回答・・・コウシ?③
③です。
/シュベル
色々と買い物を済ませ、ウィリアと2人手を繋ぎ、街並を見て回る。今、私達がいるのは、市街地から少しだけ離れた教会の前だ。この国というより、この世界の人族は、世界を作り出した神々に感謝し奉っている。
以前神殿の巫女がウィリアを治してくれたのだが、神殿は教会の管理を行う機関であり、そこに信奉者が訪ねる事は無い。基本的には、教会で祈り、感謝を捧げる仕組みになっている。
今回、私達が訪ねた教会は、この王都において、かなり高位の位置にあるらしい、案内されたその場所は、神々に祈りを捧げる場なのに、豪奢な飾りや色とりどりのステンドグラスを用いた窓などが見て取れた。
これでは落ち着いて祈りなど捧げられないだろうに……と私はその様子に呆れ思った。ウィリアも微妙な顔をしている事から、私とあまり変わらない事を考えているらしい。それでも、案内してくれたシスターに、礼を言うと、神々の像の前で膝を折り、手を組み祈りを捧げる事にした。
[竜神アルバス様、我ら竜族にウィリアを与えて下さり感謝いたします。この子が居る事で我らは心安らかに日々を過ごす事ができております。どうか、ウィリアの心が変わらず私に在りつづけますように――]
無茶な祈りだったろうか?などと考えたのだが、まぁ、そんな頻繁に神々が聞いているわけではないと思い直していた時に、頭の中に声が響いた。
『久しいな、王竜シュベル……じゃなかったな、竜大公シュベル・クリム・ハーナスだったな。元気そうでなりよりだ』
突然の声に、私の顔は沸騰する湯を沸かす炎のように熱くなるのを感じた。
『ぉ……お久しぶりでございます。竜神アルバス様』
なんとか、羞恥心を押し隠し声をかけてきた神へ言葉を返した。
『どうだ? 人との交流は上手くいっているか?』
『はい、なんとか…あの子が居てくれたからこそ、我らは人の優しさを感じる事ができるようになりました』
ウィリアの顔を思いだし、口角が上がる。
『そうか、それならお前達にあの子を預けたかいがあったのだな。ところで、話は変わるが、さっきお前が言っていた、ウィリアの心が変わらず私に在りつづけますようにって願いなんだが……もしかして、お前、あの子に惚れたのか?』
アルバス様の言葉を聞き、私の心臓は早鐘の様に加速し、体中が熱くなった。
『ぁ……そっ……それは……』
『ぁぁ、すまん……、無粋だったな……。その、なんだ……きっ、聞かなかった事にしておくから心配するな!』
気まずそうな声音で、アルバス様はそう仰って下さった。そこへ、別の神の声が乱入する。
『あら、そこは詳しくお聞きしたいわ』
『おい、ルティアやめてやれ……』
アルバス様が呼んだルティア様という名の女神は、確か、慈愛・木を司る神だ。我ら竜族は、竜神アルバス様以外の神々への信仰心はほぼないのだが……。まさかこの場にアルバス様以外の神々が声をかけてくださるとは思いもしなかった。
『お初におめもじかない、恐悦至極にぞんじま『あら、そういう堅苦しい事はいいのよ?ふふ、それで、ウィスユリアちゃんとはどこまでいってるのかしら?』
挨拶に被せ、女神ルティア様は私に、ウィリアとの進展具合を聞いてくる……どこまでって…まだウィリアは11歳だぞ……そんな不埒な事はできないってわかっているだろう? 私は試されているのだろうか? いや、女神がそんな事をするはずが無い……そう思うのだが――。
『うふふ、可愛らしいわね。初恋かしら……うふふ』
ルティア様は、とても楽しそうに弾んだ声で、仰った。
『……確かに……今まで私は、誰かにこれほど恋しい気持ちを持った事はございません……初恋……
と言われれば、そうるかと――』
『あらあら、いいわ~いいわね~そういう、素直な男の子は好きよ。初々しいわ。うふふっ』
『はぁ、もういい加減やめてやれ。シュベルが熱に晒した鉄みたいな顔してるだろうが!』
『もぅ』
アルバス様の声に、不服そうな声を出すルティア様。そんな2神を余所に、私は必死に冷静になろうともがいていた。
『シュベル、いいか? 良く聞くんだ。これから先、きっとお前達は、色々あるだろう。幸せだと思える時間だけでは無い事は、理解しているな? それでも、お前が不安になり、もしウィスユリアの心が信じられなくなったその時は、絶対に彼女に、その思いを伝えろ。必ずそうするんだ! いいな?』
