表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮と掲示板 改稿版  作者: Bさん
4章 街の迷宮
53/88

42話

「んあ……今何時だ」


 目を覚まし、時計を探す。光が差し込むような場所であれば外を見るだけで良いのだが、生憎この拠点には窓がない。

 時間の確認は時計くらいしかないのだ。枕元に置いてある時計に手を伸ばそうと腕を動かすが、固定されていて動かない。

 原因を探ってみると、右にはティア、左にはパステルが俺の腕に抱き付くように寝ている。こりゃ、動かないわ。

 無理して動かそうとすれば簡単に抜けるだろうが、この抱き付いて来る感覚が癖になりそうだ。

 無駄な脂肪がなさそうな2人ではあるが、やはり女性というべきか。その体は柔らかい。

 腕は固定されているが、手は動く。俺の腕を抱き枕の様にして抱きついている2人に、いたずらの1つでもしたくなるが、朝から盛っても仕方ない。

 ずっとこうしていても仕方ないので、右腕を動かしてその感覚から脱出する。

 そのまま時計に手を伸ばして時間の確認をする。まだ6時か……。


 仕事をしていた頃は当たり前のように起きていた時間だが、ここに来てからは生活のサイクルが完全に変わってしまった。

 大体8時前後に起きて10時から探索。夕方に戻ってきて夜まで調合や畑の管理だ。

 せわしなく働いていたあの頃に比べれば、かなりのんびりした生活である。


「んん……」


 時計を置いてボーっとしていたらそんな声が聞こえてきた。

 そちらの方向を見るとティアが薄らと目を開けている。どうやら起こしてしまったようだ。


「ご主人様……おはよう」

「ああ、おはよう」


 ティアはそう言いながら俺の体に抱きついてくる。

 決して大きいとは言えない胸が押し付けられる。小さくてもおっぱいだ。決して悪いものじゃない。

 まだ起きなければならない時間ではない。抱きついているティアの体に腕を回し、背中を撫でる。そのすべすべとした肌は触れているだけで気持ち良い。

 

「朝からするの?」

「いや、止めとくよ」


 ティアは俺の下半身を見ながらそんな事を言ってくる。朝から元気だな、俺の息子よ。

 精力増大のスキルのお陰か、毎日立派にそそり立っているのだ。うん、元気なのは良い事だ。

 

 ティアは俺の体から離れるとベッドの上に座る。まだ完全に頭が覚醒していないのか、その状態でボーっとしていた。

 猫獣人って猫みたいに背伸びしないのだろうか。どこまで人間や猫の区別があるのかさっぱり解からん。

 そのままベッドから降りて服を着始める。何だろう。脱がすのとはまた別で良いな。

 その姿を凝視していると着替え終わったティアが部屋を出て行く。

 いつも俺より早く起きて色々と準備をしてくれる。朝食や迷宮内で少し摘めるくらいの食事を作ってくれているのだろう。ありがたい事だ。


「で、パステルはいつまで狸寝入りをしているんだ?」

「おはようございます。お気づきでしたか」

「これだけ密着しているんだ。少しの動きで解かるよ」


 先ほどティアと話している途中に左腕にわずかな動きがあったのを見逃していなかった。

 そのまま動くのならまだしも、そのまま微動だにしないのは不自然だ。それを寝ているのではなく、寝ている振りをしていると判断した。意味は無いけど。


「このまま主様とティアに盛って頂ければ、主様を取られたような気分になれるのではないかと思いまして、ジッとしておりました」

「……そうかい」


 パステルは今日も平常運転のようだ。





「おはよー」

「ネク、タリス。おはよう」


 着替えてテーブルに行くとタリスから挨拶の声が聞こえてくる。既に2人も起きていたらしい。

 俺はそのまま顔を洗う為にキッチンへと向かう。風呂場には脱衣所とかはあるものの洗面所はない。ちょっと不便だ。

 キッチンに入るとティアが料理をしている。俺はその邪魔にならないように顔を洗う。


「そういえば、コクは寝ているのか?」

「今日はまだ見てないわよ。寝ているんじゃない?」

『夜に起きた時に鍛冶の音が聞こえてきたし、まだ寝ていると思うよ』


 テーブルに戻って聞いてみるとそんな返答が返って来た。

 結構遅くまで鍛冶をしていたのか。てか、ネクは深夜に目を覚ましたのか。トイレなの……か?

