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竜達の愛娘  作者: ao
第一章 ―王都編―
28/108

条件……おまもり

評価・ブックマークをして下さった方ありがとうございます。また、それ以外にこの小説を読んでいただいた方々に心からの感謝を♪お暇なときにでも、感想やレビューなどいただければ幸いです♪


少し長めです。


竜達の愛娘 ―ものおき―


閑話はこちらに置く事にしました。思いついたものや皆さんのご希望があれば欠かせて頂きますので、感想の方に書いて頂ければ幸いです。 https://book1.adouzi.eu.org/n6489fs/

/シュベル


 シュナが語った物語は、その次の日には北・南問わず塒の竜達へと伝わっていた。ウィリアを良く知る北の竜達は俯き辛そうにし、南の竜達は信じていいのか不安になっている顔をしていた。

 それぞれの反応を見てもシュベルが何か言う事はなかった。


 翌日夕方に、シュベルは皆にある決断を伝えた。今後夕食の時間は、ウィリアを含め食事をする事だった。


 その決断に、否を唱えたのは人族に親族を殺された南の竜達だったが、シュベルの意志は固くどんなに言葉を伝えようと、頷くことは無かった。


 夜、シュベル達とデイハ・リューク・アルティ・セシルはウィリアと向かい合って座っていた。優しい声音を意識して、ウィリアの名を呼んだ。


「ウィリア、大事な話があるんだ……。聞いて欲しい」


 ウィリアは、悲しい笑顔を見せたが直ぐにそれを消すと、真面目な顔になり


「はい、シュベルお父様」


 そう言って、私を見詰た。


「あのな、明日から、私やジオール皆で塒で食事をする事にしたんだ。それで……」


 そこまで言うと、ウィリアが顔を俯かせ、ポタポタと瞳から雫を落とす。ぎゅっと手を握りこみ拳を作った。


 あぁ!! 話す順番を間違えた。そう思った私は、大慌てでウィリアの隣へ行き膝を付き言い直すことにした。


「あぁ!!! ちっ違うんだよ。ウィリアも一緒に食べようね! そう言いたかったんだ! だから悲しまないでねっ? ウィリア……」


 そうして、誤解を解くことに成功したのだが、私の言葉遣いは、素になっていた。私を見る皆の目が痛い程刺さっている。できれば、理解して欲しいそう言う訳で、ウィリアと翌日の夕食から食事を取る事になった。


 ウィリアが眠りにつき、皇王へと連絡を入れる。


《聞こえるか? 皇王》


《はっ、んっ……》


《おい? 聞こえないのか?》


《んっ、ハッ! はい。聞こえております! 王竜様》


 ぇ? 何やってんのこのおっさんと思ってはいけない。ただ寝ていただけのようだ。覚醒した皇王はしっかりとした口調で返事を返した。


《寝ていた所すまないな。そちらに顔を出せればいいのだが、今ここを動くわけにはいかないのだ》


《いえ、大丈夫です》


《それでだ、叙爵の話しについてなのだが、こちらとしては条件をつける形で受けると言う事で話しがついたのだが……》


《条件ですか? その内容をお教えいただけますでしょうか?》


《あぁ、こちらの提示する条件は、人族の位に縛られないことだ……》


《人族の位に、ですか?》


 不思議そうに、繰り返す皇王の声を聞く限り、伝わっていない事がわかった。顔を見て話すべきだと思い、シュベルはこちらへ来れないか打診する事にした。


《そうだな、分りやすく説明するから、時間があるときで構わない。午前中に来れる日に来て欲しいのだ》


《畏まりました。出来る限り早めに伺えるよう調整いたします》


《あぁ、頼む》


 無事連絡も終わり、ふーっと息を吐きベットへ入るとそのまま眠りについた。


 その翌日の事だった。なんと昨夜連絡をいれた皇王がさっそく、宰相とリーシャを連れて屋敷に訪れた。皇王の訪問に慌てたのは、ウィリアだった。皇王達が訪れた時間が悪かった。朝食時に来てしまったのだから。


