謁見……つみ?③
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/シェルジル
最初に思った言葉は、やはり! だった。王竜様がこの城を訪れると決まった日、私は不安に駆られた。何故かはわかっていなかったが、何かをやらかすのなら私の双子の子供たちしかいないと、そう思っていた……、それが的中してしまった。
沈黙が支配する、謁見の間で、私は立ち上がりノービスを呼ぶ。
「ノービス! ウルスをすぐさま呼べ、それから、リーシャの侍女達も全て集めよ!」
はっとしたような顔をして、ノービスは返事を返すとすぐさま行動した。
それを見送り、私は皇妃に視線を向ける。
「皇妃よ、王竜様のおっしゃったことは事実なのか?」
私は心の中で、誤解であってほしいと願った。……がその願いは皇妃の言葉でかなわない事を知る事になる。
「陛下!! 私の教育が悪かったのです。どうか、リーシャの事を許していただけるよう、お願いしてくださいませんか? まだ12の子供がしたことではございませんか? 神殿などに入れさせるわけには行きません…この子は皇女ではありませんか!」
胸の前で手を組み、懇願する目を私に向けた。娘を救いたいと願うのは確かに私とて同じだが、国の国母たる皇妃が、国を捨て、娘をとるとは――その姿が、とても浅はかで滑稽に思えた。
「許す、許さぬは王竜様が決めることだ…私から、何かを言って竜族の許しが得られると、本気で思っているのか? 神殿で済むだけましでは無いか! それに12の子供が10の子供に対して馬鹿にして笑う事は許されるのか? もし、お前が同じような目にあったらどう思うのだ!」
嘲笑を浮かべ、皇妃へ問うた。
「それは!! ――ですが神殿に行かなければ、盟約の破棄などと脅してきているのは明らかですわ。リーシャにはこちらで言い聞かせる事もできます。神殿などに行けば、リーシャの将来に傷がつきますわ!」
「だまれ! そなたは、何を思い違いしているのだ!! これは、国の……」
言葉がのどにつまり出てこないのだ……。あまりに情けなく……。
そこへ、宰相ノービスが戻ってきた。
「陛下。お待たせいたしました」
そう言って、ピシッと頭を下げたノービスは、それぞれに視線を配る。
「苦労をかけたな。では、ウルス、お前に聞きたいことがあるのだ、全て正直に答えよ。うそ偽りを申せばその場で死を覚悟せよ!」
ノービスを労い、ウルスに視線を固定する。
「2日、到着されたハーナス様ご一行の事だ、覚えているな?」
「はっ、はい」
「ならば、その日の事を詳細に話せ。一言一句違わぬよう気をつけよ」
その言葉を聞いたウルスはチラリとリーシャに視線を向け語り始めた。
その内容は、王竜様の仰ったままだったのだ……。しかも、ウルスの語りの方が王竜様の言葉より更に私を追い詰めていた。他の侍女たちにも、同じように証言させ間違いが無い事が実証された。
「どこまで愚かなのだ……」
このとき私は、初めて自身の娘に失望したと同時に怒りを覚えた。軽く頭を振り、少し冷静さを取り戻した私は、リーシャに問いただすため、巫女殿に願う。
「巫女殿、皇女の魔法の解除をお願いいたします」
「彼の方はここを出る際、既に魔法を解除しておられる」
との返答をもらう。
リーシャの前に行き、出来る限り冷静に話をする事にした。
「リーシャ」
「……」
「私は、そなたの事はもちろん可愛いと思っているし、娘として愛しているし、殺されて欲しくは無い。だが、皇王である私は、そなた以上にこの国の民が大事なのだ。そなたの行いのせいで、竜族との盟約が完全に破棄されれば、この国の民には死しかないのだ!! だからこそ、私は皇王としてお前の父として、罪を自覚し、ウィスユリア嬢へ謝罪し、干渉・接触を避け神の御前で誓い神殿の許しがでるまで神殿にて奉仕活動をする事を命じる! これは王命であり、違えればそれは死となる事を覚えておきなさい」
「陛下!」
皇妃の悲痛な叫びが聞こえるが……、今はかまっているときではない。
「リーシャ、返事は?」
涙を流し、私の足元へすがりつき懇願する。
「お父様、お願いです! 私はいやです!! お父様とお母様と離れるのは嫌です! どうか、どう
か、そのご命令をお取り消し下さいませ!」
「私も、お前と離れるのは辛い……」
「でしたら!」
「だが、それではダメなのだ。そなたが傲慢な態度を取る事を知りもせず、甘やかし続けた私と皇妃の責でもあるのだ」
足元に縋るリーシャの手を外し、背を向け王座へと戻る。
「お父様ぁ!!!」
その場に崩れ、泣き叫ぶリーシャ。国のためだと恨まれるのを承知でこうするしかないのだと何度も痛む胸を摩った。
「巫女殿、彼の方よりの言葉により、我が娘リーシャをそちらに預ける事お許しいただきたい」
巫女殿は静かに、頷き了承の意思を見せてくれた。
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/シュベル
刻限になり、謁見の間へと戻ってきた。今回、謁見の間へ来たのは私とジオール・ベルンだけだ。他は、夕食の準備の為と言う口実をつけ塒へ戻ってもらった。
