雰囲気をかもし出している。街の住人も先程の騒ぎを忘れたかのように、日常を取り戻していた。そんな風景を見やる私へ、先程の兵士が声をかけてきた。
「その……あなた様は、竜なのですか?」
「あぁ。そうだ」
何気なく、私が答えると彼は、瞳をキラキラと少年のように輝かせ食い気味に質問をはじめた。
「では、何故人の姿などになれるのですか?」
「それは、竜神アルバス様より、魔法を賜ったからだ」
「と言うことは! 竜神アルバス様とお話された事があるのですか?」
「あぁ。あるぞ……」
根掘り葉掘りと、色々なことを質問してくる兵士に、私が少し呆れてきた頃、漸く馬車が王城に到着したと、御者台にのる他の兵士が伝えてきた。
ただ、馬車に乗っていただけなのに、やけに疲れた……そんな気分だった。
城の騎士たちが、慌しく動く中、入り口で杖をつき自身の身体を支える、髭の長い老人が私たちを待っていた。伸びすぎた眉のせいか顔を見ることはできない。宰相は彼の側に近づくと、軽く頭を下げた。
「お久しぶりですね。ハロウ様」
「おぉ! 久しぶりですぉ。ノービス殿」
ご老体特有の、僅かに高く掠れた声をあげたハロウは、しわしわになった両手で宰相の手をとると上下に振り、喜びを露にすると後にいた、私たちへ訝しむ視線を向けた。
視線に気付いた宰相が、私の横へ移動する。
「こちらは、アルシッドク皇国にて竜大公の称号をお持ちの、シュベル・クリム・ハーナス様です。
横にいらっしゃるのが、お嬢様のウィスユリア様。その右から、ジオール様・デイハ様・リューク様・カシ様・ベルン様・アルミス様・ルリア様となります」
ハロウは、頷き紹介を受けると、自身も背筋を伸ばし
「ワシは、このセルスティア王国・宰相の座に着かせていただいております。ハロウェイ・グリッシュ・ミナムと言う。皆様ようこそお越し下さいました」
そう口にして、目を眇め、頭を下げて見せた。その目は、未だに私たちを力量を測っているようではあったが……。
「それでは、こちらへ……。陛下が、お待ちになっていらっしゃるでな」
その言葉と共に、踵を返すと杖を使い器用に歩きはじめた。その歩き方が気になったであろう、ジオールが、ハロウへ声をかけた。
「ハロウェイ殿、失礼だとは思うんじゃが、足が不自由な理由を聞いてもよいかのぅ?」
ハロウは、長い髭を撫でつけるように、数度梳くとこちらを振り返ることなく
「この足は、グリンヒルデ王国がこの国へちょっかいを出すのを辞めさせに行った際、油断からポカをやらしかまして、失ってしまいました。ふぁふぁふぁふぁ」
ポカで済む話ではない……だが、今笑えると言うことはこの者なりにそれを受け入れているのだろうと、私は考えた。
下らない話しを聞かせてしまったと謝罪を口にする、ハロウに私たちは、気にしなくて言いと伝え、王が待つ謁見の間へと歩を進めるたのだった。




