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竜達の愛娘  作者: ao
第五章 ―終章―
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シュハニベルの耳飾り

/シュベル


 離れ難くはあるが、今すべき事があると考え心だけをウィリアの側に残し部屋を出た私はその足で、リビングへと向った。

 しばしソファーで沈黙し考える。

 

 まずやるべき事は、グリンヒルデの王をこの手で制裁すること。そして、グリンヒルデと言う国自体を地図から書き換えること……そうなると、ガイアスと一度話すべきだ。

 彼に後を任せるにしても、いずれグリンヒルデの王のようになられては困る。

 宰相を経由して彼の本音を聞きだすべく会う必要があるだろう。


 グリンヒルデを書き換えることについては、王城内に残っているであろう王と第3王子以外の王族全てを捕らえ、使えるのであればガイアスに捌かせればよい。

 今後決してウィリアに害をなす者が出ないよう、細心の注意を図るべきだ。

 そうして思考を打ち切り顔をあげた私を皆が注目する。


「シュベル様」


「皆に伝えておくことがある。今から私はグリンヒルデに向う、理由は語る必要も無いだろう?

 ガイアスと言ったか? その男に会いたいと伝えろ。

 その者に任せられると信頼できるようであれば、グリンヒルデを潰した後その男に国を治めさせる。

 本来私たちが出張ることではないことは十分承知しているが、これ以上我らの安寧を損ねる行為を犯すあの国が存在することを許すことはできない。

 これは我らに対する戦争であると私は考える。お前たちにも家族があることは重々承知の上で頼みたい我と共に、グリンヒルデの王と第3王子を討って欲しい」


 リビングに集まる皆が勝ちどきを上げ各々頷く姿に、私も頷き空魔法を使い宰相の元へと向った。


「これはシュベル様、ウィリア様は?」


「あぁ。大丈夫だ。それでだ、大至急ガイアスと話がしたい。直ぐに連絡はつくだろうか?」


「えぇ。彼に魔道具を渡してありますから」


「ならば直ぐに頼む」


「かしこまりました」


 突然押しかけた私に対し宰相は理由を聞かずただ、ウィリアの無事だけを確認すると直ぐに思念で連絡をとってくれた。

 きっと言いたいことや聞きたいことは沢山あったはずなのにと心の中で感謝しつつ思念が繋がるのを待っていると、宰相の視線がこちらを向き頷いた。


《ガイアス殿、ご紹介します。竜大公であられるシュベル・クリム・ハーナス様です》


《邪魔をする》


《思念で失礼いたします。ガイアス・ピア・デュールと申します》


《ふむ。早速で悪いが、ガイアス私は今からお前に会いたいと思っている。

 詳細を話すかについてはお前を見てから決めたい》


《わかりました。どちらへ向えば宜しいですか?》


《どこなら解かる?》


《現在私たちは、グリンヒルデの王城側の宿屋に潜伏しております。

 ご指定の場所まで、今ならば混乱に乗じて移動できます》


《ならば、城から海のほうへ行くと人気の無い泉が有るのは知っているか?》


《それは、5つに尖った泉でしょうか?》


《そうだ》


《わかりました。直ぐに(または直ちに)移動を開始いたします》


《わかった》


 思念を切り終え、宰相に礼の意味を籠め頭を下げる。首をゆっくりと振る彼に見送られ、空魔法で昔使っていた、シュハニベルの塒へと向かう。

 そこは既に密林となり、塒の入り口は太い木の根で塞がれている。それを引きちぎり、かき分け奥へと進む。塒の最奥にある、小さな小さな穴へと手を突っ込み奥に隠されたモノを掴みそれに視線を向け確認した。


 今のウィリアには必要な物だと急ぎ屋敷のウィリアの部屋へと空魔法で移動する。

 現れた私の姿を見たアルミスが、目元を拭いながらも気丈に接しようとした。その頭を優しく撫でてやり、眠るウィリアへと歩み寄った。


「少しでいい2人にしてくれ」


 そう頼み、皆が退出するのを待って彼女の髪を梳くように撫で声をかけた。


「ウィリア。私はもう二度とお前を失うつもりは無いのだ。

 過去の自分の過ちを繰り返したくない……すまない」


 謝罪すると同時に、その額へと口付けを落とす。

 手に握るシュハニベルが当時のウィスユリアへ贈ろうとした耳飾を取り出すと彼女の耳へ押し当てるように嵌める。そっと耳飾に魔力を流せば、耳飾から放たれた光の膜がウィリアの身体を包み込んだ。

