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竜達の愛娘  作者: ao
第一章 ―王都編―
31/108

家出?……誘拐③

③です

/シュベル


 意識の無いウィリアをアルミスが抱き上げ、扉へと移動する。


「きさまら、私の娘になにをした……」


 低く唸るような声が、私の喉を通りでていた。私の問いに男達が答える事は無かった。熱い…怒りで視界が赤く染まる。これほどの怒りは初めてだ――全身がマグマのように熱い。私の中の誰かが頭の中で言葉を紡ぐ、今すぐ惨めに、残忍に、醜態をさらすように、屠ってやる!!


 窓ガラスに映るシュベルの金の瞳が赤に変わっている。

 それを見たデイハは、慌てたようにシュベルに近づき頬を叩いた。デイハに叩かれ、一瞬呆けるも直ぐにキッと睨み付け牙を剥く


「デイハ! 邪魔をするなぁぁぁ」


 デイハを、殴り飛ばす。殴られたデイハは直ぐに立ち上がると、私の身体を押さえつけるように拘束する。


「その感情に囚われてはなりません! シュベル様!」


 必死の形相で、懇願するデイハに私はなおも牙を剥く。


「何を言うか、ウィリアのあの姿をみてお前は許せるのか? こやつらは、万死に値する! 親や子だけでなくその血筋を辿り、泣き叫ぼうが、逃れ隠れようが、全てを殺してやる……」


「落ち着かれませ! シュベル様! 復讐に囚われればあなたは我らと同じ過ちを犯す事になるのですよ!」


「それがなんだ? 泣いたウィリアを、殴り、拘束し、無理矢理、奴隷としたのだ!!」


「復讐に囚われた竜は、復讐を終えれば、その場で灰となって消えてしまうのですよ?」


「構わん! 今ここでこやつらを屠れれば! それで構わん」


 デイハが、今度は渾身の力を籠め私を殴りつけた。殴られた私は、弾き飛ばされアルミスの側へ倒れこむ。そのままデイハに胸倉を掴まれ起され…アルミスに抱かれ眠るウィリアへ視線を移す


「シュベル様、ウィリア様をおひとりにするのですか? 貴方はこの子の父親ではないのですか?」

「あぁ、父だ! この子は私の愛しい娘だ!! 1人になど……」


 デイハは更に、きつい口調で説得する。


「あなたが居なくなれば、この子は1人になるのだぞ! 竜に育てられた赤子を、人族はきっと受け入れない!! これより更に過酷な生活を送る事になるかもしれないのだ! 一時(いっとき)の感情で、ウィリア様を不幸にする事こそが愚かな行為なのだと何故わからないのですか?」


 ウィリアの姿が私の目に映る、私の脳裏に、おいて行かないでと泣くウィリアの姿が浮かぶ…。私が居なくなればこの子は――きっと、北が守ってくれるとそう思う。だが、私は自身の手でこの子を守りたい! あんな風に泣かせたくない!この子を抱きしめていたい!! 身体を襲った熱がスーッと引くのを感じた。


 胸倉を掴んだままの腕を、そっと叩きもう大丈夫だと伝えた。デイハも私に視線を戻し、瞳の色が戻っているのを確認すると、腕を離し何度も小刻みに頷いていた。


《怒りに我を忘れ取り乱して、すまなかった。デイハ殿感謝する》


 デイハ、安堵した表情を見せると次の瞬間、厳しい顔になり男達を睨みつけていた。


《この館にいる全員を捕らえろ!! 盟約に従い皇王に引き渡し人族に裁かせる》


 そう伝えると、周りの者達が足早に男に近づき魔法で拘束していった。


 部屋の外にいる人族も全て男女関係なく拘束していくのを見守り、皇王へと連絡を入れた。彼は、既に状況を把握していたようだった。直ぐに兵を派遣すると伝えてくれた。


 室内で拘束された男に、近づきその胸倉を掴むと脅すような声を敢えて出し


「あの娘の首の枷を外せ……」


 男は目を泳がせ――最後には諦め頷いた。声を出せるよう魔法を解きどうすればいいか問うと解除する為の呪文が必要であると言うので、ウィリアを抱いたまま渋るアルミスを男の前に立たせ解除させた。


 その後、その男から詳しい事情を聞く。

 やはりと言うか、馬車に無理矢理連れ込まれたウィリアは暴れたそうだ。そんな彼女を、グリュンデリッヒ伯爵(クズ)とその息子(ゲス)が殴りつけ意識を失ったところで、拘束したらしい。その後、馬車でそのまま、ここに辿りつき、販売契約などを済ませその金を用意させている所で、私達が乗り込んだという事だった。


