回答・・・コウシ?①
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/シュベル
ウィリアの入試が終わって、2週間程経っていた。私は、ジオール・ベルン・アルミスと一緒に、現在、王城の応接室にて、皇王・宰相・学長・副学長と共に、紅茶を飲んでいる。副学長と名乗った男は、サシム・ノーベエル、40台後半の見た目、赤い髪、黒の瞳をしていた。
紅茶をひと口のみ、ニルク学長が話しを切り出した。
「それで、前回のお話についてですが、当学園で話し合いをした結果、誠に申し訳ありませんが竜大公様が学園に通われる事は、許可できないと言う結果になりました」
私は、予想外の回答に、持っていたカップをその場で落としてしまった。
「なぜだ?」
思っていたよりも低い声が喉から出てしまう。
ニルク学長は、視線を彷徨わせた後、私に視線を向け
「その……今まで皇族であらせられる、お子様方を御預かりしてまいりましたが、えー、前例が無いと……」
歯切れの悪い言い方をした。前例がないというだけで許可できないだと!!
「あらあら、では前例を失くせば、講師の皆様は賛成してくださるのですわね? ふふふっ」
アルミスも納得できていないようで、笑顔を向けつつ反論する。
「前例がない以上……」
「それは、どういう意味でしょうか? まさか、貴方方は、我等が王に前例が無いと言うだけの主張で、学園に来・る・なとおっしゃっているのですか?」
再び同じ言葉を繰り返すニルク学長に、ベルンが冷めた眼差しを向け凄む。
「まぁ、待つのじゃ、ベルンよ!」
止めに入るジオールに、助け舟を出されたとニルク学長とサシム副学長は安堵の色を見せた。
「確かに、そなたの言うとおり、そうとも取れるがな、学園側はこう言いたいのじゃ、我等がでるまでもなく、ウィリア様に集る虫から完璧に守護できるとな……」
「なるほど! 流石、ジオール様ですね」
ベルンもアルミスも頷き、ジオールを賞賛している。一方で、学長と副学長は、顔色が悪くなっていた。宰相は、あちゃ~っと言う顔で、額を指で押さえ、皇王は、俯いていた。
明らかに、竜達は勘違いをしていたのだが、それに気付いていても、訂正する声はあがらなかった。
ニルク学長に、詳しい話を聞く。
「そなた達が、私の代わりに、ウィリアを守ってくれることはわかった。きっと私の娘を完璧に守ってくれるのだろう? だがな、四六時中、講師と言えども側に居られればウィリアが休息できる時間が得られなくなるのではないか?」
「そっ、それは……」
顔色の悪いまま、学長は俯いた。引き継ぐように、副学長が言う。
「それについては問題ありません。私たち講師は、竜大公様のご令嬢以外にも生徒がおります。ですので、ご令嬢だけと四六時中側に居る事はでないのです」
片眉がピクリと跳ね上がる、憤りを感じ副学長を見据えた。
「それは、どう言う事だ?? ウィリアを1人にしてどうやって完璧に守ると言うのか?」
「ご令嬢だけが生徒でない以上、ご令嬢自身に自分の身を守っていただく必要があります」
副学長は、当然だと言う顔で私たちを見ていた。
「なんだと! お前達は先ほど、我らが王に対し学園に入れる事はできないと言い、挙句、ウィリア様自身が自分の身を守れと言うのか?」
ジオールが憤慨し、テーブルに拳を叩きつけた、重厚なテーブルがパキパキっと音を立て亀裂が入っていた。彼の目は、対面に座る4人を見据えていた。
「ですが、これは前例がありませんので……」
また、前例か!! と怒りを露にする。
「先程も申しましたが、【前例がない】ばかりですのね。あなた方は!! これだから人族は……」
アルミスの冷めた言葉に、宰相と皇王が焦るように顔を上げた。
学長と副学長へ視線を向けベルンが可能性の話しを切り出した。
「ひとつ、お伺いいたしますが、もしウィリア様が、学園内にて不埒な暴行などを受けた場合、どう責任をお取くださるんでしょうか?」
「そんな事、当学園ではこれまで、1度も起こったことがありません! それに、このデュセイはこの国でも1、2を争う程、犯罪率は低いのですよ? もし――などと言う事はありえない!」
答えたのは、副学長の方だった。その口調は強く、断言するものだった。
ジオールが顔を顰め、言葉を口にする。