 スケルトンはトイレに行くのだろうか。しっかり食物を消化している所を見ると可能性は否定できない。

 だが、内臓のないスケルトンはどうやって溜め込むのだろうか。垂れ流しという訳でも無さそうだし……。


『トイレじゃないよ……』

「そ、そうか」


 どうやら見透かされたらしい。ちょっと失礼だったかも知れない。

 そうして雑談を交わしているとパステルが起きだして来た。随分ゆっくりだな。

 でも、聞かない。何をしていたのかは聞かない。きっと二度寝をしていたんだろう。そう思う事にする。


「もう少しで朝ごはんが出来る。コクを起こしてきて」

「あいよ」


 いつもは逆に起こされる立場だったが、今日は起きているんだ。たまにはそういうのも良いだろう。

 コクとパステルの寝室に入ると誰も居ない。地下か?

 生命感知のスキルを使用してみると、やはり地下の鍛冶場に反応がある。

 光点には動きが一切ない。あいつ、鍛冶場で寝たな。


 地下への階段を降りていく。相変わらず長いのだが、よくネクは音が聞こえたな。

 無音だから響いたのだろうか。それとも耳が良いのか。

 そもそもネクって耳で音を聞いているのか? アンデッドって不思議だな。


 そんな事を考えながら階段を降りていく。コクも寝ているのか、一切音はしない。

 暗くはないから不気味という訳では無いが、これで薄暗かったら怖いな。

 鍛冶場の扉を開けると、地面に丸くなって寝ているコクがいた。

 石畳の上で寝るとか寒くないのかね。炉には火が入っていないから、鍛冶場の室温はかなり低い。

 こんな所で凍死して広場に転移とか笑い話にしかならんぞ。


「コク、起きろ。朝だぞ」

「ん~? あさ~? うっさむっ」


 コクが目を擦りながら体を起こす。そして、今の室温に気が付いたようだ。

 恐らく眠った時はそれなりに暖かかったのだろう。

 いくら鍛冶狂いのコクでも、いつもはちゃんと寝室で寝ている。

 眠気の限界まで何かをしていて力尽きるように寝てしまったのだろう。


「ス、ズキさん。さささ、寒い」

「そりゃ、こんな所で寝たらそうだろ」


 そう言ってコクが俺に抱き付いて来る。冷たい。凄く引き離したい。

 だが、ここは男として、主としての甲斐性を見せる場面だ。

 引き剥がさずに抱きしめ返して暖める。そういうのに慣れていないのか、コクは頬を染めていた。

 自分から抱きしめてきたのにな。


「あ、ありがとう」

「どういたしまして、朝ごはんが出来るから上に行こうか。ここよりは暖かいぞ」


 コクはこちらの目を見ずに礼を言ってくる。

 俺はそれに対して引きずらないように流しながら用件を伝える。

 コクとはそういう関係よりも友人のように付き合いたいと思っているのだ。

 そう俺はロリコンではない。決してロリコンではないのだ。


 俺たちは黙って階段を上がっていく。

 後ろでは、コクが俺の手を掴もうとしてやっぱり止めるという動作を何度もしていた様に見えたが、きっと気のせいだろう。

 広間に到着すると既に料理は並べられており、俺たち以外全員揃っていた。待たせてしまったようだ。


「マスター、おそーい」

「すまん、すまん。早く食べようか」


 そう言って皆で朝食を食べ始める。何てことない、いつもと同じ光景だ。

 この光景が幸せというものなんだろうな。





「今日はミーティングというより会議だな。意見が欲しいから積極的に言ってくれ」

「会議? 探索はしないの?」

「ああ、それを話すためにも現状を知って欲しい」


 俺の言葉にタリスが疑問をぶつけてくる。いつもであれば、ここで魔物や迷宮の情報を明かす所だ。

 だが、今回は異質な迷宮であるため、色々と意見を交わしたいのだ。


「まず、今回の迷宮は特殊な迷宮とされているらしい。階段を出す為に何かしらの条件を満たさなければならないんだそうだ」

「条件……ですか?」

「ああ、以前あった話では街ではないんだが、攻めて来る軍隊を全滅させる事で階段が現れたんだそうだ」


 掲示板の情報だが、今回俺たちの街という異常な迷宮と似ている点が多い。

