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竜達の愛娘  作者: ao
第二章 ―冒険者ギルド編―
39/108

試験・・・カホゴ②

/シュベル


 黒い大人達が、何かを企んでいることなど知らないウィリアは、はじめての学園にワクワクしていた。

 こんな所に通えるなら頑張らないと……。


 シュベル様もジオールお爺様もアルミスお姉様も、私を励ます為に、結果は気にしなくて良いと言ってくださったけれど、皆に恥は描かせられないわ。

 そんな可愛い事をきっと考えているはずだ!これは私の妄想なのだが……


 危機感を覚えたシュベルの話しを聞いた、幹部達は入試に際しウィリアに危険が及ばないよう、彼女に魔道具を持たせたのである(無許可だが)。その魔道具に籠められた魔法は、今現在のウィリア様子見ることができ、声を聞くことが出来るようになっていた。


 まず、ウィリアの頭にある髪飾りには、声を拾う魔法:聞き耳(ヒアード)(周りの声を離れた者へ届ける魔法である)を籠めた魔石をはめ込んだものだ。


 2つ、ウィリアの胸元に付いたリボンを止める飾りには、魔法:視覚共有(ビーシェイル)(遠く離れた場所に居る者が、鏡などの媒体を用いて、この魔法を発動すれば着けている者の様子を伺い知ることが出来るのである)を籠めた魔石を飾りにしたものだった。


 そんな事を知らない、彼女は、受付で、受験番号の書いてある木札を受け取ると、左にある案内板に移動した。試験を受ける教室を確認していると、知らない男の子(うじ虫)が話しかけていた。

「そこの、美しいお嬢さん?何かお困りですか?」


 自分の事だと思わないウィリアは、華麗にスルーすると会場目指して歩き出した。慌てたその男の子は、ウィリアを追いかけ、肩を掴むと


「失礼、美しい人!! 淑女の貴方に触れた僕を許していただきたい」

「はぁ? えっと、それで御用はなんですか?」

「君が余りにも美しすぎて! つい声をかけてしまったのです。どうぞ、美しい貴方のお名前をお教えいただけませんか?」


 その男の子は、大げさな身振り左足を後ろに下げ、膝を曲げるとプリエの形を取った。


「えっと、ごめんなさい。実は、お父様から、知らない男の人に名前を聞かれたりしても教えてはいけないと言われていまので、私はこれで……」


 会釈をしたらしい動きの後、素気無く断ると試験会場に向って歩きはじめた。


【流石、ウィリア様ですのぅ。きっちり言いつけを守っていらっしゃる】

【当然だ!私の可愛いウィリアが、言いつけを守らないわけないだろう?】

【ふふ…彼の事は後で調べておきますわね…】


 黒い大人達の会話である……。


 試験会場は、どうやら2階らしく階段が鏡に写った。ウィリアの歩く先には、まばらにだが会場へ向う子供たちの姿もあった。階段を昇りきったらしいウィリアは右へ曲がると、3つ目のドアの前に立ち、試験の会場となる教室へと入ったようだった。


 既に、半数以上の子供達がいるらしく、ウィリアが入ると男の子達(虫ども)の視線を集めていた。それには、気付いたらしいウィリアは、少し恥ずかしそうに俯いたのか、手が魔道具にかかり暫く鏡が黒く何も写さなくなった。

 その最中も、髪飾りの魔道具は仕事をしていた。ボソボソと聞こえる声がシュベル達の耳に届く。


「おぉ~可愛い」

「あの子、何処の子?知ってるか?」

「あんな子と付き合えたら最高だよな~」

「俺!後で声かける」

「みてみろよ、凄く素敵だ。あの、白魚の様な肌、たまらない!!」


 など、シュベルの危機感を煽る声が暫く続いた。


【危険ですわね~全員落ちてしまえばよろしいのに! ふふふ】

【あぁ、屠りたい……】

【今すぐ目を潰したくなりますのぅ……】

【あらあら、ダメですわよお2人共! まずはたっぷり、お仕置きですわ】


 何処までも黒い大人達である。


 木札を確認したウィリアは、自分の席に着いたようだった。最近町で買った本を持参していたのか、鞄から取り出し読みはじめた。

 ポツリとウィリアの呟きが聞こえる。


「ん~。今日のお夕飯何が良いかな? 昨日はカレーの日だったから。

 そうだ! デイハ叔父様達が取ってきて下さった、魚のフライにしようかな? タルタルソースは皆好きみたいだったし?

 はぁ~。緊張する、試験ダメだったらどうしよう? きっとお父様たちに失望されちゃう。それだけは嫌!」


 やはり、緊張していたらしいウィリアの呟きに、私は思念を送る事にした。


《ウィリア、会場には着いた?》


「ふふっ心配性な……お父様」


 そう、耳に声が聞こえた。


《はい、シュベル様。無事着きました。まだ開始ではないようですが、半分ぐらい受験する子達が居ますよ》

《そうか、試験の事だが本当に、結果がどうなろうと気にしなくて良いから、受ける事を楽しんでおいで!! 私達は、ウィリアが戻ってくるのを馬車で待っているから、心配しなくていい》


