水浴び
修正など、色々します。
とりあえず今回は少し短いかもしれません・・・。
お付き合いよろしくお願いします。
竜神アルバス様を呆然と見送り、塒は静まりかえっていた。
「……」
何も考えられないと竜でも人でも無言になるものである。その状態がしばらく続くと、籠の中から突如、鳴き声が響いた。
「うふわぁ~わわぁぁん」
籠を覗き見れば先程まで寝ていた赤子が手足をバタつかせ泣いていた。
「……何故、こんなことになったのだ……。私は、断ったはずではないのか?」
塒に響く泣き声に、嫌悪を感じ。徐に前足の爪を使い持ち上げてみる。するとその声は余計に煩くなった。
「あー。煩い!」
いっそ、沈黙の魔法でもかけてやろうかと考えたが、神より預かった赤子だ。無体にはできない……。
神か、……竜神アルバス様のいい笑顔の姿が浮かび、その言葉を思い出した!! そう、人の知識を探ればいいのだと、そこで先程賜った知識を思考することにした。
私は、人の知識を漁り、何故赤子が泣いているのかを知る。人の赤子は腹が減る、排泄する、甘える、欲求を満たす。その、全てで泣く……。本当にこれは正しいのか?!
「はぁ~。何がしたい?」
溜息と共に、赤子に念じるように聞いてみたものの、もちろん返事など返ってくるはずも無く。ただ、泣き続ける……。溜息を吐く度、赤子の髪が激しく揺れている。
「あっ、あの、おそれながらシュベル様にお伝えしたいことがございます」
黄色を暗くしたような色合いの竜ベルンが、どこか遠慮がちに声をかける。籠の中の赤子から、目を離すことなく話の続きを促した。
「ベルン、申してみよ」
「はい、その我らの姿が恐ろしくて泣いているのではないでしょうか? 我らは巨体ゆえ、このような小さな赤子に対し恐怖を与えているものと推察します」
「なるほど!! 確かにそれはあるかもしれんな。先程、竜神アルバス様より賜った、人の知識を模索したところ人族は、自分より巨大なものには恐れを抱くとある」
「――やはり!!」
「あぁ。だが赤子は腹が減る、排泄する、甘える、欲求を満たす……。全てで泣くと回答も得ている」
「……」
「どれか分からんのだ。種族を超えることは難しい……。どうしたものか」
「なんと!! 難儀な……」
う~んと、ベルンはじめ皆が唸りこの、煩い泣き声だけでもどうにかできないか考えていると紫と青の入り混じった色合いの鱗を持つ、カシが発言する。
「シュベル様、よろしいですか?」
「カシ、許す」
「先程、竜神アルバス様より賜った、万物知識創造で人族の姿になる魔法を作れないのでしょうか?神は、魔法も含め物を作り出せると仰っていたと記憶しております。ならばできるのでは?」
「そうか、確かに! 流石、カシだ!」
「先程、竜神アルバス様はそうおっしゃっていたな!試してみる価値はある」
頭の中で、竜の見た目が人に変わるよう想像し万物知識創造を唱える。すると、自身の身体が発光し徐々に縮んでいく、光が収まり、手や足を見てみるとすらり伸びていた。手で、顔や髪などに触れてみれば、その感覚が面白いほど良く分かった。
近くに居た竜に確認すると、年齢は25~27程、中肉中背、服はもちろん着ていない。髪は黒く背中に流れ、瞳の色は金色の美しい面立ちで人の姿をしていると告げられた。
魔法の名は、魔法:擬人化元に戻る際は、魔法:解除と唱えればよいらしい。
擬人化した、シュベルを見ていた竜達は、口々に おぉ~流石我らが王だ、やりましたななど、褒め称えている。
「皆、聞け。我が人化できた事で皆に、人化の魔法を習得してもらう。そして、この赤子を育てるのだ!よいな!」
共に暮らす皆に向け、シュベルは命令する。 皆、頭を垂れ『はっ』と返事を返すと、口々に擬人化の魔法を唱え習得を開始する。
