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迷宮と掲示板 改稿版  作者: Bさん
4章 街の迷宮
52/88

41話

「次の階層の様子見に行くけど、誰か付いてくるか?」

「行く」

「お供致します」


 ティアとパステルが名乗り出る。ネク、タリス、コクは留守番らしい。

 前の坑道の時もそうだったが、パターンとして定着しそうだな。

 今日は、ボス戦後の休日だ。大体2、3日は取る様にしたい。

 3階層のゴーレムは呆気なく倒れたが、その前に俺が迷惑をかけてしまったからな。

 出来れば、そういうのなしで仲間達にはゆっくりして欲しいと思う。


 俺たち3人は防具をしっかり身に着けていく。

 うん、やっぱり2人の防具姿はいい。その姿を見ると、別のことを思い出してしまうが、頭を振り払って忘れるように努力する。

 

「準備できた」

「こちらもです」

「え、ああ。それじゃ、行こうか」


 ちょっとボーっとしていたらしい。思考が読まれることは無いと思うが、少し気恥ずかしくなる。

 そして広間にある直通ゲートから3階層のボス部屋まで転移した。

 ボス部屋には何も無く、ただの広い部屋でしかない。

 ここに居ても仕方ないので、俺たちは部屋の隅にいつの間にか出来ていた階段を降りていく。


 そして、階段を降り切った所にあったのは……部屋だった。


「家?」

「みたいですね。森の時の小屋とは違って生活感があるようです」


 その家は、必要な家具や飾りと思われる木彫りの人形。そして食器や調理器具が置いてある。

 また、暖炉には薪が入っており、火を入れればすぐに点火出来そうな状態だ。


 俺とパステルは見ることでそれらを把握する。ティアは触れる事で調べているようだ。

 でも、ティアさん。スカートが短いんだから、はしたないですよ。そう思いながらも言わない。目の保養の為に。


「生命感知だと……人間? あ、少しは獣人もいるな」

「数は多いですね。ですが、人間の気配しかありません」

「ん、窓の外には人間が一杯いる」


 ティアに言われて俺とパステルは外を見る。

 そこは、まるで中世のヨーロッパの様な町並みがあった。

 迷宮はどこに行ったんだ。そしてマップに記載されている文字列には……街の迷宮とあった。


「街の迷宮って……森と草原並にあわねぇ……」

「迷路の様な町という事でしょうか?」


 パステルが無理やり決め付ける。確かにそう考えれば多少は近くなる。

 でも、街中を歩いている人たちを見る限り、武具を着けている人は圧倒的に少ない。

 殆どが一般市民のような格好なのだ。

 防具を着けている人たちも軽装というより、衛兵みたいなイメージがあった。


「これは困りましたね。どう反応して良いのやら」

「ああ、襲ってきてくれた方が楽の様な気がする。単純に倒せば良いんだからな」


 数は多いが、範囲魔法で奇襲をすればある程度一気に倒せるだろう。

 だが、彼らが一般市民のような存在だった場合、相手が魔物だとしても攻撃するのは躊躇われる。


「ここにずっと居ても仕方ない。外に出るぞ。ティア、パステル。抜刀はしないが、いつでも咄嗟に抜けるように準備はしてくれ」

「解かった」

「杖なら持っていても不思議はないでしょう。そちらを持ちます」


 詠唱に時間はかかるとは言え下位なら数秒だ。俺も武器は抜かなくても盾は持っている。咄嗟にガードは出来そうだ。

 その間に詠唱を終えてくれれば、奇襲に対してはどうにか対処が出来そうだ。

 剣の長さが刀身だけでも90cmはあるから抜き難いんだ。


