めいわく……嫉妬と害虫?②
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/シュベル
バキっと言う音と共に、視線を音の方へ向けると顔が紅潮した皇女の姿が目に入った。私の視線に気付いた皇女は顔を伏せると笑顔を貼り付け
「とっ、とても仲がよろしいのですね。ほほほ」
プルプル肩を震わせ褒めてきた。そこで、私はドヤ顔してみせる。
「あぁ、ウィリアの事だけは、愛しているからな。この子がいなければ私は、この皇都へ来る事も、旅をすることもなかった」
「シュベルお父様、ウィリアもお父様が大好きです」
恥ずかしさを隠すためなのか、頭を胸に擦り付けるようにグリグリしてくる。可愛い!
「ウィリアくすぐったいぞ。あはははっ」
ウィリアの髪が腕や胸などにあたり、くすぐったかった、思わず声に出して笑ってしまった。お父様が大好きです! 大好きです! 大すきです! なんと、素晴らしい言葉か! 何度も何度もウィリアの言葉を脳内で反芻し続ける。私は今日、命を失ったとしても悔いは無い!
《幸せそうですね……もう、お顔が……》
《えぇ、対面の方はどこぞの、悪魔の様な醜面ですけれど……、私達の王も……別の意味で酷いですわ》
《本当に、酷いお顔をされてますね……》
《恐ろしいですわ》
《うるさい! 今はウィリアの大好きを反芻している所だ邪魔をするな!》
《うわっ!! 王が気持ち悪い》
《同意しますわ……》
思念で、邪魔者達の声に思考を邪魔され憂鬱な気分になる私は、大きな溜息を吐いた。はぁ~。
「………」
皇女が黙り、私はウィリアを撫でている。特にリーシャと話したい事は無いため沈黙がそこにあった。しばしの沈黙を破ったのは、警護に当たっていた警備兵だった。
「ジーン殿下、困ります! 今は、皇女殿下がこちらでお客人とお茶をされているのです。どうかお引取りください」
止める衛兵の腕の間をすり抜けるように現れたのは、皇女と良く似た面立ちの薄い茶色に焦げ茶色の目をした面立ち良い男の子だった。歳はリーシャとあまり変わらないようにみえる。
今度は皇子か……
《新手ですか……》
《あら、でも少し可愛らしい顔立ちですわね》
《そうですか?私には良く判りません》
《ふふふっ》
少し楽しそうな声を含ませ2人で会話をしている。
「お兄様! この時間は、歴史のお勉強ではありませんの?」
「やぁ、リーシャ! お前に想い人ができたと聞いて、その相手とやらを見に来たんだよ」
面白いものを見に来た! と言わんばかりの顔をしてジーン皇子が返す。
「そそそ、そんなんじゃありませんわ!」
顔を紅潮させ、焦ったように否定する皇女。
「あはは。リーシャは、相変わらず顔にでやすいよね、気をつけないと直ぐにばれちゃうよ~?」
そう言うと、対面に座る私達に視線を移す。その直後、ジーン皇子はボソっと「か……ヵヮィィ………」と呟いたっきり固まった。
「お兄様?」
突然動かなくなった兄を訝しむように見た。
「どうなさったの? お兄様?」
再度の呼びかけに、何事も無かったように皇子は返す。
「ん? 何? リーシャ」
「いえ、少し様子がおかしいように見えましたから、大丈夫なのかしらと思い声をかけただけですわ?」
「うん、大丈夫だよ。ところでお茶をしていたんだよね?」
「えぇ」
「僕も一緒してもいいかな?」
「えっ!!」
「むっ! だめなの?」
「いいえ、直ぐに用意させますわ」
「ありがとう」
皇女は、直ぐに近くの侍女を呼び、今度は椅子4脚でテーブルを囲むようにセッティングを整えた。皇女と皇子が、席に着きシュベルとウィリアもそれぞれ席につくしかなかった。改めてお茶会の再開である。皇子が皇女を突っつくと、皇女が、皇子の方へ視線を向け私達の方へ顔を戻す。
「改めてご紹介いたしますわ。私の双子の兄で第2皇子になります、ジーン・グラシエ・フォン・アルシッドクですわ」
「ジーンと呼んで欲しい、よろしくお願いする」
「シュベル・クリム・ハーナスだ。隣にいるのは私の娘で、ウィスユリアだ」
「ウィスユリアです。よろしくお願いします」
