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竜達の愛娘  作者: ao
第五章 ―終章―
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新たな誓約

/シュベル


 口を開けたまま固まっているガイアスたちへ声をかけ、誰かが持ち寄ったテーブルや椅子の方へと手招きしつつ呼び、座るように勧めれば周りを見回し驚いた顔をする。

 直に、仲間のひとりが、ウィリアの特製菓子と紅茶を人数分テーブルへと運び、置いていく。


「ここからが、私たちが要求する内容になるのだが……」


「何なりと」


 顔を引き締め直したガイアスは、私の方へ真摯な視線を向け見つめ頷いた。


「グリンヒルデの王、第3王子、第2王子の従者であるオーカスの身柄はこちらで貰い受けたい。

 他の王族に関してはお前たちが好きにするといい」


「理由をお伺いすることは可能ですか?」


「ふむ説明をすると長くなるのでな、端的に話すぞ?」


「はい」


 そうして、アルシッドク皇国でのこと、セルスティア王国でのこと、リーシャのこと、仲間たちのこと、ウィリアのことを順を追ってはなしてやった。

 話しを終えれば、ガイアスたち一行は皆顔を引き攣らせ無言になっている。


「お前たちが悪いわけではない。だがな、我らはお前たちが守りたいと思う民によって、仲間を多く失ったのだ。故に簡単に信用することはできないそう伝えた」


「それは、ご尤もです。もし私が同じような目に合っていれば……竜大公様のように冷静ではいられないでしょう……」


「冷静ではないぞ? いまも腸煮えくり返るほどあやつらを殺したいのだからな」


 そう本気で伝えていれば、ベルンとジオールが皇王、宰相、巫女、を連れ戻ってくる。間を置かず、カシが国王、ハロウを連れて戻ってきた。

 連れられて来た皆の表情は硬い。


「すまないな。このような場所に来てもらうことになって、お前たちの安全は私が必ずこの命にかけて守ると誓おう。この場に来てもらった理由については既に聞いているのだろう?」


 私の言葉に皆が、頷き引き攣りながらも笑顔を見せてくれる。

 無理を言っているのは判っているし、無いとは思いたいことだが、ここで誓約を交わしておかなければ……我らだけではなく皇王たちにも迷惑をかける恐れがあるからだ。


「では、さっそくだが誓約を交わす。これは初代王竜の誓約と同等との物する」


 そう伝え仲間を見回し、皇王、宰相、巫女、国王、ハロウ、ガイアスへと視線を送っていった。

 誰かが喉を鳴らし唾を飲みこむ音が鳴るも、頷き了承を示してくれる。


「ベルン。竜文字で記せ。それを4枚書き写してくれ」


「わかりました」


 隣に座るベルンに、指示をだし竜文字を使い内容を記していく。


「我【シュベル・クリム・ハーナス】は、【シェルジル・グラシエ・フォン・アルシッドク】【リージェン・イルエ・フォン・セルスティア】【ガイアス・ピア・デュール】【リリミア・ユアン】の四名に対し、人は人の理を持ち、竜は竜の理を持ち、互いに尊重し、諍い害すること無く、等しく平等に暮らしを守るべく手を取り合う。この誓約は、未来永劫守るとここに誓う」


 この誓約文ならば、以降竜らも人も脅かされる事は無いと思うのだが……。


「ハロウ」


「ノービス」


「私にも羽ペンと羊皮紙を……」


 国王がハロウを呼び、皇王が宰相の名を呼ぶと巫女もまた羽ペンと羊皮紙が欲しいと言葉にした。

 4人が、私の言葉を真似それぞれの国に残る古い文字で4枚ずつ記していく。


 書き終わった者から全ての羊皮紙を預かり、計16枚の羊皮紙が手元に集まると綺麗に重ね、その上に永遠の鍵(エターナキーン)を籠めた魔道具を置くと私と他4人の血を1滴ずつ魔道具へと落とす。

 それが終わると「血の誓約に従い、我ら未来永劫誓いを立てる」そう文言を発言し、魔力を流し魔道具を発動させた。

 