 そして、街へと続く扉を開け放った。

 数秒その状態で固まる。動かずに歩く人たちが襲ってこないか見極める必要があるからだ。

 5秒、10秒と緊張した時間が流れていく。だが、一向に襲ってくる気配はなかった。


「外に出るぞ。俺が先行する」

「お気をつけて」


 パステルの言葉を背に受け家から出る。盾を握り締め、いつでもガード出来るようにしながらだ。

 しかし、俺たちの緊張とは裏腹に道行く人々は、全く襲ってくる事は無かった。


「ティア、パステル行こう。警戒だけは解かずにな」

「武器は抜いちゃ駄目?」

「駄目。相手が敵対意識を持っている訳ではないのだから、無用な戦闘は避けたい」


 この迷宮のシステムがイマイチ解からない。

 ここで敵対行動をしたら、以後この階層でこの数の相手と戦わなければならないと言われたら厄介だ。

 感知スキルで表示されている数は数百ではない。数千、下手したら数万いるのだ。

 ここが本当に街なのだとしたら、一般人を攻撃した犯罪者という扱いになるだろう。

 普通の街だったら、犯罪者として追われる事になるのは一目瞭然だ。


 今居る場所は、恐らく街の大通りだろう。中央は馬車が行き交い、多くの店が並んでいる。

 その分人の数も多いが、雰囲気だけだと活気のある街としか思えない。

 これだけを見ると、ここが迷宮であることは信じられなかった。


 その中を歩いていく。俺たちと似たような防具を着ている人もいるし、そこまで違和感は無いだろう。

 ティアのスカートが短いくらいで、他は大して変わらない。

 暫く歩いていると敷物に座っている人たちが見えた。1人ではなく通りを埋め尽くすほどの数だ。


「これは……露天商か」

「その様にしか見えませんね。乞食にしては身なりが良すぎます」

「でも不思議。何も品物がない」


 露天商であれば、何かしらの商品を扱っているものだ。

 本人だけ座っているのでは、何の為にそこに居るのか解からない。

 商人の前にある程度の空間があるから、俺たちに見えないだけで本人は何かを売っているつもりなのだろう。

 現に周囲の人間は何も置いていない商人の前で足を止めて、何かを見ている素振りをしている。


「不思議なものだな」

「ここの迷宮にとって私たちが異質な存在なのでしょう」


 その割に周囲の男はティアのミニスカートが気になるのか、チラチラとティアの足を見ていた。

 全く無視されるような存在でもないらしい。造りが凝っているのか、手抜きなのかは解からない。


「ここ、人多いから別の場所にいこ?」

「ああ、いつまでもここに居ても仕方ないか」


 ティアが少し居心地が悪そうにしていた。じろじろと見られたらそう思うのも仕方ない。

 ちょっと残念だが、次に来る時はズボンを穿いて貰おう。

 その露天商が並ぶ通りを抜けるとそのまま歩き出した。


 そのまま歩いていると遠くに城壁の様なものが見える。

 高さは20mはあるだろうか。かなり高い。

 これだけの防壁を用意しないとならないほどの外敵でも居るのだろうか。ただの迷宮内の設定というだけかも知れないが。


「あっちから登れそうだな」

「主様お待ちを。こうった防壁は立ち入り禁止にされている恐れがあります」

「そうなの?」


 パステルに言われて俺は足を止めた。ファンタジーの世界の常識はというやつだろうか。

 確かに、こういう場所は軍隊が常駐していそうだ。

 そうなったら軍事機密とかがあって、一般人が立ち入り禁止になっていても不思議ではない。

 機密がなくても城壁に一般人が居たら、何かが襲ってきた時に防衛をするのに邪魔になる可能性だってある。

 

