表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜達の愛娘  作者: ao
第二章 ―冒険者ギルド編―
47/108

歴史・・・バレマシタ①

いつもお読みいただきありがとうございます。評価・ブックマークして頂いた方々に、重ね御礼申し上げます。もし、お時間ありましたら、作品への感想などをよろしくおねがします。

 そろそろ、解散かと言う流れになりはじめた時、演習場入り口の扉が開かれた。そこには、5人の従者を連れた、1人の男子学生が立っていた。学長と副学長が慌てるように、立ち上がり入り口へ向うため、歩を進めようと1歩踏み出した所でその男子生が口を開いた。


「そのままで良い! ニルク学長、サシム副学長」


 青年らしいその声の持ち主に言われ、学長達はその場にて彼が、来るのを待っていた。彼はゆっくりと歩き学長達の元へ来ると、目礼し


「ご歓談中申し訳ありません」


 私達の方に視線を向け謝罪した。私は手をあげることで、気にしていない事を伝える。彼は頷くと、学長に向き直り話をはじめた。


「ニルク学長に、ご相談があり勝手ではありますが、こちらに参りました」


 怪訝な顔をして学長は、彼に話の続きを聞く。


「相談ですか?」


 彼は頷くと、話しを続けた。


「はい、今年から導入される、魔力操作の授業についてです」


「それで?」


「はい、その魔力操作の授業内容を、私の祖国である。グリンヒルデ王国でも実地したいのです! よろしければ講師になられる方々にその許可を頂きたい! 

 そして、その方々を我が国へお招きしたいのです!! この国の魔法師団では既に導入されていると伺いました。ですからどうかご紹介願えないかと相談に参ったしだいです」


「なるほど」


 理解を示す学長に、彼は微笑みを浮かべている。


「我が国でも、魔力操作と言うものは聞いたことがありません! ですから是非、ご教授願いたいのです!」


 彼の言動を見る限り、グリンヒルデ王国のそれなりの貴族なのだろう。

  思考していた私は、ウィリアの視線に気付いた。その顔は不安ではなく、恐怖に染まっている。


《どうした?? ウィリア》


《あ……えっと、上手く言えないけど、グリンヒルデ王国の人に教えるのはダメだと思う……》


《理由を聞いていいか?》


 そこで、カシから思念が飛んできた。


《シュベル様、今よろしいですか?》


《すまん、少し待ってくれ》


《わかりました》


《あぁ》


 ウィリアを含めた竜、全員に思念を飛ばす。


《それで、なんでグリンヒルデ王国の人に教えるのはダメなんだ?》


 男竜達の目つきが瞬時に真剣なものにかわる。


《……うんとね。この間シュベルお父様と街で買い物した時、教会でお祈りしたでしょう?》


《あぁ、覚えているよ》


《教会でお祈りしてたら、創造神カルミティアル様の声が聞こえて、お話したの》


 そうか、あの時私が、アルバス様やルティア様と話していた間、ウィリアも主神カルミティアル様と話していたのか……


《それで、創造神カルミティアル様は何か神託をなさったのか?》


 ウィリアは首を横に振り、話しを続けた。


《お話しの中で、ウィリアね。デイハ叔父さま達が、苦しんでるの聞いてたから、何かウィリアができる事が無いかずっと考えてて、でも叔父さま達がどういう風に暮らしてたのか知らないと何もできないから、だから知りたくて、カルミティアル様に教えて欲しいってお願いしたの》


《そうか……》


《そしたらね、カルミティアル様が、夜まで待ってて、って言ったの。夢の中でカルミティアル様とミスティ様が、ウィリアにこの世界の歴史を教えてくれたの。

 この皇国の歩んできた歴史も、その他の国の歴史も――その中には、グリンヒルデ王国の歴史もあるの。それがまるで、見てきたみたいにウィリアには見えるの》


 私だけでは無いだろう、皆の顔を見れば分る。この思念を聞いている全員が、息を飲みウィリアの話しを聞いている。


《そのグリンヒルデ王国の歴史とは?》


 恐る恐ると言った声音で、ベルンがウィリアに聞いた。


《他国を侵略する事で、大きくなっている国。デイハ叔父さま達が居た元々の国はもう無くて、今はグリンヒルデ王国が治めてる》


 その言葉の後に、ウィリアが語った内容はこうだ。

 今から、40年前の事だそうだ。グリンヒルデ王国が、一方的に元デスピア王国(現デスピア領)に戦争を仕掛け、半年で降伏。その後、元デスピア王国の街、農村から税金を、それまでの10倍となる金額まで引き上げたそうだ。


 グリンヒルデ王国から来た、デスピア領主(グリンヒルデ王国・第3王弟)は、税金が払えない住民は、竜を狩りその死骸を献上すれば免税すると、デスピア領内の住民に公言したそうだ。

 その煽りを食らったのが、デイハ達南の竜だった。


 自身が語った内容に俯き、肩を落とすウィリアの様子に、私はそっと、ウィリアを抱きしめた。

 ウィリアの語った内容に、私は憤りを覚えた。デイハ達を苦しめた国が何故、この数十年で、竜を狩るようになったのか――それが漸く理解できた。


《そうなると、魔力操作を教える訳にはいかんのぅ》


《あぁ、我らはこの国の皇王が、宣誓しているし、我らを受け入れた事への返礼みたいなものだからな、我らが同胞を殺す奴等の国に教える義理は無いな》


 そうして、私達の結論はあっさりと決まった。

 