謁見の間では、10歳は老けたであろう顔をした皇王と私を憎憎しい顔でみつめる皇妃、泣き崩れたのか顔面の化粧が崩れ残念な顔をさらした皇女、項垂れ第2皇子と……、かなり酷いありさまになっていた。
「さて、決まったか?」
そう告げれば、皇王が顔をあげ目を伏せ頭を下げ告げる。
「今回、我が娘リーシャがウィスユリア嬢に行った悪行に関し、父親として心から謝罪する。また、リーシャには先程、王竜様がおっしゃった通り神殿にて反省を促すための奉仕活動をさせる事をこの場にいる皆の前でお約束いたします。神殿の受け入れは先程、そちらにいらっしゃる巫女殿に許可をいただいております」
皇王が巫女殿に視線を移すと、確かにと頷いた。
「そうか、それでお前は、どうするのだ?」
リーシャに、目線を向け問いかける。私の視線を受け、肩を揺らし震える弱々しい声で
「謝罪いたいます。また、父上のおっしゃる通り神殿に向かわせていただきます」
「そうか! では、おまえは?」
そうして、ジーンに目線を向け問いかけた。
「お望みのままにいたします」
「これで、全て解決だな。ではウィリアを呼ぶから、皇女お前は、心からの謝罪をするのだ」
「はい……」
《カシ、聞こえるな? 聞こえているのなら、謁見の間にウィリアを連れて来てくれ》
《御意》
返事の後、直ぐさま空間が歪みカシとウィリアが現れた。
「シュベルお父様、御用はなんでしょう?」
夕食を作っていたのか、ウィリアは白いフリルのエプロンを着けた姿をしたまま、この場に来たようだった。
「皇女がこの間の馬車の事を謝りたいそうだ」
馬車の事と聞いて、思い出したのかエプロンをぎゅっと握り、少しだけ視線を下げた後、私を見上げ「はい」と返事をしてくれた。
はじめろと目で皇女に訴える。それを受け、俯き話し出す。
「うぃ、ウィスユリア様、せっ先日の馬車の、グスン、馬車で貴方様を傷つけたごど、本当にもうじわげございまぜんでじだ」
泣きながら謝罪の言葉を口にする。目から涙を、鼻から水を出すリーシャにウィリアは、近づき自分のポケットに入れたハンカチを彼女に差し出す。それを受け取ったリーシャに、ニコっと笑いかけ……。
「はい。リーシャ様謝ってくれて、ありがとうございます。もし嫌じゃなかったら、ウィリアとお友達になってくれませんか?」
《これは!! ウィリア様の行動が斜め上にむかってますのぅ》
驚いた表情を見せたジオールに、カシがくすりと笑い同感する。
《そのようですね!》
《ちょ!! お友達って――お父様聞いてないよ!? いや、ある程度読んではいたんだが! まさか……、そちらを望むとは!!》
私の言葉に、ベルンが慌てたように軌道修正の案を出した。
《あ、まぁ、神殿は元々シュベル様が考えたものですし、なしの方向でもっていけばいいのではないでしょうか? 後、接触の関係は、皇子のみと言う事で……》
《そうするしかないな! そうしよう》
私は、ベルンの案に頷く。そんな私たちを余所に、ウィリアとリーシャは手を握り合っている。
「ウィスユリア様……よろじいのでずか? 私、貴方様に酷いごどをしたのですよ?」
「ん~でも、ウィリアが泣いてしまったのは、リーシャ様のせいじゃなくて、自分のせいだから……。それと、ウィリアと呼んで下さい!」
そう言って、ウィリアは少し、気まずそうな笑顔を浮かべていた。そんなウィリアに、リーシャは
「許していただいて、ありがとうございます。私のこともリーシャとお呼び下さいませ」
図らずも許しを得たリーシャは、歳相応の笑顔を浮かべていた。
「さて、皇王よ。こちらも和解と行こうか。先に伝えておくが、リーシャがウィリアの友になり2人で確り、常識を学ぶのであれば、リーシャの謝罪もあったので、神殿行きは免除とする。干渉・接触禁止に関しては、そこの皇子にのみ適応とする、と言う事でどうだ?」
「それは!! よろしいのですか?」
私の予想外の言葉に目を見張る、皇王に対し、私はニヤリと笑いを浮かべてみせる。
「元より、神殿うんぬんに関しては、リーシャの反省を促すためと国の王を取るか、父を取るかを見定める為のものだ。そなたがこの場でリーシャの事を懇願しようものならその場でこの国を切って捨てる事になっただろう。まぁ、皇妃はあの顔を見る限り、残念なことになったようだが、王として私に、真摯な姿勢をみせた。その姿に敬意を表し我らは、そなたの代では決して盟約を破らぬと誓おう、また、そなた自身がどうにもならぬ時、我ら北の竜は1度だけ助けると約束しよう」
そう伝え、鱗を1枚差し出す。この鱗は私の生え変わりに抜けた鱗ではあるが、鱗を人に渡すのは、竜にとって約束を意味する。また、鱗は持ち主の意思に応じて、その言葉を私に伝えることができるのだ。
「受け取れ。これは私の鱗だ。そなたが使いやすい形に加工し肌身離さず持ち歩くと良い。守護のまじないをかけてある! 毒などは簡単にはじくだろう。ただし、そなた以外が触れるときは必ず私の許可を取るようにして貰いたい」
皇王は、目を開け私の前まで進み出ると、その片膝を折り、恭しく鱗を受け取った。
「感謝いたします。王竜シュベル・クリム・ハーナス様」
そう言うと、硬く目を閉じ、鱗を握り締めたのだった。




