ウィスユリア
次回は数年後という感じで書きたいとおもいます。
評価・ブックマークをして下さった方ありがとうございます。また、それ以外にこの小説を読んでいただいた方々に心からの感謝を♪
ジオール襲来から、数日経ち赤子の世話も落ち着いて来た頃、頭の中で竜神アルバス様の声が響いた。
『聞こえるか? 王竜シュベル・クリム・ハーナス』
「っ! はい」
『その後、調子はどうだ?』
「はっ、何も問題ございません!」
『そうか! ところで赤子の名前は決まったか?』
「赤子のな……名前でございますかっ?」
『まっ、まさか……つけてないのか?』
「――ハイ」
『ェ……? ぁ、そうか』
「モウシワケアリマセン」
『いや、良いのだ。時間がある時にでも考えてやってくれ』
「はい、そういたします」
『うむ、前回伝えたと思うが、アルシッドク皇国の皇王が、実はお前に会いたいと言っているそうだ……。可能ならば会いに行ってやって欲しいが、どうだ?』
「それは……」
言い淀む、シュベル。
今まで竜が受けてきた数々を考えれば、簡単に人族に会おうとは思うはずもない事ぐらい容易く想像できた。やはり、竜達にとって人族と接すると言う事は、難しいのだろうな。そう竜神アルバスは独りごちる。
『そうだな、あまり無理強いするつもりはないが、だが、いずれその赤子が育ち人の世界に連れて行く必要がでてくるだろう、そうなった時、今一度考えると良い』
「ご配慮感謝いたします。竜神アルバス様」
『うむ。これからも、赤子を大切に育てよ』
「はっ」
『では、頼んだぞ』
姿が見えるわけではないが、シュベルは感謝と敬意を示すため片膝を折り、左手を胸に当て頭を下げた。竜神アルバスとの会話を終え、私は立ち上がり、神から伝えられた名付けについて問いかける為、皆に声をかける。
「皆聞け! 先程竜神アルバス様より神託が下った」
各々好きにしていた、竜達が首を擡げ私に注目する。
「竜神アルバス様は、おっしゃった。赤子に名前を付けよと……皆の意見が聞きたい、どんな名前が良いか考え教えて欲しい!」
周りに居た者達は、それぞれ近くに居た者たちと話し合う。その様子を確認し赤子を見やる。
私も考えるとするか!! そうだな、肌は白く頬はほんのり赤いか――ワイレーンの花の様な色合いだな!! ワイレーンか、うーん――他に何かないか?せっかく名付けするのだからもっと彼女に似合う名前が良いだろう。
ワイレーンの花は、赤の花糸、花びらは白く、野草でありとても小さな花ではあるのだが、咲く季節ともなれば草原一面を埋め尽くすように咲く花である。
ワイレーンと名付けるのはまずいな!! 瞳の色とは違う。濃い紫色の瞳、紫苑の髪か――ウィスユリア!!
ウィスユリアは、紫を主にした色合いの小さな花をいくつもつけた花である、山間の崖などに咲き、苛酷な環境でも、とても凛々しいその姿を思い浮かべ私は独り納得するように頷いた。
「皆、どうだ? 赤子の名前で良いものはあったか?」
そう、問いかければ皆は口々に名前の候補をあげる。
・アイリーン
・リリス
・カイラ
・ミスティ
・マリア
・ルティア
・マリスティア
・ヘルサリア
など候補が並んでいく、神の名を頂くのもいいものであるが、どれもやはりしっくりとは来ない。そこでシュベルも自身が考えた名を挙げてみる。
「ウィスユリアは、どうだ?」
皆も、自分が考えた名が一番ではないかと考えているようで、反応は芳しくはなかったが小さな声があがる。「キャッキャ~アァ~」嬉しそうな声で、籠の中の赤子が反応した。
もしや我らの言葉を理解し、どれがいいのか伝えているのか?だがまだ、知性の低い赤子だ、たまたまの可能性の方が高いが……
試しに名前の候補も告げ、一番反応があったものを名づけてやれば良いのではないか? 思いついた事を皆に話し試してみることにした。
「今出た、名前の中で赤子がより多く反応した名をこの赤子の名とするのはどうであろうか?」
「それは良い考えですね」
アルミス、ベルン、カシ、その他が同意するように頷いたのを確認した私は、籠から、赤子を抱き上げ、皆に見えるようにした。
「では、はじめよう、今からそなたの名前を決める。そなたが気に入った名前があったら反応を示して欲しい」
「う~」
「まずは、アイリーン。そなたの愛らしい姿と声を表した名だ、どうだ、気に入ったか?」
「うぅ~」
ソコソコ喜んでいるようである。
「ふむ、次はリリス。ルリスが考えた名だ。一文字違いで姉妹のようだという事らしい。どうだ?」
「うっ」
どこか嫌そうな顔をした。
「次はカイラ、意味はないらしいが、どうだ?」
「ぶぅー」
明らかに嫌そうである。
「次はミスティ、これは知恵の女神と言われる方の御名をお借りしている」
「あーぁー」
少し嬉しそうな声音を出した。
「マリア、この世界の人族達がよく子供に付ける名だそうだ」
「……」
反応はなかったようだ…嫌だったのか?