 その後カシから、思念が入り未だ、学長と話しをしている彼について教えてくれた。

 先程の生徒の名前は、コーラル・ハイド・フォン・グリンヒルデ。現在16歳、グリンヒルデの第2王子で、第1王子と双子らしい。グリンヒルデの王は、未だ後継者を決めかねているようで、功を立てたいコーラルは、魔力操作を教える講師を自国に招き、国に貢献する事で、後継者に指名してもらうつもりなのだろう。とカシと話していた、講師が言っていたようだ。


 話し込んでいた私の元へ、学長の事務官が耳打ちする。


「こちらを……」


 私の手には、魔石が握らされている。彼女をチラリと見れば、目配せすると椅子を運んで行った。

 私の元を離れた事務官が、学長の側にいくつかの椅子を置き、彼らが座ると学長へハンカチと共に隠した小さな魔石を手渡すのが見えた。その所作は、後から見ていなければ、気付かないだろうと思えるほど自然だった。


《聞こえますか? 竜大公様》


 私の頭に、学長の声が届いた。どうやらあの魔石には魔法:応答(コール)が入れられているらしい。


《あぁ》


《その、彼についてなのですが……》


 彼はとても、キマヅそうな声音で話しを切り出した。


《あぁ、やつの素性などは全部わかっている。魔力操作についての解答なら、却下だ》


 私はそれだけ伝え、ウィリアが作ってくれたフィナンシェを頬張った。

 学長は、彼の名を呼んだ。


「コーラル・ハイド・フォン・グリンヒルデ様、申し訳ございません。今回の特別授業で行った内容について、自国に持ち帰る事はできません。また、講師を紹介することも難しいと思われます」


 コーラルが、勢い良く立ち上がると学長に詰め寄った。


「なぜ、そのような事を言うのですか? 我が国と皇国は、親しい間柄ではありませんか!」


 学長は、彼を真面目な顔で見詰めると


「確かに、国同士は親しい……ですが、今回の魔力操作の授業においては、自国だろうが他国だろうが他言はできないようにしております。それと、講師の方についてはこちらも皇王様のお客様としてお招きしておりますので……」


 彼は、一度落ち着くため、呼吸を整えると椅子に座り学長をみた。


「そうですか……それでは、紹介していただく事はできませんね。ですが、授業内容について、他言できないとはどういう事かお聞きしてもいいですか?」


 学長は、頭をポリポリ掻くと、彼の周りに視線をやり


「今回の特別授業では、魔道具を使って、誓約書を作るからです。誓約書の内容は、授業内容・講師の顔・名前などその授業時間の全てを、学園を1歩でもでれば忘れるからです」


「なっ!!」


 愕然と、学長を見詰める彼は、それ以上何かを私達の前で語る事はなかった。彼が、演習場を後にしたのは、直ぐの事だった。

 私達も、帰ると伝え。空魔法を使い、学長室へと移動した。学長室のソファーへ勝手に座る。


《ここは、屋敷ではありませんよ? シュベル様》


 ベルンの眼が、色惚けがと言わんばかりに私に向けられている。


《学長から、これを渡されていたのでな》


 そう言って、見せたのは、先程事務官より渡された、魔道具だ。


《これは、魔石ですか?》


《あぁ、魔法:応答が籠められている》


《と、言う事は、何かこの後お話があると言う事ですか?》


《そうだろうな……私は、呼ばれた側なのでな。詳しい話は聞いてからだ》


 私の袖をひっぱりるウィリアの方を見る


「シュベルお父様、ウィリアは夕飯の支度があるので帰りたいのですが……」


 困り顔のウィリアがそこにいた。窓の外を見れば日が沈みはじめている。今から帰り支度をしても、いつもの時間には間に合わないだろう。こんな時間まで引っ張るつもりは無かった。


「ウィリア、すまないな。遅くなってしまった」


「いいえ。大丈夫です……それで、帰ってもいいですか?」


「あぁ、構わないよ。カシ、頼む」


「はい。それでは、ウィリア様、屋敷まで帰りましょう」


 カシは、ウィリアの側まで移動すると手を差し出した。ウィリアがその手を握るのを確認すると空魔法を使い屋敷へ送り届けてくれた。

 私は、直ぐにカシへ思念を飛ばす。


《カシ、カシリアとルリアに、ウィリアの護衛をさせておいてくれ。それから、デイハ達に塒の周りの見回り強化を頼んでおいて欲しい。その後、此方へ戻ってきてくれ》


《かしこまりました》


 そうして、会話を終了する。それと同時に、ベルンへ指示を出す事にした。


《ベルン、馬車まで移動して、見られないように魔法:個人箱(アイテムボックス)に入れてきてくれ。帰ると言った手前、馬車があると余計な憶測を呼ぶ》


《はっ》


 返事と共に、ベルンの姿が消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