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竜達の愛娘  作者: ao
第一章 ―王都編―
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家出?……誘拐①

評価・ブックマークをして下さった方ありがとうございます。また、それ以外にこの小説を読んでいただいた方々に心からの感謝を♪お暇なときにでも、感想やレビューなどいただければ幸いです♪


竜達の愛娘 ―ものおき―


閑話はこちらに置く事にしました。思いついたものや皆さんのご希望があれば欠かせて頂きますので、感想の方に書いて頂ければ幸いです。 https://book1.adouzi.eu.org/n6489fs/

/シュベル


 カーテンを開けると、朝日が差し込むはずの窓には、鈍よりとした鉛色の空が写っていた。雪が降るのだろうと私は、寝起きの頭で考えた。屋敷を得て、数ヶ月の月日が流れていた。季節は冬になっている。


 叙爵の話は、皇王達が動いているらしいが…まだ、受けるに至っていない。南の竜達とウィリアの間の距離は、大分埋まってきている。未だに距離を取るものもいるが……、こればかりは、時間をかけ打ち解けていくしかないだろうと考えている。


 ウィリアもそのつもりなのか、特に気にしている様子もないのはいい事なのかもしれない。


 変わらない日々を過ごしている私の元へ、、毎日のように色々な貴族からの面会の申し込みがある。それに、顔も名前も知らない貴族から手紙が来るようになった。手紙の内容は、茶会・夜会の招待状が主だが…人族に関わる気のない私は、全て無視している。あの茶会以来、それが日常化しているのだ、いい加減にして欲しい……。


 そう言ったわけで、今日もまたベルンが、玄関先で使者の相手をしている。

 使者はピシっとした服装と低姿勢でベルンに頭を下げている。


「お願いいたします。どうか!! 私の主人であります。ガルゼル・アンドレ・ヌクリス様とお会いいただけないでしょうか?」


 そうこの使者は、あのレッサーヌヌキのところの者なのだ。


「ですから、長はお会いになるつもりはないと、何度も申し上げておりますでしょう?何度来られようと返事は変わりませんのでお帰り下さい」


 そう言うと、使者を玄関の外まで押し出し、扉を閉めた。締め出された使者は、俯き馬車に乗り込んで帰っていく。


 朝の仕事が終わったとばかりに、ベルンが深い溜息をひとつ落とすと、リビングへ戻ってきた。その顔はとても、疲れて見えた。少しだけ申し訳なくなり、ベルンにコーヒーを注いでみた。


「苦労かける……」


 その言葉と共に、コーヒーの入ったカップを手渡せば、「ありがとうございます」とカップを受け取りクッションへと腰を下ろした。


 気だるそうな態度を見せる竜達も多い中、文句も言わずやるべき事をやってくれるベルンに感謝している。実は、我々、竜は寒さにあまり強くない。

 竜種は色々な所に塒を別ける事で生き延びてきた種だ。塒を持つ環境により進化すると言われている……。


 私は実際に、見た事は無い。だが、太古より我らはその、記憶を共有する魔法を駆使し後世の者に伝えている。それにより、私にはそう言う種もいるのだとわかる。


 暖炉の薪が、パチパチと音を立てて、その暖かさを音でも伝えてくれている。その周りには北南問わず竜達が集まっている。元南の竜も最近は、塒ではなく屋敷に居座る者が多くなっている。狩り以外で、塒に帰らず暖炉の前で、手乗りサイズの竜体になり折り重なるようにして眠っている。その塊をウィリアは『竜団子ですね』と言っていた。


 大きさを変えるのは魔法でできるのだ……。理由はわからんのだが……! それもまた生き延びる為の知恵から生まれたのかもしれない。では、狩に行くときはどうするのかと聞かれれば…狩りの際は魔法で自身の身体の周りに膜を張る事で寒さを凌げる。


 屋敷を持つまでは、皆それで凌いでいたのだが、屋敷の暖かさを知ってしまうと、離れたくなくなるといったところだろう……。と言う事で、今も暖炉の前を竜達が陣取り暖を取っている。


 最近、リーシャがウィリアに持ってきてくれた、新しい紅茶を、飲み干しほぅっと息を吐くと、幸せだな……と感傷に浸る。そんな私に、皇王から思念が届いた。


《王竜様、遅くなりましたが、漸く10日後に叙爵の式典を開く目処が立ちました。こちらから、一度書状を持たせた使者を送りますので、10日後王城までお越しいただきますようお願いいたします》


