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竜達の愛娘  作者: ao
第一章 ―王都編―
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刺繍の意味

評価・ブックマークをして下さった方ありがとうございます。また、それ以外にこの小説を読んでいただいた方々に心からの感謝を♪お暇なときにでも、感想やレビューなどいただければ幸いです♪


なんと!!!PV10,000に到達しておりました!皆さんがこの物語をチラリとでもみてくださっているおかげです!本当にありがとうございます。日々精進して書いてまいりますのでよろしくお願いします!


/シュベル


 ここ10日は多忙を極めた。今日、南が北に引越しをしてくるため、塒の調整や諍いなどを起さないように人的調整も必要だった。その中でも一番、心が痛んだ事は、ウィリアにしばらく塒に行く事を禁止せざるを得なかったことだろう。南の顔見知りはいいとしても、ウィリアをはじめて見る他の竜達は、直ぐに彼女を受け入れる事は難しいと考えたのだ。


 いつも通り、塒で夕食を取っている私に、ベルンやジオールから早く言って下さいといわんばかりの視線を受けた。ここで、思念を使わず視線だけで、言う所が汚いと思うのだ!嫌な役だけ率先してやってくれる者は居ないのだろうか? などと及び腰で思う。私……。


 それでもウィリアにキチンと伝えなければ、彼女が傷付くことになる、と思い直し勢いで口を開いた。


「ウィリア、大事な話があるのだが……」


 はむはむと、子リスのように両頬を膨らませ、ステーキを食べていたウィリアがその声を聞いて、こちらを向いた。口の中に残ったものを咀嚼するウィリアを見て、先程の勢いが一気に霧散する。小動物もいいなぁ。ハっ! イカンイカン伝えなければ……。


「その、えーっとな……」


 中々、話の先を言えない私を見て、ウィリアの首がコテンと倒れる。


「あ、と、うん。食べ終えてから話をしよう!」


 逃げてしまった。あまりのウィリアの可愛さに! 出入り禁止を伝えた後の悲しむ顔を想像したら居た堪れなくなって、あらぬ方向を見て視線を流す私に、周りに居た、ベルン・ジオール・カシ・アルミス・ルリアのジト目の視線が、私を、ヘタレと言っていた。


 それから数日、言えないまま過ごし、つい、痺れを切らしたカシが、事情を説明しウィリアに伝えた所、彼女は「うん。そうだろうなって思ってたから大丈夫だよ?」と言って少しだけ寂しそうに笑った。


 私は、今、塒の上にある、広場で南の到着を待っていた。周りには、北の竜達が人化した状態で来るのを見守っている。

 ウィリアはここには居ない。王都にある屋敷でアルミス・ルリアと留守番してくれている。今日は、朝から中々に大変だった。まず、朝日と共に起されたと思ったら、直ぐに浴室に連れて行かれ、水浴びを済ませると、朝食を食べさせられた。


 その後、私・ジオール・ベルン・カシは、それぞれ、ウィリア・アルミス・ルリア・カシリアの4人に順に取り囲まれ、正装と言う服を着せられた。


 私は、金の装飾品が付き、金糸で袖などに刺繍の入った黒のジャケットコート・グレーのシャツ(襟と袖に、薄紫のラインが入っている)・紫のタイ(ウィリアの瞳の色を希望した)・黒のズボン・黒編み上げのブーツ


 ジオール・カシ・ベルンは、同じ仕立ての様で、銀の装飾品が付き、銀糸で刺繍が入ったグレーのディーラージャケットのようなものに左肩に腰までのマントが付いている。シャツは黒・帯はおのおの好きな色で、ジオールは、薄い紫・ベルンは、薄い青・カシは、薄い黄色を選んでいた。ズボンはグレー・ブーツは、編み上げで色は黒だ。


 着替え終わり、南の竜達を迎える為、塒へと戻ってきた。

 何故、こんな格好をしなければならないのかと愚痴る、ベルン・カシにカシリアが思念で教えてくれた。


《この衣装は、ウィリア様が考えて魔法で作り出したものですよ。刺繍は、ご本人が入れられたものですよ! なんでも、この刺繍の模様は七宝(しっぽう)というそうです。模様自体に意味があって、人の御縁や繋がりは、七つの宝と同等の価値があるという意味なんだそうです。なので、絶対に揉め事は禁止ですよ!》

 

 カシリアは思念でそう言うと、いたずらっ子のようにハニカンでみせた。


 ウィリアの気持ちを無駄にしないため、私は気合いを入れなおす。あの子の優しさがこの刺繍に詰まっているのだと、刺繍をマジマジと見つめた。その刺繍は、丸の形の中に4辺の星を入れた物だ。所々、星の中に白い可愛らしい小花と竜の影の様な形が入れられている。その刺繍をそっと撫でた。


 ジオール・ベルン・カシも同じように刺繍をみていたようだ。私と視線が合うと、少しだけ気まずそうにしながらも、口角を上げ嬉しそうにしてみせた。


《王竜シュベル様、これよりそちらに移動いたします》


 デイハからの思念が入る


「これより、移動があるそうだ。皆、過酷な地より来る南の同族を歓迎しよう!!」


 そう告げるが早いか、大気に大きな揺らぎが起き、デイハ・リュークをはじめ、1人、また1人と南の竜が姿を現した。南でも、人化したものが多いようだった。服は着ていないがそれはいたし方の無いことだ。もちろん、竜体で現れたものもいる。そこは本人の好みによるとシュベルは思う為、特に気にはしない事にしている。


