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竜達の愛娘  作者: ao
第二章 ―冒険者ギルド編―
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警告・・・冒険者ギルド③

/シュベル


 文官が走り去った後の話しを少しだけ……。


 結局あの場では、冒険者を裁く事はできなかった。実際攻撃はしかけてきていたのだが、それも数名の冒険者のみだった。


 その者たちについては、問答無用で牢へと連れて行かれた。


 だが、それ以外の冒険者には、悪事と言うものを働いていなかったことが幸いしたというべきだろう。

 

 冒険者ギルドの総本部がある、セルスティア王国は、この国から早馬を飛ばして片道2週間はかかるらしい。あちらの反応次第で判断をするようだ。


 皇王たちには謝られたが、今回は特に竜たちに被害が合ったわけではない。そのことを考えれば……まぁ、妥当なところではないだろうか?


 ジオールたちには不満そうな顔をさせてしまったが、人族が関わった以上仕方が無い。ジオールたちの機嫌を直すため、ウィリア特製のドレイクステーキにしてくれるよう、頼むため思念を送る。


《ウィリア、頼みがあるんだ》


《はい、シュベル……さ、お父様?》


 弾んだウィリアの声がしたのだが、悩むような声に変化するのを私は感じた。つい、くすりと笑ってしまう。

《お父様は、つけなくて大丈夫だ》

 あの日、バレテ以来ウィリアとの思念で話す時に必ずこの言葉を交わすようになった。


《えへへ、それで頼みってなんですか?》


《それなんだが、今日の夕飯にドレイクステーキを頼みたいんだ》


《分りました! 腕に選りをかけて作りますね!》


《あぁ、頼む》


《うふふ。シュベル様のお願いですもの、頑張りますね!》


 あぁ、癒される。もう、ウィリアだけ居ればいいんじゃないか?と考え首を振る。


 そんな、私を余所に皇王と宰相に詰問を受ける、元ギルド長 ジィド・コルウェス。彼は自身はとても誠実な人柄らしく、老齢で偉丈夫な見た目とは、反する性格をしているようだ。


「何故、あんな者がギルド長などになったのだ!」


 皇王も相当に来ているらしい。言葉に悪意を感じる。問われたジィドは臆する様子も無く、皇王の問いに答えている。彼が語った、バスカの行いに皆が呆れたのは言うまでも無い事だった。

 

 その当時、副ギルド長だったバスカは、ギルド長になるため前ギルド長である、ジィドに不正ありと総本部へ訴え出たという。その不正の証拠は、自身が犯した不正をジィドのせいだと偽り、総本部の審議官と結託しジィドをギルド長の座から蹴落としたというものだった。


 ジィド本人は、違うと何度も総本部へ訴えでたのだが、審議官の妨害により真実は伝えられずギルドを去ることになったと語った。彼自身、腸煮えくり返る思いがあったのだろう。その手は硬く拳を握り締めていた。


「それでは、いくらこちらが魔道具の証拠を握っていたとしても、握り潰される可能性が大きいと言うことではありませんか?」


 ベルンの問いに、ジィドは辛そうに目を閉じて見せた。

「可能性は高いと思われます。私がギルドを追放されて3年しか経っておりません。あの審議官は未だにその席にいるでしょう……」


「不正に手を染めているのなら、未だにそれは辞めていないはず……ギルドの残骸から、書類を探し出すことになるのか?」


 リュークの言葉に、アルティが汗を垂れ流している。先程怒りにかまけて壊してしまったのだからそうなる気持ちもわかる。


「とりあえず、書類を捜すのはそちらに任せたい。直ぐに総本部から返事が来るわけでもないしな。我らも壁を急ぎ作らねばならん。今日はここまでにしよう」


「畏まりました」


 私の言葉に、宰相が了承する。皆が頷き解散となった。


 朝からのごたごたで、精神的に疲れていた私は、暫くの間塒でボーっとする。何も考えることをせず、自然の中にただ座っているだけの状態だ。


 風が吹きぬけ、私の髪を揺らす。乱れた髪を指で梳き戻すと、また風が私の髪を揺らしていく。まるで風と戯れているようだと思った私は、くすりと笑う。そんな、私の背後から抱きついて来る者が居た。