「ウィリア様は、このデュセイで奴隷商に売られかけたのだ……売った相手は貴族だったぞ? 抵抗したウィリア様に、暴行し意識がなくなったところで、手足の自由を奪い金にしようとしたのじゃ!! お前はそれでも、本当にありえないと断言できるのか? わしはのぅ、あの子が可愛いのじゃ……命をかけてでも守ってやりたいと思っておるしの」
皇王と宰相が苦い顔をする。初めて聞いた話に学園側は無言になる。
ウィリアを学園に通わせる事は難しいと言わざるを得ない。きっと、悲しむだろうな――。
ハァ~。と溜息を吐き出し。
「前例がない。と言う理由だけで、ウィリアの側に居ることも許されないのならば、仕方が無いな。ウィリアに、謝って学園に通うことを取りやめにするしかあるまい。私は、親しい付き合いのある数人の人族以外、人族全員が信用できないのだ。今後の付き合いも改める事にする」
私が、そう発言すれば、皇王と宰相が、立ち上がりお待ちください!と私を止める。
「確かに、皆様のご心配は私も理解できます。それに学園側の言い分に納得できないお気持ちも。そして、ウィリア様が、この国の貴族により奴隷にされかけたのも事実です。
竜大公のご令嬢であるウィリア様を守ることもまた、重要なことであると国は理解しております。ですが学園に通われる事を楽しみにしていらっしゃるウィリア様に今更、大人の都合だけで学園に通うなと言うのも酷い話しではありませんか?」
宰相は、穏やかな声音で私達を説得する。
「しかしだな……ウィリアの事が心配なのだ。我らは人族といっても皇族以外では、そなたとに西門のガラド・セルの家族しか知らんのだ。学園の講師がウィリアを害しないと言えるのか? ウィリアが、以前のように数ヶ月も心を病むような事がないと言えるのか?」
ウィリアを守りたい……。それがゆえに不安なのだと訴える。そんな声に宰相は真摯な言葉で答えてくれた。
「そう、断言する事は私にはできません。それは人族ですら分らないことです。打開策というわけではありませんが、危険が迫れば知らせる魔道具を、ウィリア様の制服に取り付け、もし『学園内でウィリア様に対し危害が及ぶような起こった場合、無許可で皆様の学園施設へ立ち入りができる許可を学園側に用意していただく』と言うのはどうでしょうか?」
確かに、それならば、大手を振って例の魔道具を渡すことができる。それに事が起これば無許可でウィリアの元へ行ける。虫の駆除は大切だしな……私としても、少しは安心できる。
「お待ちください! そのように勝手に決められましても……こちらにも順序がございます!」
副学長が、反対しようと声をあげる。
「では、他に何かいい案があるのですか?竜大公様方を納得させられるだけの案をお持ちならばお伺いいたしましょう? 別に私としては、もし何かがあった場合、あなた方講師全てが、その命を差し出すと言うことにしてもいいのですよ?」
目を眇め、宰相はここで合意できないならば、その命が対価だとはっきり副学長に告げた。
彼は言葉に詰まり、結局この話は、魔道具使用と無許可での学園施設立ち入りの資格得ることで話が付いた。私としては、常に一緒に居られないのは、不服なのだが――。
「さて、それでは話は纏まりましたね」
紅茶のカップを持ち上げ、宰相が話しを終わらせ、そういえばと続ける。
「先程おっしゃっていましたが、入試で虫がつきそうになったとは、どう言う事でしょうか?」
そう、話しを蒸し返した。
アルミスが説明するため口を開いた
「えぇ。実は、入試の日、私達は中へ入れませんでしたの。なので予め用意しておりました魔道具をウィリア様に付けて頂いていたのですが。受付の後、不埒にもウィリア様の肩に触れた者が居たのですわ。それに、ウィリア様が、教室に行った際も、周りの男子生達が「付き合いたい」とか「あの白魚の様な肌……たまらない」などと言っておりましたの――腕を叩き折、視界を塞ぎたくなりましたわ!! うふふ」
ありのままを伝えていた。最後のアルミスの言葉に、学長と副学長は顔を引き攣らせていた。
話しをぶった切るように私は、気になっていたことを聞く
「ところで、ウィリアは合格したのだろう?」
今更だと思うが、しっかり聞いておきたい。ウィリアの制服用の魔道具も必要だから!