「良く考えたらそうだよな」

「はい、侵入するにしても今は安全な所から調べましょう」


 侵入するんかい。マップの探索範囲だからその内入らないといけないけどさ。

 それはネクとタリスが居る時でも良いだろう。下手したら大規模な戦闘になる。

 城門は開かれており、多くの人が行き来している。検問の様なものはなく自由に出入り出来るらしい。

 治安とか良いんだろうか。少なくとも俺たちが歩いている間に喧嘩のような物騒な事もなかった。


「ちょっと外に出てみようか」


 ティアとパステルを連れ立って門をくぐる。その先は草原のようでかなり遠くまで見通せた。

 マップを開いて生命感知のスキルと合わせてみるが、ここから先には生命反応は無い。

 視界ではかなり先まで見えるのだが、マップでは数分歩けば枠の端っこにぶつかってしまう。大体300から400mくらいだろうか。

 大した距離ではないので、歩いてそこまで行って見る。


「壁……か?」

「そのようです。不思議ですね」

「このっこのっ」


 何も無い所に見えない壁がある。押してみても何も起きない。

 ティアは街中で動き足りなかったのか、剣を抜いて見えない壁を斬っていた。

 物理攻撃も効果なしと。


「ティア、それくらいにしとけ。壊れそうにはない」

「ん、解かった」


 あっさり剣を納刀する。自分でも効果がない事が解かっていたのだろう。

 普通だったら剣が折れそうだが、この世界の謎仕様のお陰でちょっとやそっとの衝撃では壊れない。


「さてと、マップを埋めてみるか」

「安全そうですね。念の為、裏道にはお気をつけ下さい」


 ああ、そうか。やっぱり、スラム街とかあるんだろうか。

 この時代には普通にありそうな気がする。

 その場所に行ったら警戒を強めるか。そう思いながらマップの踏破を目指して徘徊した。




「残りは城壁とここか」

「臭い」


 大通りの他にも住宅街や工房通りなどを見回って、残りは治安の悪そうな通りと城壁が残った。

 街も全体を回れる訳ではなく、途中でマップの端に到達していた。かなり大きな街のようだ。

 裏通りは、腐臭が漂っており、少し離れた所に大通りがあるとは思えなかった。

 こういう場所って絡んでくる無法者が居そうだよな。


「警戒をしながら行こう」

「ん、念の為抜いとく」


 そういうとティアは腰の剣を抜くとそれを逆手に持つ。

 大通りのように人が多い訳でもないし、刃を隠すように持てば大丈夫だろう。

 俺は盾があるので攻撃されても、すぐに反撃に移る必要もない。守る事が仕事なのだ。


「それじゃ行こうか」

「はい」


 そして俺たちは裏通りへと進入した。

 入るとすぐにこちらを窺うような視線が飛んで来る。

 カモになりそうなら襲おうと言うのだろうか。

 一歩踏み入れただけでそうなるとは、こっちは治外法権なのかも知れない。


「あれは……」


 少し歩いているとある看板を見つけた。唇が描かれている。

 口というと飲食かと思うかも知れないが、その絵は艶かしく描かれていた。どう考えてもアレだ。

 その建物に近付いてみると、客引きをしていると思われる人が、何かを言いながらこちらに歩いてくる。

 だが、何を言っているのか解からない。どうやら、ここの言語は俺たちの使用しているものと違うらしい。

 俺たちが黙っていると、埒が明かないと判断したのか、その客引きは別の男へと向かっていく。


「ご主人様、入るの?」

「いや、興味はあるが、止めておこう」


 そもそもここは街の形をしていても迷宮なのだ。

 行き交う人たちも表情の判別がし難いような顔ばかりだ。

 認識を妨害しているのか、ここに存在している人間がそんなのでは楽しむ事も出来ないだろう。

 人を殺す事になった時に躊躇わない為か、ただの手抜きかは解からない。

 だが、それに助けられている所もあるので、俺としては文句は無い。


 娼館を通り過ぎて色々と歩き回ってみる。

 途中に死体が転がっていたり、糞尿が撒き散らされていたりかなり汚い場所のようだ。

 この時代のスラム街というのはこれほど酷いものだったのだろうか。

 中世に疫病が蔓延したという話も納得できる光景だ。


「マップはここまでだな。拠点へ帰ろうか」

「はい、ここに長く居たくはありません」

「臭い」


 マップは城壁を残し全て探索し終えた。魔物の襲撃がない事もあり楽に調べる事が出来た。

 スラム街でも誰かが襲ってくることも無かった。

 そりゃ、武装している相手を襲うのはリスクが高いわな。

 この街は基本的に安全っぽいし、わざわざ楔を利用するまでも無いだろう。

 歩いて移動しても大した距離ではない。


 俺たちは転移の羽を使用し帰還をした。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



雑談part 45


477 名前:名無しさん

俺は凄い発見をしてしまったかも知れん

実は……


478 名前:名無しさん

ΩΩΩ<なんだってー


479 名前:名無しさん

はえーよ

で、発見って何?