《あぁ、わかった》


《それでは、10日後にお会いしましょう》


 そう言うと、思念は切れたようだった。


 会議を開く際に参加している幹部に思念で、10日後に叙爵される事を伝えた。それと同時に、ウィリアにも10日後、王城に行く事、叙爵される事を伝えると


「シュベルお父様、おめでとうございます♪」


 ウィリアの可愛い顔がふわりと笑みを湛え祝福の言葉をくれる。


「ありがとう」


 思いっきり頭を撫でた。そのせいで、ウィリアの髪が少し乱れてしまい、ひと房頬へかかってしまった。頬へと手をやり髪をそっと耳にかけてやる。

 周りの視線が私? いやウィリアに集まるのを感じた。視線を向けると、


 そこにはポッと可憐な花が咲き誇る背景を背負い、頬を染め美しい女性の顔をしたウィリアの顔があった。あの月の夜に見たあの顔だ…。


 私は胸が高鳴るのを感じた。魅了にかけられたような感覚に落ち、彼女の頬に手を添え、顔を私へ向ける。そのまま見詰め合う、抵抗する事無く、潤んだ瞳で私を見詰るウィリアの顔が私の瞳いっぱいに映ると引き込まれるようにそっと、口付けを落とす――(すん)での所で、誰かが私とウィリアを引き離した。


 目の前でパンと手を叩く音がなる……。ハッと、覚醒したような感覚がして意識を回りに向ければ、ウィリアを抱えたベルンと私の頭を両手で押さえたカシが、ジトとした目を私に向けていることに気付いた。それと同時に、ジオール(孫好き)の気配を探したが居なかった事に安堵した。


「私は、何をしていた?」


 ベルンとカシに視線を向ける。自身が何をしようとしたのか混乱したのだ……。


「まさか!! ワスレタノデスカ?」


 怒りを乗せた形相で、アルミスが言う……


「すまん? 何があったのかわからないのだ? 私は何をしていた? 何を怒っているのだ?」


「シュベル様……」


 ルリアは呆れた顔を見せ、アルミスは心配するような視線でウィリアの方へ目を向けた。


 私も釣られるように向ければ、顔を俯かせている。その顔色は酷く悪い、心配になり、頭に触れようと手を伸ばすと、ウィリアは私の手を払う。


「ウィリア?」


「……」


 無言で、私をキッっと睨むと、ベルンを振り切り行ってしまった。

 慌てて、私はウィリアを追いかけようと立ち上がる、そこに、アルミスとルリアが同時に、凄い形相で私を見ると手で私を制止する。


「アトデ!! ハナシガアリマス」


 そう言い残し、ウィリアを追いかけていった。


「ウィリアはどうした?具合が悪そうに見えたが……」


 ベルン・カシは、私の言葉に呆れの顔を見せると、はぁ~と深い溜息を吐いた。

 そこにデイハが口を挟む。


「覚えておられないのか?」


「何をだ?」


「シュベル様が、ウィリア様にされた事をです」


 逡巡するも覚えていないため、頷くとデイハは自身が見た事を話してくれた……。その内容に私は愕然とするしかなかった……。


 しっ、信じられない! 私はそんなことをウィリアを可愛いとは思うが、娘としてであり番と見ているわけではないのだ!! もし彼女が望むなら! ――それでも、今はまだそう言う対象では無い……


「そっ、それは、本当に? 私がやったことなのか?」


 何度確認しようとも、その場に居た皆が頷き否定するものは1人も居なかった。皆は、私を呆れた眼差しで見ている…だが私はその記憶が無いのだ…何をしていたのか覚えていない。どうすればいい? 一人で悶々と思考する……。


 ジオールに肩を叩かれ、ビクっと身体が震えた。顔を上げるとかなりの時間が経っていたらしい事が分った。情けない私の顔を見たジオールは、何があったのか周りに聞いたらしく、私の隣にドカっと座ると私の目を見詰た。


「どこまで覚えておられるのですか?」


 そこで、私は自分が覚えている場面を思い出し


「ウィリアの髪を耳にかけた所まで――。それ以上は、何かが邪魔をするように霞がかかって思い出せない」


 そう答えた。それを聞いていたジオールが、私の前に置かれた茶の入っていたカップを手に持ち匂いを掻ぎ、そしてぽつりと「やはりか……」と呟いた。

 不思議そうにベルンが訪ねる


「何かわかったのですか?」


「原因は、これだな……」


 皆の視線が、ジオールの持つカップへと集まる。


「それですか?」


「あぁ、中身の紅茶に使われた茶葉に原因がある……」


 この紅茶に使われた茶葉の中に、ジュゼ(イチジク)の実を乾燥させた物が入っていたらしい、それには催淫効果があるそうだ…特に竜にとってはその効果が強く現れると説明された。


「そうだったのか!」


 そこへ、カシの気遣わしげな声が聞こえた。


「そうだとしても、迫られたウィリア様は……。気の毒ですね」


 ウィリアはこの事を知らない!! 急いでアルミス達に連絡を取ろうとした。そこに、青白い顔をしたアルミスとルリアが戻ってきた。

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