「頑張らなきゃ!」


《はい、シュベル様》


 ウィリアの返事と共に、試験開始5分前の鐘が鳴った。ざわついていた教室内が、静かになり皆が席について行く様子が見えた。


《じゃぁ、そろそろ時間になるだろうから切るよ。頑張り過ぎないようにしなさい》

《ありがとうございます》


 話し終えると、ウィリアも本を鞄に直し、羽ペンとインクを出すと、ふぅーっと息を吐き出し「よし」と声を発した。その後2度目の鐘がなり、教室担当の講師が入室してきた。

 問題用紙を1人ひとりに配ると、説明をはじめた。


「本日、皆さんの試験担当をします、皇立ジェシュタル魔法学園、講師のヒューズ・エルシスです。先程配った羊皮紙は、5枚ずつありますか? 手元の羊皮紙を確認して下さい。無い人は、手を挙げて下さい」

 ウィリアも羊皮紙を数えている…しっかり5枚あったようだ。


「居ないようですね、それでははじめてもらいます。

 終了時間は2時間後を予定していますが、先に終わった方で、自信のある方は手を挙げ羊皮紙を私に渡して、教室を出る事を許可します。

 ただし、早くできたからと言って、点数が増えるわけではありませんので、勘違いしないようにして下さい。

 教室を出たら、第3演習場に向って下さい。

 そこで、魔法実技のテストがありますので受けて下さい。よろしいですか? 今の説明でわからない方はいませんか?」


 講師は、教室内を見回し手を挙げているものが居ないのを確認する「はじめ!」と短くはっきりとした声で告げた。


 その声に、ウィリアも羊皮紙を表にして、試験問題を解きはじめた。羽ペンの走る音だけが響いていた。講師はたまに見回り、教卓で本を読んでいるようだった。ウィリアはと言うと、詰まることなく羊皮紙を埋めて行っているようだった。


 テストが始まり、50分程で問題を解き終わったウィリアは、再度確認するように何度も羊皮紙を見直し、本当に小さな声で「うん」と呟くと、手を挙げたようだった。


 講師はそれに気付くと、足音を立てることなくウィリアの席まで来ると、羊皮紙を確認しウィリアを見て頷いた。それを見た彼女は立ち上がったようで、鏡から見える高さが変わった。


 そのまま、できるだけ静かに移動し扉を開け、第3演習場に向っている。階段を降り、中庭に出るとそのまま突っ切り、右に曲がった。そこから少し歩き、辿りついた大きな扉に、第3演習場と書かれていた。

 演習場の右手にいる、受付の者に話かけているようだった。


「こんにちわ。筆記試験を終えて実技試験を受けにきました。どうしたらいいでしょうか?」


 受付に座っていた女性が、丁寧に説明する。


「こんにちわ、まずは木札を貰っていいですか?」

「はい」


 返事をすると、木札を彼女に渡した。受け取った彼女は、番号を確認して机の上にある羊皮紙を何枚かめくると、ペンで書き込みを行い


「ウィスユリア・ハーナスさんですね?」

「はい」

「では、これより中に入ってもらいます。中には実技担当の講師がいますので、不安にならなくて大丈夫ですよ。

 まずは、受験番号と自分の名前と得意属性を伝えて下さい。その後は、的を狙って全力で、魔法を放って下さいね。

 使ってもらう魔法は、得意な基本属性の初期のものでお願いします」


 そう言って、笑った女性にお礼を告げウィリアは、演習場へと入っていった。

 中には、男性の講師が2名、女性の講師が1名いるようだった。


「651番、ウィスユリア・ハーナスです。得意属性は特にありません。よろしくおねがいします」


 講師の男性が、訝しそうな顔をして聞いている


「得意な属性がないとはどういうことかな?」

「えっと、全部使えるから特に? 苦手なものがないだけですが、どれか言わないと試験受けれませんか?」


 不安になったのか、最後の方の声が尻すぼみになっていった。


「いや、それなら問題ないが、全属性使えるのか……」

「本当に?」

「ありえないだろう……」


 などと、講師陣が言っていた。


「彼女が入学すればわかることよ。ウィスユリア・ハーナスさん、こちらへ立って下さい」


 女性の講師に呼ばれ、ウィリアはそちらへ向かって行く。的は丸いボールを天井から吊り下げただけのものだった。


「じゃぁ、自分のタイミングで魔法を放ってね。失敗しても何度でも挑戦できるから大丈夫よ」

「はい。じゃ、いきます」


 それだけ言うと、ウィリアの指に風弾(ウィンドストライク)が出来上がる。指を前に倒すと風弾は的に飛んで行き、そのまま轟音を立てて的を破壊した。


 無詠唱の魔法攻撃(初期)に、口を開け呆然とする講師陣。次の指示が無い事に彼女は何を思ったのか、今度は火弾(ファイアストライク)を放つ、またもや轟音を立て的は破壊された。更に、今度は水弾(アクアストライク)を指の先に作り出す。そこで、慌てたように我に返った講師の1人が止めに入った。


「ウィスユリア・ハーナスさん、もういい、もう十分だ」

「はい」


 返事をすると、ウィリアは指先の水弾を消した。


「うん、今日の試験はこれで終わりだ。気をつけて帰りなさい」

「はい。ありがとうございました」


 丁寧にお辞儀をして、演習場を後にするとそのまま、門へ向って歩いているようだった。


【流石、わが孫じゃ! くくくっ……あの顔を見たかの?】

【本当に、素晴らしいですわ!世界屈指といえどもウィリア様には叶いませんわね】

【あぁ、ウィリアほどの天才は居ない】

【まったくですのぅ! ウィリア様は天才じゃて】

【えぇ、そうですわ!】


 馬車の中では、真っ黒な大人達が口々にウィリアを誉めそやしていたのだった。

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