480 名前:名無しさん

それは……うぐっ

俺はもう駄目だ

この書簡を……


481 名前:名無しさん

おい、どうした!


482 名前:名無しさん

どうやら彼は組織の重大な秘密を知ってしまったらしい


483 名前:名無しさん

お前ら、ネタが無いからって変な茶番をするなよ


484 名前:名無しさん

新しい階層に進んだら変な迷宮だったんだけど


485 名前:名無しさん

この迷宮って変じゃない方が少なくね?

草原だったり空飛んでたり水の中もあるぞ


486 名前:名無しさん

いや、それに輪をかけて変だったんだ

入ったら街だった

住民も居た


487 名前:名無しさん

街?

迷宮の中に街を作って生活でもしているんか?


488 名前:名無しさん

そうでもない

売り物とかもこちらからは見えなかった

あくまでも迷宮の1つらしい


489 名前:名無しさん

街の情報ってあったっけ?

変なタイプだな


490 名前:名無しさん

まとめた所見たけど街はないな

情報プリーズ


491 名前:名無しさん

城壁で囲まれた街で人間が大量に居た

その人間は各々生活をしている感じでこちらを襲っても来ない

売り物とかはこちらからは見えないけど

住人同士では買い物をしている素振りはあった


こっちが完全に無視されている訳でもなく

スラム街とかでこっちを窺う視線を感じた


マップの大半を踏破したけど下への階段が見つからない


492 名前:名無しさん

敵が襲ってこないのか

前にそんな話あった気がする


493 名前:名無しさん

ああ、砦か

あれに近い気がするな


494 名前:名無しさん

砦?

どんな感じなんだ?


495 名前:名無しさん

その人の話では入ったら兵士しかいなかったんだってさ

んで、>>491と同じ様に襲ってくる気配がなかったんだそうだ

不思議に思いながら暫く滞在していたら

突然襲撃があったんだって


496 名前:名無しさん

襲撃っていうと兵士たちが襲ってきたのか?

何かタイミングが影響しているのかな


497 名前:名無しさん

そうじゃなくて外部から軍隊が来たんだってさ

で、頑張ってそれを撃退したら階段が現れたんだそうだ


498 名前:名無しさん

砦での防衛戦かよ

それは燃えるシチュエーションだな


499 名前:名無しさん

ゲームじゃないんだから実際は辛いと思うぞ

実際その人も篭城の辛さを味わったとか言ってたし


500 名前:名無しさん

ああ、そうか

何とか無双みたいに単騎で砦から出るわけにはいかないのか

しかし何日もって食事は大丈夫なのか?


501 名前:名無しさん

アイテムボックスで補給だな

トイレは砦内にあったらしいけど

当然風呂はなし


502 名前:名無しさん

うへぇ・・・本当に何日も滞在かよ

それは面倒臭そうだな


503 名前:名無しさん

しかも失敗したり拠点に戻ると最初からやり直し

ドロップアイテムも無いから実にもならない


504 名前:名無しさん

それは勘弁して欲しいな

でもクリアしないと進めないしなぁ・・・


505 名前:名無しさん

その情報が出たときは色々と話されてたな

リアルすぎてまるで何かの再現なんじゃないか?ってさ


506 名前:名無しさん

歴史の再現か

俺らの世界の再現なのか、異世界の再現なのか

ともかく何かの条件を満たさないといけないと


507 名前:名無しさん

>>491の話も城壁とかあったらしいし

何か襲ってくるのかもな

それまで待機する必要があるんだろうけど


508 名前:名無しさん

突然そういう迷宮が来るのか

俺らも覚悟だけはしといた方がいいかもね


509 名前:名無しさん

ああ、しかも重複しないっぽいから

事前情報は全くなし

使い魔たちと頑張るしかないな

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