その姿を、見遣って頷いたシュベルは、目を閉じ赤子に水浴びをさせる方法の知識と、乳をのませる知識を探し、知識で得た物を作るため万物知識創造を使い魔法を作る。
先んじて必要なものは、泣き続ける赤子に餌と、大き目の布と尻用の布、身体を拭くための水と布を用意してやら無ければな……
魔法:ミルクは哺乳
魔法:布は布
魔法:桶
魔法は自分が考えた大きさで現れるらしく、桶は赤子を入れても問題ない大きさのもの、布は大小、ミルクはココナッツの実を半分にした大きさで先端部分に細い竹がささり厚めの布がついている。
私は、考える――赤子はこのように手がかかるのだな――我らの子は、卵で産まれてくる為、産まれたその日から親が取ってきた餌を食らう。まったく、手がかからないわけではないが人の子の数百倍は楽であったのだな。
とりあえず、水浴びをさせねば……。
「皆、今後赤子に水浴びさせる事もあろう、よく見て覚えておくとよい。今後皆にも世話してもらうことになる」
他の竜達が見やすいよう、地の魔法で少し高めの台を広めにつくり桶を置く。地面に布を敷き、籠から出来るだけ力を入れないように気をつけ、抱き上げそっと地面に敷いた布の上に置くと、服を剥き、裸にした所で用意した桶に水を入れ、赤子の両耳を塞ぎ、水にそっと入れる。
ほんの一瞬泣き声が止んだと思ったら、先程より更にひどい泣き声で泣かれた。慌てて赤子を桶から出し布に置く。
「余計にうるさくなった!! どうして欲しいのだ!! はぁ」
泣く赤子に、ついつい話す事ができないと分っていても、愚痴をこぼしてしまう。
そこへ、白に赤の様な色をした竜アルミスが擬人化の魔法を使い人の姿で立っていた。年齢は20台後半程に見え、白と赤が入り混じった髪色をした、素晴らしいプロポーションをした女性が、桶に近づき手を入れ困り果てる王に声をかけた。
「王、少々よろしいでしょうか?」
アルミスは、既に5匹育て上げている。彼女の言葉を私は聴くことにした。
「アルミス、どうした?」
「はい、今から300年ほど前になりますが、人の親子を見かけた事がございます。その親子は、よく私の狩場に来ていたのですが、その際生温い水につかり笑っておりました。もしかすると、この赤子も水ではなく、生温い水の方がよいかもしれません」
「そうか!」
「もしよろしければ、私が、生温い水を御作りいたしましょう!」
「ではそなたがその生温い水とやらを作ってみてくれ。我は触れた事がないゆえわからんのだ」
「承りました」
アルミスは、火の魔法を使いそれをゆっくりと水の中へと沈めた。桶から、ぼこぼこと湯気とともに水が音を出している。何度か火を沈め。
「この位だったかと思います」
そう告げて、桶から離れ私の側近くに控えた。それを見遣ると、私は自分の手を湯につけた。熱すぎず冷たすぎずの温度を確認する。アルミスが湯を用意する間に、人の知識を調べたところ、赤子の体温よりも、少し低めがいいと知識にあったので桶の中がちょうどいいと判断する。
基本、気温の変化は魔法で補っている。竜の生態な為どこか不思議な思いを抱きつつ、再度、赤子を抱き上げ、ゆっくりと桶に入れた――赤子が嬉しそうにキャッキャと笑い、手足をバタバタさせはじめる。
「これ、暴れるな……! まったく……この熱さか覚えておかねばならんな…」
独り言のように呟き、身体や顔を布で拭き、頭を水で濡らし拭く。その後、数分間湯の中で身体を温め赤子のほほがピンクになると取り出し、布で水分を拭きとる。新しく作った布を巻きそっと籠に戻す、嬉しそうに笑う赤子……。
世話に手間はかかるが、この笑顔を見れるなら悪くないのかもしれないな……。ほんの少しだけ、そう思えた。
パパはじめてのお風呂・・・パパも全裸・・・笑