アルバス様は、真剣な声音で私に、神託の様な助言?を伝えてくれた。
『はい。お約束いたします』
私は、アルバス様に感謝の気持ちを込め約束した。
そうして、2神との会話は終わりを告げた。私が目を開け、立ち上がりウィリアの方を見ると、彼女も祈りを終えたところだった。ウィリアと視線が交わると互いに照れたような笑みを向け合った。手を繋ぎ祈りの間を後にしようと扉へ向うって歩き出した。
ウィリアがどんな願いをしたのか気になり、聞いてみた。
「どんな、願いをしたの?」
彼女は、私を見て前を向くとニヤリと笑い。
「ヒミツです」
そう言うと、開いている手の人差し指を立てると、唇にあてた。その仕草が可愛らしくてつい、彼女を抱き上げ、頬にキスをしてしまった。そんな私達に、入り口近くにいたシスターは、咳払いをすると扉を開けてくれた。私達は、恥ずかしくなり早足で教会を後にしたのだった。
日も沈みはじめた街並みをウィリアと2人で歩いて帰る。私は、最高に幸せな気分で屋敷に戻ったのだった。
それから、5日後には注文していた制服とドレスが届いた。鞄や実技用の制服などもあの女店主の店に注文していたため、一緒に送ってくれたようだった、ありがたいことだ。リビングにいた、ジオールが、ウィリアに制服姿を見せて欲しいと頼み。ウィリアも快諾するとさっそく着替えにいった。
ソファーで寛ぎ、ウィリアが戻ってくるのを待っている間、魔法師団の元へ行ったジオールの報告を聞いていた。魔法師団の団長を務める男は、グレースと名乗り、彼はとても意欲的に魔力操作の訓練に取り組むと言ってくれたそうだ。他の団員も、それに追従するようにジオール達の説明を食い入るように聞いていらしい。
「それでは、魔法師団の方はなんとかなりそうなんだな?」
「そうですのぅ。現段階と言ってもまだ1度しか講義はしておらんが、まぁ概ねそうじゃな」
「苦労をかけるな」
労いの言葉をかけると、ジオールが豪快に笑った。
そこへ、着替え終わったウィリアが恥ずかしそうに顔だけをリビング入り口から覗かせていた。私達の視線を受けて、壁の方へ顔をさっと引っ込むと、数拍置いて、その姿を見せてくれた。
制服は、黒に近いグレーのシャツに水色のリボンを着け、白色のベストで、胸の下辺りで締まった白のブレザーを上に羽織っていた。胸には、校章なのか、金と銀で刺繍された、杖と剣その周りに、リーフが入っている。襟元と袖には、銀と用いたボタンと銀とグレーで交互に線の刺繍が施されていた。
下は、フレアスカートになっており、丈は短い。色は、白にグレーのチェック柄だ。足元は、膝上5センチまでの長さの白の靴下を履いている。ずり落ちないよう、上の部分で靴下に通されたグレーのリボンを結ぶようになっているようだった。
とても、ウィリアに似合う制服だ……。だが、スカートの丈が気に入らない!! 膝の上から10センチほど上なのだ……。これでは階段などを昇るだけで見えてしまうではないか……。
そんな、私と同じ感想をもったジオールがぽつりと零す
「丈が短かすぎやせんかのぅ……」
私は、同意するように頷く。デイハやベルン・カシもその言葉に頷いていた。
私達の反応が微妙だったからか、ウィリアがもじもじとスカートを握り
「に……似合いませんか?」
悲しい顔でそう言った。私たちは慌てて、彼女を褒めた。
「とても似合う! 似合うんじゃが…そのちぃっとスカートの丈が短すぎやせんかの?」
勇者ジオールが、ウィリアを褒め、その後、そのスカートの丈について不満を表した。
するとウィリアは、何を思ったのかスカートを捲った。その瞬間、私を含め、男竜は慌てふためき、必死に視線をそらしたり、目を覆ったりしていた。見たい欲求と、見てはいけない自制の狭間で揺れているようだった。
「あらあら、中はズボンになっているのですね」
おっとりした、アルミスの声が聞こえた私は目を押さえていた両手を開きウィリアをみると、スカートの中に別の生地でズボンが作られていた(スカパンだったのである。)ホッとしたような残念なような、そんな気持ちになった。
皆を見ていた、ルリアがぼそっと呟いた。
「最低です……」
その言葉は、私の心をスパーンと言う効果音と共に切り裂いた。皆の様子を見ていたウィリアは楽しそうにクスクス笑うと「着替えてきますね」そう言い残し部屋へ戻って行った。