 基本、ウィリアは、魔法で料理を作る事はしない為、皇王達に出す菓子と私達が食べる朝食を同時進行で作るはめになってしまい、皇王達に挨拶をすませると直ぐにキッチンへ駆け込んで行った。


 その様子に、皇王達は謝罪を口にする。


「申し訳ありません。早いほうが良いかと思い……」


「早く来てくれた分にはありがたいから気にするな。さっそくで悪いが、昨日思念で伝えた内容について話させてもらうが、すまん。此方の代表たちが食事に行っているのでな、少し待たせることになる」


 話をしようと思ったが、デイハはじめ皆が塒で食事に行っていた事を思い出し、申し訳なく思いながらも待って貰う事にした。


 ウィリアが入れてくれた紅茶を4杯ほど飲んだ頃、漸く全員が揃った。最後に現れた、アルティ・リュークの2人は、どうやら今日は、狩りの当番だったらしく遅くなってしまったようだ。


 では、と場を仕切るべくベルンが発言する。


「まずは、シュベル様以下、北の竜は挨拶が済んでおりますので、南の代表の竜達から紹介いたしましょう。向かって左から、南の長デイハ殿・リューク殿・アルティ殿・ハイネイ殿・リウス殿です。こちらの5人が南よりの代表です」


 代表して、デイハが口を開く


「アルシッドク皇国に世話になる事になった。元イゼンジルク王国に住んでた南の竜の長をしている、デイハ・ミスガナと言う。よろしく頼む」


「私は、アルシッドク皇国、現皇王シェルジル・グラシエ・フォン・アルシッドクでございます。こちらこそよろしくお願いいたします。それと、横に控えておりますのは」


 そう言葉をきって、皇王は宰相をみる。


「宰相のノービス・ニケ・バルフォンと申します。お会いでき光栄でございます」


 恭しく頭を下げ、敬意を表す。それと同時に、皇王も軽く頭を下げた。釣られるようにデイハ達も頭をさげ、和やかな挨拶は終わりとなった。


「それでは、シュベル様お願いいたします」


 ベルンに名を呼ばれ、頷くと叙爵についての話し合いがはじまった。


「会議の結果は、昨夜伝えた通り。叙爵は受けるつもりだ! ただ条件はあるが……」


 私の発言に、皇王・宰相2人が頷いている。きっちりあちらも話は済んでいるようだな。そう思い続きを話す。


「それで、条件なのだが、私達が求めるのは階級や位ではなく、自身の自由だと理解して貰いたいのだ。皇国から叙爵を受けるのはいいが、竜族が人族に下るとみる竜や人が居るのが困る。我々は我々の社会があり規律がある、ゆえに叙爵は受けるが人の位に縛られない事となったのだ」


「なるほど」


 答えを返したのは、宰相の方だった。彼にも理解があるのだろう。先程私が伝えた言葉を繰り返し考えているようだった。


「叙爵を受ける事は良いが、人や国に縛られないか……」


 そこへ、新しい紅茶を持ってリルアが来る。カップに新しい紅茶を注ぐ……。

 爽やかなフルーティーな香りがその場に漂った。しばらく、その香りを堪能しカップを口につける。美味い! この紅茶は初めて飲むが、何が入っているのだろうか? ルリアに聞いてみようかと彼女をみると、ウィリアの方へ視線を向けている事に気付いて、そのまま視線をウィリアへ向けた。


 ウィリアは、リーシャと一緒に話し合いを邪魔しないよう、つる草のカーテンがあるウッドデッキに柔らかなクッションを敷き腰掛けている。彼女の手には、小さな布が握られそれに針を通している。リーシャは不思議そうにウィリアの手元を見ながら、話しているようだった。