「素敵なお名前ですね! 貴女に良く似合っていますね。ウィスユリア嬢は、ハーナス卿の娘さんだったのですか!」
名前を褒められて嬉しそうに笑うウィリアとは対照的に、シュベルの心は冷えていく……、どうみても……このジーンとなのる皇子は、ウィリアに寄る害虫に見えてしまう。
「あぁ、そうだが?」
私の返答を華麗に無視すると、前のめりになりウィリアに話しかける皇子。
「ウィスユリア嬢、レディに年齢を尋ねるのは失礼だとは思うのですが、おいくつなのですか?」
「えっと、10歳になりました」
「おぉ、歳も近いですね。私は今年12歳になる」
「はい」
「そうだ、もし良ければ来月開かれる私とリーシャの誕生日のお披露目会のお茶会へ参加されませんか?!」
「ちょっと、お兄様!! 私の誕生日のお披露目会でもあるのですよ?」
苦情に近い声音で、皇女が訴えるが、皇子にはウィリア以外の声が聞こえないのか話を進めている。
「ダメでしょうか?」
「えっと?」
困った顔をしたウィリアは私へと視線を向けた。その視線を追い、皇子が思い出したようにこちらに向き直ると少し反省した様子を見せ、謝罪を口にする。
「申し訳ありません。お父上である、ハーナス卿に先にお伺いを立てるべきでした。参加していただけませんでしょうか?」
「ウィリアは参加したいのかい?」
「ぇっと……」
もちろん、本音を言うなら参加などさせる気はまったくない! 何が楽しくて、害虫に可愛いウィリアを差し出さねばならんのか、そんな私の思いを余所に、ウィリアは言い淀み困惑した顔で私をみる。
「どうしたいのか教えて?」
優しく問いかけるが、ウィリアは俯いてしまった。気遣うように頭を撫で、皇子へ視線を向ける。
「今のウィリアの反応を見る限り、まだ返答する事はできない。もし、ウィリアが参加したいと言えば参加させる方向で検討はするが距離的な関係もあるのでな、参加は難しいと思って欲しい」
「そうですか、わかりました」
寂しそうな笑顔を向けると、一度目を伏せウィリアの方に視線を戻す。その視線は、まだまだウィリアと話し足りない!! と顔が語っていた。
「ウィリア嬢と呼ばせていただいても?」
「えっと、は「ダメだ!」
はいと答えようとしたウィリアに被せるように、即座にシュベルは却下する。そして、これ以上ウィリアに害虫が近づかないようウィリアを抱き上げ
「すまないが、ウィリアが冷えてしまった様だ!! これで私達は失礼する」
「ぇ? ぁ、お待ちになって! まだシュベ……」
「あ!」
皇女のかけた言葉と何かいいかけた害虫を完全にスルーし、席を立つと颯爽と部屋へと向かった。
部屋へつくと、ウィリアを降ろし諭す。
「ウィリア、いいかい? あの皇子に近づいてはだめだよ?」
「どうしてですか?」
不思議そうに首をかしげて聞いてくる。
「あれは、ウィリアにとって良くない影響をあたえる……。だから、近づかないとお父様に約束して欲しい」
コクンと頷き「はい、お父様」と返事をしてくれた。
夕食の準備を頼み、本日参加拒否した残りの3人に思念を使い、事のあらましをベルンに報告させる。
《~~~と言うような事がありまして……》
《虫がついたか……》
話を聞き終え、そう言ったジオールが目を眇め思案顔になり。カシは、顎に手を添え顔を顰め同感する。
《そのようですね》
《あら、でも皇女より余ほど物分りは良さそうでしたけど……》
アルミスの言葉に、ルリアが反応する。
《結局のところ、皇子も皇女も同じよ! アルミスは甘いわ! ウィリア様、お可哀そうに……》
《そうかしら?》
《早めの対処が必要なようじゃのぅ》
可愛い孫に、自分の知らないところで言い寄って来た皇子が気に入らないジオールは、ニヒルな笑みを浮かべ何やら不穏な気配をにじませている。
《落ち着け、ジオール。話さえ終われば二度と会うことは無いのだ》
《確かにそうですが……。わしは、ちと心配になりますのぅ……》
孫の事になると見境がなくなるジオールの心配はわかるが、王との話さえ終われば、2度目は無いのだ……!
自分に言い聞かせるように何度も、そう頭の中で繰り返した……。