 思念を使い皆に室内へ入るよう告げ、皆が入ったのを見回す。


「これより、私が戻るまで決してウィリアには触れぬよう。

 ウィリアを包む膜は、彼女を回復させるためのものであり、誰も触れてはならん。

 触れれば回復の力が損なわれる」


 嬉々として喜ぶ仲間に向かい、偽りの説明を終える。

 この耳飾りをつけている限りウィリアは起きないのだ。

 シュハニベルだった当時私は、これをウィスユリアへと送ろうと考えていた。

 彼女を失わずに済むようにするために――渡す直前に、根源を使用した魔法を使われてしまったのだが、今回は、まだ間に合うと考え取りにいった。


 安堵した仲間へすまないと心の中で謝りつつ、きっと彼女は怒るだろうと思うも守るためにはこうするのが一番だと考えた。

 後は任せる。そうアルミスに言い残しリビングへと向う。

 既に準備万端の仲間たちの顔を見回し、今から移動する先を告げた。カシをはじめ皆が協力し合い空魔法を使う。


 それを見つめつつ、ふと誰かに呼ばれた気がしてキッチンを振り向いた。そこにいるはずのないウィリアが笑顔で手を振ってくれている。

愛しさがこみ上げ ふっ。と表情が崩れた。


《必ず戻る》


 思念で彼女にそう伝え私も、空魔法を使いガイアスの待つ湖へと移動した。

 湖には仲間達が既に揃い、火魔法を使い湯を沸かし紅茶やコーヒーをカップに入れ飲んでいる。

 まるで、屋敷にいるようだなと思いつつ皆の輪に加わりコーヒーを作ってもらう。インスタントですよと言って渡されたコーヒーは、濃すぎて飲めたものでは無い状態だ。


「流石に……これは……」


「どうかしましたか?」


「飲んでみろ」


 作ってくれたカシのカップを手渡し、飲むように勧めれば素直にコーヒーを啜る。

 顔が歪み眉間どころか鼻や口にまで皺を寄せたカシは、直ぐに作り直します……と項垂れお湯を入れにいく。その様子に、ケタケタとジオールたちが笑い今から国を滅ぼすなど考えられないほど明るい雰囲気となった。


 それからしばらくたち、馬の蹄の音が複数こちらに近寄って来るのが聞こえた。

 来る方角を注意しながら見れば、10人ほどの人族の男たちが馬の速度を落としながら、森を抜けてくるのが見える。

 10名ほどの仲間が、私たちの側から離れ戦闘態勢を取ると、思念でガイアスの声が聞こえた。


《竜大公様でしょうか?》


「皆引け、今のところ敵ではない」


 その思念に対し立ち上がり、皆へ声をかけつつガイアスの方へと向う。あちらも馬から降りると私の方へと歩み寄ってくる。

 後2メートル程の距離で、片膝を着き右手を旨に当てるポーズで頭を下げるガイアスの後を追うように、共に来た残りの人族も同様に私へと頭を下げた。


「お初にお目にかかります。先程思念でお話させていただきました。

 ガイアス・ピア・デュールと申します」


「あぁ。シュベル・クリム・ハーナスだ」


「今回は私を知る為とお伺いしております。それ故、どのような質問にもお答えいたしましょう」


「そうか。では聞こう……お前は国の王となり何をする?」


「まずは、無用な財を売り払い疲弊した民を救います。

 次に、不平等がないよう法の整備をいたします。

 その際、竜族の皆様への法も作ります。

 そして、痩せた土地や獣魔の出る土地を国で整備士民を守るための機関を設立いたします。

 他にも、奴隷やスラムなどの件についていくつかありますが、大まかにはその4つが当面の仕事になるとおもっております」


「ふむ」


 私の直接的な質問に対し、驚くかと思っていたガイアスはその視線を私に向け至って冷静に返答した。

 なるほどこの男ならば任せても良いやもしれん……だが、時が経ちその過程で考えが変わる恐れもある。その場合、民はまた疲弊しグリンヒルデと同じことになる可能性もあるのだ。


「そなたが神殿の巫女、アルシッドク皇国皇王、セルスティア王国国王に対し、誓約を交わすのであれば信じてもよい。但し、私の背には乗せることはできないが――どうする?」


「それで信じていただけるのであれば、喜んで誓約を交します。竜大公様の背を許されるとは初めから思っておりませんでしたので、その件に関してはお気になさらないで下さい」


「わかった。ならば、グリンヒルデを落とす前に、誓約を交そうではないか」


「どうやって……」


「カシ、ジオール、ベルン、直ぐに(または直ちに)飛んでくれるか?」


「「「はっ」」」


 名を呼ばれた3人が、空魔法を使い消える。

 それを見ていたらしいガイアスは、ポカーンと口を開けその日初めて、人らしい姿をみせたのだった。

足を運んで頂きありがとうございます。

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