 シュベルが見ているのに、気付いたリーシャが、ウィリアの肩を優しくポンっと叩き顔を上げた彼女に指を指し示す。その指を追ってこちらを見たウィリアは、楽しそうに笑うと、手に持っていた針を置き、別の何かを持ってリーシャと共にリビングへ来た。ウィリアは私の隣に座り。リーシャは皇王の隣に座った。


 隣に座ったウィリアの頭を撫でて…紅茶を口に含む。ふっとウィリアに聞いてみようと思った。


「ウィリア、竜族を守る為に、今度塒の辺りを皇王がくれる事になったんだが、それを貰うには、叙爵といって貴族の位を貰わなきゃいけないんだよ。でも、竜族は縛られるのが嫌いだろう? どうしたらいいと思う?」


 デイハ達南の竜が私がウィリアに相談した事に驚いた顔で見やる。それはそうだろう、普通なら幼い子供に相談する話ではない。だが、不思議と解決するのではないかと言う確信が持てた。


 そんなデイハ達を気にした風でもなくウィリアは少しの間考え、いつも通りの口調で返してきた。


「ん~。お父様達を守る為にその貴族の位が必要なら貰えば良いと思う。だけど、人の貴族の位を貰うと面倒な事に巻き込まれるよね?」


「あぁ、そうだな」


「だったら、皇王様に新たな位?例えば人じゃなくて竜だよって分るように、竜公爵とか?を作ってもらって、『この人たちは、竜だけど皇王様の友達だから特別に貴族の位をあげたんだよ』って宣言してもらえば良いんじゃないの?」


 ウィリアの言葉は、青天の霹靂だった。何故こんな簡単な事を思いつかなかったのかと皇王・宰相は思い頭を振る。デイハはじめ他の竜達は、何度も頷き同意を示し、シュベルだけがウィリアの頭を撫で嬉しそうに微笑んでいた。


 気を取り直した宰相が、皇王と2人で話し合い皇王が頷くと私達に向け言葉を発した。


「先程のお話と皆様の条件を考慮した上で、叙爵する事、その称号は『竜大公』とします。また、この爵位については竜族である皆様を縛ることなく、『皇王様との友誼に感謝し、我が国は竜族を守護する事を示す称号』と言うことでいかがでしょか?」


 大公とは、王族の王以外のものやそれに連なるものや同等を示す照合である。

 なるほど、これならば、我らを見下す輩はいない。また竜をつける事でわれらが竜族であると示す事もできると言う訳か上手くまとめたものだ…。皆に確認を取るように、見回すと皆が頷いてくれた。それを受け、私は皇王達へ視線を戻すと頷いた。


 会議が終わり、昼食を共に食べているとウィリアとリーシャの2人は皇王と宰相へ5センチ程の小さな茶巾袋を渡した。淡い色合いで皇国のエンブレムが入っている。


 突然の贈り物に戸惑ったようだが「ありがとう(ございます)」と言うと嬉しそうに笑っていた。


 受け取ったガタガタの刺繍をした袋を見つめ皇王がリーシャに聞いた。


「リーシャ、これは何だい?」


 すると、リーシャは胸を張りドヤ顔で


「御守りです! 匂い袋にもなっています! 一石二鳥でしょ?これ、作り方をウィリアに教えて貰って、私が自分でお父様の健康を祈り作りましたの♪」


「リーシャにお願いされたの、お父様のお誕生日が近いから何かないかって…それで御守りなら小さいし持ち運べるし、それにお花の匂いが付いてたらポプリみたいでいいかなって……宰相さんの分はウィリアが作ったの……シュベルお父様達と仲良くしてくれるお礼なの」


 ウィリアは、楽しそうに微笑み、甘いギュルス(桃)を口に含むと、幸せそうに笑った。


 2人が作った贈り物は、ポプリと言うらしい。そのポプリを宝物のように見詰た皇王は、再度2人に礼を言うと、自身の胸ポケットに大切にしまった。

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