 必ずしもその通りとは限らないが、近い情報があるのならまずそれから当たってみたい。


「まずはその条件を探してみる必要があると思う。それが現れるのが時間経過なのか、何かを行えば良いのか解からない」


 仲間達を見渡しながら伝える。これ以外にも拠点に戻ると最初からやり直しである事、長く滞在する必要があるかもしれない事を補足する。

 皆は真剣に聞いてくれているが、結局迷宮に入ってみない事には情報が足りていないのは確かだ。


「つまり、とりあえず入ってみて条件を探しましょうって事だよね?」

「ああ、幸い平和な街だから滞在は難しくないと思う。何か意見はないか?」


 既に方針はある程度固まっている。だが、どこかに穴があるかも知れない。

 いつもの様に敵が解かっていて、どんな迷宮なのか知っているのとは違うのだ。


『その街ってどんな種族がいるの? フェアリーやスケルトンがいても大丈夫なのかな?』

「あ、殆どが人間だったな。少しは獣人がいたけど他種族はそれくらいだ」

『なら、私とタリスは入れないね。入るにしても変装が必要になると思う』


 確かにネクの言う通りだ。普通の町の中にアンデッドが出たら大騒ぎだろう。

 フェアリーはまだ人に近いから珍しいくらいかも知れないが、出来るだけ目立つ行動は控えたい。

 何かの拍子で敵対行動をされても困るのだ。


「軍隊が攻めて来るという話があるのでしたら、城壁の設備も調べておきたいですね」

「迎撃するなら確かに必要だな」


 パステルが次の問題を提示してくる。

 城壁に設置されていた設備は、遠くから見ただけでも巨大な石弓があった。

 普通の弓よりも遥かに強力だと思う。それだけに準備に手間取るのだが……。

 大砲の様な物は見当たらなかったから、文明レベルはそこまで発達していないように思える。

 尤も俺たちの世界と文明の発達が同じとは限らない。獣人が居た時点で違う世界だと思われるし。


「だが、城壁は一般人の立ち入りは難しいんだろう?」

「はい、ですのでカモフラージュをします」

「カモフラージュ?」


 周囲の風景に溶け込むのか……だが、パステルの容姿で溶け込むのは無理だろ。

 エルフはその容姿からとても目立ってしまう。


「精霊魔法に視覚を誤魔化す魔法があります。それを利用して入ります」

「なるほど。それは便利そうだな」

「ただ、問題がありまして、私以外にもう1人しか一緒に行動が出来ません」


 どうやら全員一緒に、という訳には行かないらしい。

 出来るのならネクの問題も解消出来そうだったんだがなぁ……。


「設備の話なら僕が行った方が良いかな?」

「ああ、頼む。俺にはさっぱり解からん」

「では、城壁への侵入は私とコクで行きます」

「ついでに野営を出来そうな場所を探してくれ」


 長期滞在をしなければならないのなら、安全に長時間過ごせる場所が必要になるだろう。

 残りは、ネクが留守番だとしてタリスとティアくらいだろうか。

 タリスは俺が大きめのローブを着て体に引っ付いてもらえば誤魔化せるだろう。

 かなり変な格好になりそうだが。

  

「ネク、全員分の大きめのローブを頼む。俺のは着てタリスがその中に隠れるくらい余裕を持って頼む」

『すぐに作るよ』

「ティアは、長期滞在用に料理を作ってアイテムボックスへ入れてくれ。食器が足りなくなったら補充するから言って欲しい」

「わかった。材料を殆ど使って作る」


 ローブは野営をする可能性を考えての防寒具だ。下に敷いても良いし何かと便利だと思う。

 偵察はコクとパステル。兵糧はティア。装備はネク。

 誰かを忘れているような……。


「ねー、あたしはー?」

「俺と一緒に地下の自動販売機で買った物をアイテムボックスへ入れる係で」

「ほーい」


 こうして俺たちは役割分担をして、攻略へと乗り出したのだった。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



雑談part47


668 名前:名無しさん

なぁ、お前らっていつも寝る時は1人?