 光が羊皮紙を包み込み、消えると羊皮紙だったはずの誓約書が、大層な布に包まれ丸められた綺麗な紙へと状態に変化させていた。それを名を記した者たちに配り、互いに保管し守ることで誓約の義は終わりを迎えた。突如呼び出した5人に礼を伝え、ガイアスへと向きなる。


「これを持ってお前を信頼する者として扱う。我らの心を裏切らぬよう頼むぞ」


「お任せ下さい。永劫の誓い子々孫々まで必ずや守らせます」


 ガイアスの言葉に頷く。

 彼を信頼すると言葉にしたのだ、これ以上疑うことはしないと心に決め誓約書を渡しつつ硬く握手を交わした。その後、5人に礼を言い連れて来た仲間に空魔法で送らせる。


 必ず生きて戻って欲しい。とそう言葉をかけてくれる皇王には悪いが、私はウィリアを残し死ぬつもりなど無いと笑って返せば、心配そうに眉根を下げながら彼も笑っていた。

 彼らを見送り、カシ、ジオールが戻ったのを確認して声を張り上げ伝える。


「グリンヒルデの王を捕らえ、城を落とすぞ」


 オー! と言う鳴き声にも近い沢山の声が上がり、皆が竜体へと戻り ガイアスたちを腕に抱え飛び立つ姿を追うように、私もまた竜体となりグリンヒルデの上空へと飛び立った。

 

 風を切り城を目指し飛びつつ眼下に見える城下町をみれば、大挙して城へと向う私たちの姿に悲鳴を上げ、怯え逃げ惑っている姿が見えた。


 真っ先に飛び出したデイハ率いる元南の竜たちが、城を目指し飛びつつ高度を上げる。


《シュベル様。先陣のお許し賜り感謝いたします》


《存分にやるがいい》


「グルオォォォォォ!」


 デイハからの思念に答え、鼓舞するため鳴き声をあげれば北の皆もまた同調するように鳴く。それに答えているのか、元南の竜たちが身体ごとクルりと1回転すると返すように鳴き声をあげた。


 城の上空を旋回していたデイハが、高度を上げそのまま城へと速度を落とさず下降する。それに続くのは元南の仲間たちだ。次々城へと身体ごと突っ込んでいく。

 悲鳴を上げ、徐々に瓦礫と化す城から逃げ出す沢山の人族。


 体当たりを仕掛けるデイハたちを攻撃する者が居れば、それを排除し守るのが上空に残るものの仕事だ。そしてガイアスには、王族を見分けてもらっている。

 

《王竜様。右下城の裏口に止まっている2台の馬車を!》


《わかった》


 ガイアスの思念に答え、視線をジオールへとカシへ向ければ二頭は首を一度だけ縦に動かし、馬車の元へと羽ばたき近づいていった。馬を繋ぐ金具などを風魔法で切ったジオールとカシが、馬車ごと前足で持ち上げ運んでくる。

 ジオールの方から中を確認すれば、肥え太った髭の男と第3王子、細く痩せた化粧の濃い女。

 カシの方には、第2王子によく似た男と淡い茶の髪をした男が乗っている。


 近くに居たベルンを呼び竜体から、魔法:擬人化を使い人の姿となった私は、その背に乗り込み立った状態のまま馬車にいる人族へと問いかけた。


「お前がグリンヒルデの王か?」


 ひとりひとりに視線を巡らせる。

 視線が合う度、ビクビクと肩を震わせるだけで何も答えようとはしない。


「まぁ、よい。誰が王であろうと全員死ぬだけだ。私の番であり、竜の宝に手を出したのだ。簡単には殺さぬ。グリンヒルデと言う国は今日ここで竜の怒りにより消えうせる。その最後の姿をよくみていることだ」


 真実を告げてやれば、馬車に乗る全員が私へと視線を向けた。


《デイハ。王族は捕らえた後は塒に戻り始末するだけだ》


《はっ》


 思念でデイハへ王族を捕らえたことを告げ、戻るよう指示を出す。次いで、ガイアスたちを城へと降ろすよう仲間に伝えた。

足を運んで頂きありがとうございます

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