 まだ、育ちきれていない、身体を私の背に押し当て、腕を首から前へ回し、美しい指を絡めるように組んでいる。

 

 風が吹きぬけ、彼女の紫苑色の髪が、私の腕に纏わりつく。私はそっと彼女の髪をひと房救い上げ、唇を落とす。くすりと笑った彼女に、私は声をかける。


「何か面白いことがあったのか?」


「ふふっ」


 彼女の柔らかい声が、私の耳元を擽る。地にできた陰が、首を横に振るのが見えた。

 

 今この時間この世界は、私とウィリアだけのものなのかもしれないな。幸福が私を包んだ。しばしの沈黙を挟み、ウィリアの声が私を呼ぶ。


「シュベル様」


「ん?」


「ジオールお爺様たちに聞きました。冒険者の方に困ったことをされたと」


「あー。特にウィリアが気にすることは無いよ?」


「シュベル様は、そう言っていつもウィリアを除け者にするから嫌いです!」


 言葉とは裏腹に、私の首筋に顔を埋めてくるウィリアに、私は微笑ましくなる。


「そうか、それはすまなかった」


 素直に謝れば、フリフリと頭を振る。


「じゃぁ、今度はちゃんとウィリアも一緒に連れて行ってください。じゃないと、嫌いになりますから――」


 顔を上げたウィリアが、耳元で囁くように言うと私の前へ回るとその場に膝を立て座り、ぷぅと頬を膨らませて私を仰ぎ見ていた。私の手は、ウィリアの腕を掴むとそのまま引き寄せ抱きしめた。


「あぁ、約束しよう」


 彼女の耳に吐息がかかるほど、顔を近づけると甘い匂いが鼻腔を擽る。これ以上はまずいと自制するため、顔を離し、髪を梳くようになでた。


 誰だ! こんなに可愛い生き物を作り出したのは!! 心の中でそう叫んだ私の頭の中で『僕だよ!』そう声が響いた気がした。

 

 フッと思いついたことが、そのまま口を衝いて出てしまった。


「ウィリアはどうして、ここがわかったんだ?」


 そう聞けば、私が、1人になりたいときはここにいるとジオールに教えてもらったことを教えてくれた。


 きっと心配をかけていたのだろう。特に不安があるわけではないが、立て続けに起きる事柄に疲れていたのかもしれない。彼らの優しさに心が温まる気持ちになった。


 その後、屋敷へ戻った私とウィリアを、ニヤニヤした顔つきの竜たちが迎えたことは言うまでもないだろう――いつか仕返しすることを胸に深く刻んだ!!


 その日を境に、働くことを余儀なくされた。急ぎ、魔法の壁を作るため魔法:防柵(バリケード)を作り出し、魔石へ込め、魔道具とする作業を行う。


 出来上がった側から、ジオールたちが持って行き、地中へ埋め込んでいった。学校から帰ったウィリアも作業の手伝いをしてくれる。


 約10日間かけ行われた作業は、皆の協力のおかげで漸く終わりを迎えた。起動するための魔石は塒の広場に置かれることになった。全ての魔道具につけられた、竜語で記された文字を、起動の魔石に触れ思い浮かべることで、魔法の壁が立ち上がることになっている。


 その日の夕食でそれは起動された。青白い光を発した魔石に反応するように、領地に取り付けた魔道具がいっせいに光の壁を天高く伸ばすと、光の粒子を振りまき、見えなくなった。


 食事の後、ウィリアに試してもらったが、無事人族の出入りだけが出来なくなっていることが分り、私たちは安堵しのだった。


 それから、ひと月後のことである。皇王から思念が届き、冒険者ギルド総本部からの返事が届いたと知らせがあった。冒険者ギルド総本部代表の名で記された、羊皮紙を皇王から直接受け取ると、その内容に目を走らせる。


 内容は、バスカ及び、冒険者ギルド職員を、冒険者ギルド総本部への引渡し要求と取調べ等は、冒険者ギルド総本部が行うことなど、全て自分達がやるから、国は引っ込んでろといわんばかりの内容だった。また、冒険者ギルドの建物を壊した私たちも罪人として、引き渡すよう記されていた。


 呆れてものが言えないとはこう言うことだろう……。

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