「はい。歴代最高得点での合格となりました。ですから、入園の式典前に一度、学長の執務室へお越しいただきたい。それと講師に聞いたのですが、お嬢様は、属性を全て使えると仰ったそうですが本当ですか?」
「あぁ、ウィリアは3歳から魔法の練習を真面目にやっていたからな。そこらの人族とは違う」
ドヤ顔で学長たちをみる。
「3歳から……ですか?」
驚いた顔をした、学長と副学長……直ぐに立ち直った副学長が食い気味に聞いてきた。
「どういった練習をされているのですか?」
「なんだ、興味でもあるのか?」
「はい! とても」
まぁ、教えてやるのもいいだろう、ウィリアに教えたように魔力操作の訓練程度なら問題ないだろ。
「魔力操作の訓練だ」
「魔力操作ですか?」
どうやら、人族は魔力操作の方法を知らないようだ。宰相まで食いついてきた、あれはきっちりやれば魔力量も多少は伸びるのだが――。
「あぁ、知らないのか?」
「お教え願えますか?」
「そうだな、口で説明するより実際に感じた方が早いだろう、宰相と副学長は私の身体に手を当ててみろ」
そう言うと、2人共立ち上がり私の肩へと手を置いた。私は、3人でひとつの身体だと意識して身体に魔力を巡らせる、肩から宰相と副学長の身体へ魔力を循環するように巡らせた。
ふぅ~と息を吐き2人を仰ぎ見る
「どうだ? わかったか?」
そう聞けば、彼らは自分の手を見ていた。何度も開いたり閉じたりした後、顔を上げると興奮したように私に更なる質問を投げた。
「シュベル様、お願いがございます!」
そう切り出したのは、宰相の方だった。
「なんだ?」
「どうか、皇国の魔法師団にこの、魔力操作訓練を取り入れるべく、講師をしていただけませんでしょうか?」
そう言うのは、まず皇王と相談するんじゃないのか?と言いたいが、皇王もうんうんと頷いている為反対ではないらしい。この国の実権を握っているのは宰相かもしれない――。
「そうだな、この国には世話になっているからな、教える位なら構わん。だがな、我らが教えた魔力操作を使い、この国が余所に戦争をふっかけるなんて事をされては困るぞ?」
「そんな無益な事はいたしません!」
「宣誓できるか?」
私は皇王に視線を向けその真意を確かめる。彼は私の視線を真摯に受け止め頷く
「お約束いたします」
その言葉を受け、直ぐさま宰相が動いた。宣誓書なる3枚書き上げ、私と皇王の署名を3枚全てに書かせると、1枚は私に、もう1枚は国が、3枚目は、後日神殿の巫女に渡すと言っていた。
ここまでの覚悟があるのなら、問題ないだろうと安堵する。
「あの、そのお話当学園でもお願いできないでしょうか?」
そう言い出したのは、学長の方だった。
「だが、我らは学園に入るのはだめなのだろう?」
そう返せば、彼は必死の形相で語る
「大丈夫です!講師として来て下されば問題はありません!もちろん、お嬢様以外の生徒の面倒も見ていただくことにはなりますが、それで問題がないのであれば、是非当学園で講師を引き受けていただきたいのです!」
「そうか……すまんがどちらも少し時間が欲しい。そう待たせる事は無いと思うが、人選もかねて、ここに居る者以外の幹部とも話し合いをしたいからな」
そう伝えると、2人から「どうぞ、よろしくお願いします」と深く頭を下げられた。