「次は、ルティア、これも慈愛と平和の女神の御名をお借りしている」
「キャ~あ~~」
ふむ、喜んでいるようだ!あの神は美神で知られているからだろうか?
「マリスティア、マリアを捩った名前だな」
「うにゃ~」
微妙な反応である。
「ヘルサリア、これは前竜王の妻であった、ヘルサリア様の御名をお借りしている」
「あぅ~ぃ」
これも、微妙な感覚らしい
「最後、ウィスユリア、これは過酷な環境でもとても美しい紫の小さな花弁をつける花でな、その姿はとても凛々しくみえるのだ」
「キャッキャ~あぃ~」
両手をバタバタ動かし、とても嬉しそうな反応を返した。
「決まったようだな!」
そう告げて、辺りを見回すと皆頷いていた。私は赤子を高く抱き上げると、皆に見せる。
「この赤子の名は、ウィスユリアとする。今日これより、ウィスユリアと呼ぶように!!」
おぉ~! ウィスユリア様!!と皆が口々に喜びを表している。その中で、私はそっと赤子を降ろし、彼女の顔を見詰め、ウィスユリアとなった赤子に告げる。
「ウィスユリア、お前の名だ。あの花のように凛々しく強く美しく育つと良い」
「あ~ぃ~」
まるで、返事のような言葉を発し、ウィスユリアは私の、頬へとその小さな手を伸ばす。その手を開いている方の手で優しく握るとウィスユリアはニッコリ笑った。その姿に微笑みを深くするのであった。
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/ アルバス
水盆を覗いていた、竜神アルバスは、ふぅ~と息を吐き、気付かない内に入っていた身体の力を抜いた。
「やっと名前が決まったか」
「あれ~~~~? アルバスじゃーん、何やってるの~?」
そう声をかけたのは、商売と物造を司る男神、ルルシュである。見た目は、15歳位で、ひょろっとした体躯、アルバスの神官服ににたような、服を着ている。髪の色は濃い茶色で瞳の色は空を映したかのような澄んだ青をしている。
声をかけられたアルバスは頭をかきながら
「あぁ、いや、ちょっと気になる事があってな地上をみていた」
「ふ~ん」
「お前は、どうしてここに?」
「あぁ、えっとね、ほらこの前の女の子? の事が気になってね~」
「この前のって言うと、カルミティアル様が連れて来た彼女の事か?」
「そうそう!」
「気になるとは?」
「あぁ、ほら、僕たちってさそうそう加護とか与えないわけでしょ? それなのに今回は、カルミティアル様の行いが……。あれで加護を与える事になったわけじゃない? だから気になっただけだよ」
そう言って、水盆を覗くルルシュ
まぁ、確かに我ら神が、加護を与えるなどそうそう無い事であり、気になるのも分かるが、まだ赤子である彼女に何かができるわけではないと、分かっていても気にはなるか……そう考え、共に水盆を覗いた。
水盆の中では、新しい名を付けられた、彼女ウィスユリアが嬉しそうに笑い、彼女の周りを竜達(人化した)が囲んでいる。
「上手くやってるみたいだね。ウィスユリアかぁ!! あの花確かに綺麗だよね!!」
「あぁ、彼女に良く似合っている」
「そうだね!」
「今度、どう成長するのか楽しみだな」
「うん、楽しみだなぁ」
「あぁ」
本当に楽しそうな笑顔のルルシュが姿を消していく。それと同じく、アルバスの姿も消えていった。その場から、二神の姿が消え、水盆だけが残されていた。
誤字修正です。