669 名前:名無しさん

1人じゃなかったら誰がいるんだよ


670 名前:名無しさん

女の使い魔とか


671 名前:名無しさん

それは、男しかいない俺に対する喧嘩と受け取った

買うぜ?いくらでも買うぜ?


672 名前:名無しさん

あー、それは正直すまんかった


673 名前:名無しさん

でかいベッドを買って皆で寝てるな

皆で引っ付いて寝るのは気持ち良いもんだぞ


674 名前:名無しさん

獣系の使い魔がいたらもふもふしてていいかも


675 名前:名無しさん

女の使い魔はいるけど俺は1人だな

どうにも他の人と一緒は落ち着いて寝れん


676 名前:名無しさん

でかいベッドかー

高いんだよね・・・


677 名前:名無しさん

そうだな

大体1万以上を見越した方がいい

でもそれ以上の価値はあるぞ


678 名前:名無しさん

そういやベッドって回復効果違うんだっけか

具体的にどれくらい違うんだ?


679 名前:名無しさん

どれくらいと言われてもな

腕を1本切られた使い魔を3万のベッドに寝かせたら

目に見えるくらい肉が動いて10分くらいで再生したぞ


680 名前:名無しさん

キモッ

凝視したくなくなるわ


681 名前:名無しさん

標準ベッドだっけ?

あれだと半日以上かかったよな

苦痛が短くなると考えれば

多少無理をしてでも揃えた方がいいんかね


682 名前:名無しさん

部位の欠損は熱が出たりもするからなぁ・・・

高熱が長く続くと脱水症状とかにもなりそうだし


683 名前:名無しさん

再生するならアンデッドとかはどうなん?

スケルトンとかは無理でもゾンビとか腐敗が治らんのか?


684 名前:名無しさん

ゾンビを使い魔にしている奴がいるのかどうか

臭くてきついわ


685 名前:名無しさん

あれって治すってより戻すと言った方が近いかも知れん

ここの迷宮に来る前に負ってた傷は治らなかったぞ


686 名前:名無しさん

へー、なら視力とかも駄目なのかね

目が悪かった人はやっぱり悪いまま?


687 名前:名無しさん

ああ、視力は悪いままだ

眼鏡は高くて買えないから凄く貴重


688 名前:名無しさん

眼鏡壊れたけど

朝起きたら枕元に修復して置いてあったぞ

レンズすら割れてたのに


689 名前:名無しさん

眼鏡は体の一部ってか

もうお前同化してね?


690 名前:名無しさん

壊れても大丈夫なのか

でも、兜付けると眼鏡が邪魔すぎる


691 名前:名無しさん

コンタクトだと攻撃食らった時

顔面に食らうとやばいしなぁ・・・


692 名前:名無しさん

うわぁ・・・想像したくない


693 名前:名無しさん

え?眼鏡って高いの?

眼鏡フェチの俺には希望がないの?


694 名前:名無しさん

眼鏡はあったけど嗜好品

それなりに高いぞ


695 名前:名無しさん

何で眼鏡が必需品じゃなくて

嗜好品なんですかね


696 名前:名無しさん

そりゃお前・・・

>>693みたいなのがいるからじゃね?


697 名前:名無しさん

ああ、眼鏡をかけた子に???したい


698 名前:名無しさん

伏字キター

てか、伏字なんてあったんか


699 名前:名無しさん

攻略情報とは別の卑猥な言葉だと言うのは予想できた


700 名前:名無しさん

一応、迷宮には未成年もいるらしいしな

仕方ないだろう


701 名前:名無しさん

未成年って居たのか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