「そうそう! もうひとつ、聞きたいことがある。嘘偽りを言えば、こうなると思え?」


 そう言って、近くのソファーを風魔法で両断してみせる。視界にも入れたくないほど憎らしい男達を見据え重要な事を確認する。


「あの子に、不埒な事はしてないよなぁ??」


 じろりと睨みを利かせ、男達にそう問えば、涙目になり何度も激しく上下に首を振った。その様子に嘘は無いようだと、貞操は守られていたと安堵した。


 制圧も終わり、全ての者が玄関ホールへと集められている。その中には、それなりの身分がありそうな男達が3割ほどおり……、その他残りが奴隷として娼館で売られた女達だった。その女達の中にいた1人をルリアが髪を掴み引き摺り私達の前へ放り出す。女はみすぼらしい格好をしている……。


 どうしたのか?とルリアを見れば、その女のスカートの中へと手をやると布の袋を取り出し袋を開いて見せた。そこには、ウィリアの髪留めやネックレス・イヤリング・硬貨入れも入っていた。


 袋に入っていた、ウィリアの髪留めや装飾品は、竜の鱗が使われているものだ。鱗を渡す際、まじないをかける事で、近くにあれば、鱗の在処を察知したりできるのだ。


「お前はこれをどこで手に入れた?」


「ひっ、ひひひ、ひろいまっ、ました……」


 ルリアの目が怪しく光り、女の髪をムンズと鷲掴むとそのまま、引き摺り立たせた。


「もう一度聞く、どこでこれを手に入れた?」


 恐怖にガタガタ振るえ、嗚咽を漏らし泣く女は、父親から貰った事…罪を逃れるため変装していたと告白した。それを聞いたルリアは、女の頬を平手で打つと手を離した。


 尋問を終えた頃、漸く皇国の騎士が到着した。門から玄関までの様子を見て驚いたようだったが、捕まえてある、人族を照合し牢に繋ぐ者、そうでないものを別けているようだった。私達は騎士の姿を確認すると、早々に挨拶を済ませウィリアの怪我の治療を優先する為、屋敷へ空魔法を使い移動した。


 ウィリアの怪我は、顔と腹部を殴られ、首に枷の跡が残っている。手首や足首には縛った跡があり痛々しい物だった。


 その傷を治してくれたのは、ベルンと共に屋敷で待ってくれていた神殿の巫女だった。皇王が頼んでくれたらしい、ウィリアをソファーに寝かせると直ぐに治療に取り掛かってくれた。ありがたい! 治療が終わると、彼女は何も聞かず頭を下げ帰っていった。


 ウィリアは巫女が帰り、少しして目を覚ました……が、起きた直後は、余程恐ろしかったのか錯乱状態が酷く、泣き叫んでいたが、抱きしめ背中を擦ってやり、何度も「大丈夫だ」と諭して、漸く自分が助け出されたのだと知ると、なんとか落ち着いた……。


「ウィリア?」


 そう、呼びかければ、未だ潤んだ目をしているウィリアが私に顔を向ける。


「ぉ、おとぅさま、ごめんなざい……」


 謝るウィリアに首を振り、優しく撫でる。今はまだ叱るより癒す方が先だと判断したのだ。


「辛かったろう?今は謝らなくていい。それよりも、お腹空いただろ?ご飯を食べよう……」


 未だ不安が拭えたわけでは無さそうだが、コクリと頷いてくれた。


 私は急ぎ、魔法:食品複製を使い沢山の料理をテーブルに載せた。ダイニングには、塒の沢山の竜達、リビングにはデイハやジオールが座り皆が揃って、「いただきます」をすると、料理を皿に取りはじめた。


 箸を付けようとしない、ウィリアの前に、いくつもの小皿が並んでいく……、ダイニングで食事を取る子竜達が、「うぃーあ元気だして?」と言い、ウィリアへ自分が食べる分を持ってくるのだ……。未だ、言葉を話せぬ子竜までもが、ウィリアの前に小皿を差し出す……。


「ありがとう」


 涙交じりの声でお礼を言うと、ホロリと雫が落ちる。その雫をグイッと袖で拭うと、少しだけ口角を持ち上げ笑顔を作ると箸を持ち料理を食べた。ホッっと息を吐き出すと私も含め周りの竜達も料理を口に放り込みはじめた。


 なんとか食事を終え、皆、思い思いに過ごしている。暖炉の前は、引くほど酷い状態だが……。

 私は、ウィリアの頭を膝に乗せ、赤子の頃にしていたように、ゆっくりとあやすように叩き彼女の大好きな物語を…はるか昔に起こった王竜の恋物語を紡いで聞かせた……。

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