 全ての移動が済んだのか、揺らぎは消え、デイハが此方に、二、三歩み寄ると片膝を突き、頭を垂れた。それに習うように、他の者達も頭を垂れる。

 代表し、デイハが口上を陳べる。


「王竜シュベル様、そして北に住まう皆に本日より、南の竜が住まうことご了承いただきたく願います」


 北を代表しシュベルも返す。


「北はそなた達を歓迎する! 塒は既に用意してある好きな場所を選んで欲しい」


「ありがたいお言葉感謝申し上げます!」


 そう言うと、シュベルは、デイハを立たせ右手を差し出した。デイハもまたそれに答えるように握り握手をするのだった。


 それから、南に塒を案内する担当がそれぞれ名乗り、南の者達を連れて塒を見せに行った。塒の説明や、狩場の説明は担当するものがするので、シュベルの仕事はひとまず、塒が決まるまで休憩となった。その場に座る事はせず、木でできたテーブルと椅子に腰掛け今朝ウィリアが持たせてくれた紅茶とケーキを出すとそれに口をつけつつ寛いだ。


 紅茶がなくなり、時間を持て余す――残った北の者達には、屋敷で食事を摂る様に言いつけてある為、ここに残っているものは少ない。


 食事が終わったのか、他の者達が屋敷から戻り始めた頃、アルミスとルリアが此方へ来ていた。その手には大きな風呂敷包みを持っている。2人以外もその包みを抱えているものが居た。


 2人は、私に軽く会釈をすると、テーブルにその包みを置いた。


「皆さんまだ、お食事を召し上がっていないだろうからと、ウィリア様が食事を終えた皆に持っていって欲しいと仰いまして」


 アルミスが説明している間にも次々と、包みを持った者達が帰ってくる……。


「まっ、まさかとは思うが、南の分もあるのか?」


「はい。一生懸命御作りになっていましたわ」


「そうか、後で沢山礼を言わないとな……」


「きっと、お喜びになりますわ。ふふふっ」


 そう言うと、アルミスは皆に指示を出すルリアの元へ向かって歩を進めた。


 ウィリアが皆に持たせた料理が、並び終わる頃デイハ達、南の竜達が戻ってきた。広場に置かれた料理をみた、南の竜達は驚き、左右の者に小声で話していた。


「王竜シュベル様、これは……」


「ウィリアが、南の者達のために作ったらしい。それからデイハ殿……王竜シュベルではなく、これからは、シュベルと呼んでくれ、堅苦しいのはどうも苦手だ」


 フッっと笑い、頭を掻く仕草をすると口角を上げて笑うシュベルに、デイハも「わかりました。私のこともデイハとお呼び下さい」と笑顔で言い頷いた。


「では、好きに食べてくれ!」


 私が言うとデイハは、手を広げ


「シュベル様の仰るとおりいただこう!」


 そう言って、南の竜達は戸惑いながらも食事をはじめた。そんな中、デイハ・リューク・セシルの3人は、座り両手を合わせると「いただきます」と言い料理に手をつけた。


 その様子を見ていた、北の竜達は仲良く共に暮らせる日がそう遠くないと希望を持ち、嬉しそうに笑い合っていた。


 デイハの隣に座ったシュベルは、食事する彼に今後の取りまとめや生活の環境など重要になる事を思念で話す事にした。


《そのままでいい、食事を続けながら聞いて欲しい》


《はい》


《今後の事だ、北と南で今まで別々に暮らしてきた事で、何かあり決定する事もあるはずだ。それが、私とデイハ殿が話し合い取り決めた事であっても、きっと不公平を感じる者もでるだろう。だから、北からは私、以外の3名を選出する。南からは、デイハ殿を含め5名を選出してもらいたい》


《確かに、その可能性は大きいでしょうな! しかし、南の数が多いように思います》


《これから、話し合う内容は人族に関しての事が多くなるだろう事は、デイハ殿も予測できるだろう?そう考えると北は、ウィリアが居たからか人族に対して緩和傾向にある。だが、南はそうは行かないだろう? だから5名なのだ》


《なるほど!! 今日ウィスユリア様がお姿を見せられないのも我々の為でしたか……》


《あぁ、寂しそうではあったが、南の竜達の感情も理解できるのだろう。あれはそう言う子だ。人員の人選はデイハ殿に任せる》


 デイハは、食べるのを止め頷くと再度食べだした。


 しかし、南の竜達は良く食べる。ガツガツと――足りんかもしれんな! そう思い、アルミス達の居た方に目を向けると、姿が無かった。


《ベルン、アルミス達を探し料理の追加をウィリアに頼むように伝えてくれ》


 探して伝言を頼むと


《既に、ウィリア様の元へいっております》


 そう、返って来た……皿の料理がなくなる寸での所で追加分が届く。その料理は、牛丼と呼ばれるものだった。ドレイクの肉を薄く切り、ターネル(タマネギ)と言う野菜と煮込み、ギュール(米)と言う穀物を炊いたものに盛った料理だ。


 きっと、夕食用に作った物だったのだろうと予想が付いた。後で、ウィリアに何か考えないとな……そう思い、ガツガツ食べる新しい仲間を見ていた。


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